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サービスデザインの一連の流れを実践の観点から理解する『サービスデザインの実践』読書会レポート

2020年3月26日(木)に、UX思考に役立つ読書会「This is Service Design Doing サービスデザインの実践」をオンラインで開催しました。

2020.03.26 サービスデザインの実践読書会風景

本書は『世界中のサービスデザイン実践者の叡智を結集したバイブル、遂に完訳』と評された帯の通り、「サービスデザイン」を実践する人に必須の一冊となります。サービスデザインの概念とプロセスの紹介に加えて、プロセスを組織で実践して結果をもたらす方法も詳しく紹介されています。とても厚いですが、説明が丁寧で実例も豊富なので分かりやすい書籍です。

本記事は、読書会の参加者によるディスカッションで、特に活発な意見交換ができたポイントである「イテレーション(反復)」について、3つのポイントを紹介します。

尚、イテレーションの取り入れ方やサービスデザイン全体のプロセスの流れに関しては、こちらの書籍サマリー記事を先にお読みいただけると、より理解がスムーズになるかと思います。

イテレーションは難しい??

サービスデザインの実践には、「イテレーション(反復)」がとても重視されています。イテレーションとは、コストのかからない試みや実験から始め、失敗を学びに変えて改善を繰り返すことです。実装に向けて、探索・改善・実験の反復型となるデザイン主導のアプローチが有効になります。

「自分たちの組織に、イテレーションを取り入れているか?」という質問の投げかけについて、参加者の半分くらいが手を挙げていましたが、事業目標を理解し達成するために、持続的にイテレーションを実施しているかという点では、誰もまだ出来ていないようでした。

なぜ持続したイテレーションを行うのが難しいのか、参加者から挙げられた理由は、大きく3つに絞られました。

    1. 関わる人・役職の問題

「あくまで自分たちの部署間・チームのなかで、プロダクト開発をする際に回しているのみで、組織の上層には当初の納期以上の重要性を理解してもらえない。誰を巻き込めばよいのかわからない」

    1. 提供物やオペレーションに関して、スタッフまたはシステムが持つ、問題やシステムに対する専門知識

「いつまで反復すればよいのかわからないし、正解がない」

    1. 組織が動かすシステムやツール(例えば物流、料金請求、POSシステムの層)

「日々リソースが避けず、リリース前に合わせて急に仕様変更などが来た場合に対応できなくなり、反復どころではなくなる」などの意見があがりました。

この3つの課題について、それぞれ解決方法を話し合いました。

①「関わる人・役職の問題」に対する解決策:組織のステークホルダーマップを理解しよう!

サービスデザインを実践するためには、第一に自らのプロジェクトに関わる人たちについて、その役割や関係性を把握しておくことが必要です。
相関関係の把握には、ステークホルダーマップが活用できます。

ステークホルダーマップ
ステークホルダーマップ

ここで重要となるのは、ステークホルダーを把握し管理するために、サービスデザインチームにリーダーシップと権限を持ち、率先して動く人材を入れること、または自身がそうなることです。

それぞれの関係者がどのような利害関係やモチベーションをもとに動くのか、明らかにしましょう。そうすれば、組織内外の人材を含めたプロジェクトの回し方を、関係者全員が意識できるように共有することができます。

②「実施すべき期間の問題」に対する解決策:サービスデザインにおけるダブルダイヤモンドのプロセスを理解しよう!

ダブルダイヤモンド」とは、思考の「発散」と「収束」を図式化すると2つのひし形のように見えることから名付けられた、デザインプロセスの方法論です。「発散」と「収束」を繰り返して正しい課題と解決策を見つけることを目的としています。

ダブルダイヤモンドのプロセス
ダブルダイヤモンドのプロセス

もともと産業デザインのような手戻りの起こらない制作プロセスに基づいた実装までの流れを表す図でしたが、サービスデザインにおいては、ダブルダイヤモンドにイテレーションの考え方が加わります。サービスデザインの初期段階では、リサーチを行い、プロトタイピングによって浮かび上がった新たな問題に対処するために、イテレーションを何度か繰り返していくことになります。

その際に、デザインプロセスは循環することはなく、前のステップに戻ったりもしないため、前進と適応があるのみです。そうなると、最終的な実装に至るまで、何度イテレーションを繰り返せばよいのか見当がつかず、時間と予算を守りながら成果を出すという日々のプレッシャーから離れられなくなってしまうということが、参加者の方も悩まれているようです。

サービスデザインにおける管理活動の外観
サービスデザインにおける管理活動の外観
※引用元:マーク・スティックドーン 編著「THIS IS SERVICE DESIGN DOING – サービスデザインの実践」より引用

この場合の有効な解決策は、「プロジェクトの最終期限を決める」ことです。これはある意味、目的の達成期限を作ることで、切迫感と集中力を生み出す効果があります。書籍のなかにもこのような事例が書かれていました。

「私たちはよくオリンピックの本番まで「あと●●日」かを思い出すようにしていた。最初のうちはそれがモチベーションになっていったが、皮肉にも、「あと●●日しかない」という切迫感に変わっていった。」

つまり、最終期限さえ決まれば、サービスローンチに向けて一度はゴールが生まれます。その後、運用期間においても持続可能な改善を続けていくようにすれば、リリース出来ないという悩みは解決します。

③「スケジュール管理の問題」に対する解決策:「計画的」な反復と「強制的」な反復の違いを理解しよう!

計画的な反復と強制的な反復の違い
計画的な反復と強制的な反復の違い
※引用元:マーク・スティックドーン 編著「THIS IS SERVICE DESIGN DOING – サービスデザインの実践」より引用

スケジュール管理の課題については、プロジェクトの初期時点に「計画的な反復」をイメージしておくようにすれば、解決できます。計画的な反復は、決められた期限や予算・リソースの範囲内で実行する環境を生み出すために用意します。

計画の段階から、デザイン活動のために必要な予測可能時間を捻出しておくことで、プロセス中の実行・学び・適応をしていく時間が確保できるようになり、心理的安全性も確保することができます。

各活動に反復するタイミングを一定のリズムで設けることができ、期間のパターン化も進めることが可能です。これは、チームを軌道に乗せるために役立ち、特にこのような作業の仕方に慣れていないステークホルダーを助けることにも繋がります。

しかし、最初から計画的な反復の時間を予定していないと、リリースに近づくにつれ、実装期限ぎりぎりまで変更対応に追われることになります。その結果、反復のリズムが崩れることになり、「間に合わせよう」とするマインドが優先されて「ユーザーのために」という主体性がなくなってしまいます。

初期の段階から反復サイクルを体系化しておくことで、チームは先を見通して行動でき、変更に伴うコストも最小限に抑えられるのです。

書籍内容の、次のステップへ

最後に、全体を通しての振り返りを行いました。

この本のメイン編集者であるマーク・スティックドーン氏が、2020年9月開催予定の「UX DAYS TOKYO 2020」に来日します。「マーク氏に直接会って話が出来る機会に、何を聞きたいか?」というシチュエーションを題材に、質問を投げかけ合いました。

  • 「ダブルダイヤモンドのプロセス成功例を伺って、自社に応用したい」
  • 「組織で正しいワークショップを行うための手法を学びたい」
  • 「リサーチ手法を受ける側になって、実践で理解したい」
  • 「サービスプロトタイピングのプロセスを一連で学んでみたい」

など、皆さんの興味・関心を共有できました。

「UX DAYS TOKYO 2020」に登壇される本書の編集者:マーク・スティックドーン氏に、直接サービスデザインの手法を聴いてみたい!
「UX DAYS TOKYO 2020」に登壇される本書の編集者:マーク・スティックドーン氏に、直接サービスデザインの手法を聴いてみたい!

500ページを超えるボリュームがある書籍を読み切り、濃密な学びが得られた読書会であったのは間違いありません。 UX DAYS TOKYOの読書会ならではの醍醐味として、「UXの仕事・勉強をしている皆さんが一同に介し、考えや学びを深められる」という機会は、なかなか他では得られないものがあります。

結びの言葉として、オーガナイザーの大本から、『サービスデザインを用いた結果・方法などはケース・バイ・ケースであって、自社の実践を導くうえで、サービスデザイナーの知見や経験、技量でいかに組織やプロジェクトを上手に進行できるかが、成功可否を左右するポイントになる』と、まとめがありました。

書籍に掲載されているケース・バイ・ケースの異なる事例から、どのように自分なりの「視点」を養い、UXを思考するべきか?が重要なテーマとなります。

有意義にお仕事に活かしていきたいですね。

UXの読書会を随時開催しています

UX DAYS TOKYOでは、UXに関する様々な読書会を開催しています。
一見自分のビジネスや勉強したい内容とは関係が無さそうな書籍に見えても、UXにとって重要な「視点と思考」を広げていくために大切なことを、読書会を通じて学ぶことができます。
そして、その学びを持ち帰った後で、単なる手法に留めるのではなく、自らの力で応用できる実践を身につけていきましょう。

当日イベントで利用したスライドは公開しています。

スライド>>「This is Service Design Doing サービスデザインの実践 読書会:UX DAYS TOKYO

読書会はConnpassのサイトで随時募集していますので、是非ご参加ください。
https://uxdt.connpass.com/

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