TOP お知らせ 読書会レポート PdMはプロダクトを成長させるために、ユーザーのアウトカムにフォーカスせよ

PdMはプロダクトを成長させるために、ユーザーのアウトカムにフォーカスせよ

同じ職種でも仕事内容は現場によって異なります。特にプロダクトマネージメントの仕事は現場によって大きく変化します。そのため、能力は異なっても問題ありません。この前提に基づいて書かれた書籍「プロダクトマネージャーのしごと」では、PdMの仕事が一見華やかに見えるが、実際には非常に地味であり、しかもプロダクトに不可欠な仕事であることが紹介されています。

読書会に参加した全員に「プロダクトマネージメントの仕事に関する本だけど、全てのチームメンバーに読ませたい」という共通認識が生まれました。なぜなら、書籍ではチーム結束を強化するために必要な知識や、現場で発生する問題を率直に描写し、それらを克服するためのマインドセットが提供されているからです。

ただし、著者のマット氏によれば「PdMがチームを一体化させるのは、ユーザーのアウトカムを実現するため」であると断言しています。

PdMに共通する仕事

PdMの仕事はユーザーのアウトカムを実現することですが、そのためにはユーザーを理解し、プロダクトの体験を設計するUXの知識テクノロジーに関する知識、そしてビジネスを展開するための能力が必要です。

これらの知識を基に、実行するチームを強化する必要があります。設計やアイディアが素晴らしくても、実現のための実行部隊が機能しなければ、目標を達成することできません。

プロダクトマネージャーが必要なスキル

「Disagree & Commit」を実行するために、過剰なコミュニケーションを行う

実行部隊であるチームメンバーの意識がバラバラでは上手に実行することはできません。実行するために、この書籍ではコミュニケーションを過剰に行うことを推進しています。過剰なコミュニケーションとは単に仲良くなるということではありません。

例えば、会議では「Disagree & Commit」を採用しています。意見が対立しても一度決定したらコミットするという意味で、決定事項には主体性を持って真剣に行動するということです。

ただし、最も重要なことは、決定過程が非常に重要であることを学ぶことができました。

私の知り合いに、良好な関係の先輩夫婦がいました。その夫婦から、結婚当初に決めていたルールについて教えてもらったことがあります。それは、「夫婦関係において、2人の意見が異なる場合に、話し合いを経て決定した後は、失敗が生じても互いに文句を言わない。」というものでした。夫婦関係でも異なる意見が生じるのは当たり前です。まさに、「Disagree & Commit」ですね。しかし、話し合いが十分でないと、失敗が起きた場合に納得がいかなくなります。

つまり、「Disagree」に至るまでの過程が非常に大切なのです。最終的には異なる意見である「Disagree」になるかもしれませんが、その前に「それ、先に言ってよ〜ぉ。」の様な内容を潰せますし、反対意見だとしても事前にちゃんと理解しておくことができます。
そうなれば、説得ではなく納得する(理解する)ことができます。そのためには、過剰とも言えるディスカッションを続けることが大切になります。

理解を深めるために、書籍では一般的な会議のシーンを取り上げ、懸念事項を詳細に掘り下げる方法をわかりやすく紹介しています。懸念事項を遠慮なく提示できる環境、すなわち「心理的安全性」を確立することは、(Disagreeに至る過程においても)意思決定において極めて重要であると私は理解しました。

「Disagree & Commit」の成功には、前段階や組織文化における「心理的安全性」も同様に重要であることを理解しておくべきです。言葉通りの解釈だけでなく、チームメンバーが率直な意見を述べ、異なる意見に対して開かれた対話ができる環境が整っていることが前提です。

心理的安全性が確保されると、チームメンバーは率直な意見を述べやすくなり、異なる視点や懸念をオープンに共有できます。特に、Disagreeに至るまでの過程でのコミュニケーションは、良い意味での対話と共感を促進し、より良い意思決定につながります。これが、会議やディスカッションにおいて懸念事項が出やすくなる一因です。

心理的安全性が確保されれば、メンバーは自分の考えや立場を堂々と表明でき、他のメンバーと協力して問題を解決するプロセスが円滑になります。これが、意見の不一致があっても円滑なコミュニケーションが維持される理由です。

大企業ほど、異なる意見や視点が多様であり、全員が一致する意見を得ることが難しい状況があります。このような複雑な環境であるからこそ、「Disagree & Commit」は素晴らしいコンセプトとなります。一度チームが合意したら、それにコミットして進む姿勢は、効率的かつ迅速な意思決定を可能にします。前段階や文化を考慮に入れながら、「Disagree & Commit」を実践することが、成功への鍵となります。

「良さそう」の言葉はコミットしていない証拠

チームが合意を確認するために、「良さそう」という言葉が危険であると記載がありました。”良い”とポジティブな言葉なのに、「なぜ?」と思ったのですが、「〜そう」という言葉が駄目なんじゃないかと推測しています。

「〜そう」という言葉が、単なる表面的な同意や理解を示す可能性があります。本当に理解しているのか丁寧に聞く必要があるとも記載がありました。”「〜〜そう」という言葉を使うな。”ということではなく、単なる肯定的な感想ではなく、具体的な理解を求めることで、誤解や意思疎通の不足を防ぐことができます。そのため、相手が言葉で復唱するよう促すなど、コミュニケーションを深める手段が重要です。

事実、合意していない内容で責任のある仕事を積極的にコミットすることはできません。つまり、相手の理解と合意するまでコミュニケーションは続ける必要があります。書籍にかかれているような、過剰なコミュニケーションが必要なんだと学ぶことができました。

また、ステークホルダーには、決定材料や不安に思わせない状態に情報(連絡)を渡し続けなければならないともしています。実際に、その立場に立てば何の連絡もないのは不安です。

その不安から「◯◯◯の作業は、◯月◯日までにできますか?」のような、催促されているコミュニケーションになってしまいます。円滑なコミュニケーション方法として、作業者の行動を知るためにも「やり方を教えてもらえませんか?」のような言葉にすると、作業の工数も知ることができます。また、聞かれた側も、何を行動する内容かが明確になり、期日までにできそうかどうかをイメージすることができます。

この様にちょっとした言葉のやり取りでもコミュニケーションが円滑になり、心理的に仕事を捗らせてくれます。コミュニケーションのポイントはいくつもありますが、人と人との関係性もあるので、正解は千差万別です。丁寧にコミュニケーションを行う重要性に気づくことができました。

アウトカムを念頭に!メニューは料理ではない

プロダクトチームは最終的にユーザーのアウトカムが実現できるサービスを作り出さなければなりません。ドキュメントやロードマップなどはメニューであって料理ではありません。

ドキュメントやロードマップは時間をかければどれだけでもかけることができます。ドキュメントや仕様書はステークホルダーが求めるから当たり前という前提で作業しているケースが多いですが、なぜ、ドキュメントやロードマップを欲しいのか?その目的を聞いて達成できれば、長時間かけてドキュメントを作る必要はありません。書籍では、”不完全なドキュメントのままでも良いので、1時間ほどの時間で完成させよう。”としています。

そして、特に重要なのは、「料理を作る」つまり実行に力を注ぐことだと述べています。ユーザーのアウトカムに焦点を当て、提供するプロダクトのミッションを振り返りつつ、組織全体がそのミッションを簡潔で理解しやすい形にすることが必要です。

データは抽象的で多岐にわたりますが、その高い抽象度に惑わされず、常にユーザーのアウトカムが何であるかという基本に立ち返ることが強調されています。この原点に戻ることで、プロダクトや戦略がユーザーに真に有益であるかどうかを確認できます。

また、組織内でベストプラクティスやフレームワークを採用する際には、単なる取り入れるだけでなく、その背後にある本質を理解することが強調されています。ベストプラクティスやフレームワークは参考になりますが、状況や課題に応じて柔軟に適用し、その本質を見極めることが肝要であると述べています。具体的な詳細は書籍の7・8章に詳しく掲載されているので、そちらを参照いただくと良いでしょう。

組織の成長をはかる

組織の成長には、メリッサ・ペリさんの引用に基づいて、以下のサイクルが必要です。

LEARN(学ぶ): 新しい知識や情報を取り入れ、組織全体が学習することが重要です。これには市場の変化やトレンド、競合他社の動向などの外部環境に関する学びだけでなく、内部プロセスやチームの学びも含まれます。
BUILD(作り・実行): 学んだ知識を元に新しいアイディアやプロダクトを創り出し、実際にそれを実行に移すことが必要です。アイディアを具体的な成果物に形にし、実際のプロダクトやサービスとして市場に提供します。
MEASURE(測定): 実行した成果物やプロセスの効果を測定し、評価することが欠かせません。データやメトリクスを通じて、組織がどれだけ成長し、目標にどれだけ近づいたかを明確に把握します。これにより、次の学びと改善の方針が導き出されます。

このサイクルは継続的に回し続けることで、組織が変化に対応し、持続的な成長を遂げる土台を築くことができます。

Melissa Perri Lean Product Management – Agile on the Beach 2014

1年ほど学ぶと、情報を知っているだけで満足してしまい、できた気になる人が現れる現象は、ダニング・クルーガー効果と呼ばれるバイアスの一例です。

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本来は、初めて学んだことでも、時間が経過し振り返り学ぶことで、新たな気づきが生まれます。このプロセスで気づきを深めるためには、他者に教えることが効果的です。

他者に教える行為は、自分の理解を整理し、抽象的な概念を具体的に表現する手助けとなります。教えるプロセスで、自分が理解していない点や深めるべき知識を発見することができます。

会社や組織がユーザーに提供できるアウトカムを明確にするためには、ビジョンと実務を結びつけ、具体的で一貫性のある戦略を展開する必要があります。これにより、組織全体が同じ目標に向かって協力しやすくなります。

3月16日に開催されるワークショップでは、組織や会社の成長を測るためのメトリクスに焦点を当て、実践的な知識や気づきを得られることが期待されます。書籍と同様に、参加者は現場で即座に活用できる手法やアイデアを学ぶことができるでしょう

このワークショップは、理論だけでなく実践的な経験を通じて、組織の成熟度を評価し、改善する手段を見つけるのに役立ちます。実際のケーススタディや実践的な演習を通じて、参加者はメトリクスの活用法を理解し、自らの組織に応用できるスキルを磨くことが期待されます。

https://2024.uxdaystokyo.com/workshop/

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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