先日、UX DAYS TOKYOで翻訳された書籍「デザイナーのための心理学」の読書会が開催されました。デザイナーやエンジニアが参加し、心理学の活用方法を学びました。
心理学を利用して売上ようとはしてはいけない
心理学を利用してデザインすると、一時的に売上があがる場合もあります。しかし、一朝一夕で調べたことを単純に使えば効果が出るわけではありません。「マーケティング 心理学」とGoogleで検索すると、多くのページがヒットします。中には「人を動かす」という見出しもあります。
心理学は140年ほど前から研究され続け、未だ多くの論文が出されている学問であることを考えれば、信頼性のわからないWebページの情報を鵜呑みにして心理を掴むことは難しいでしょう。
著者のジョー・リーチさんも、若い頃に心理学に出会い、相手を操る魔法のようなものを手に入れたと感じたそうですが、実際にはうまくいかなかったそうです。
売上が上がれば良い?リアルな現場の話も
読書会に参加したデザイナーの現場では、ABテストの結果が良かったデザインを採用する「勝てば官軍」指標でデザインを行っているとのことです。しかし、一貫性のないデザインに本人は困っていました。
UX DAYS TOKYO 大本さんは、例えとして「Webサイトで商品を買う時にCTAのデザインを覚えているか」と問いかけ、ユーザーがCTAのデザインだけで商品を購入していないことを経営陣に気づかせるべきだ、とアドバイスされていました。
心理学はユーザーのために使う
売上だけの目的で心理学を使っても結果的には成功しません。前回開催された「ダークパターン」の読書会でも、売上を目的としたデザインは、ディセプティブデザインで、企業に損失をもたらすことになると指摘しています。
本書籍でも、人々を誘導して望まない行動を取らせるスラッジデザインが多い中で、善悪を判断し、ユーザーのために心理学を活用すべきだと述べています。ユーザーに良いデザインであれば、ユーザーは使い続け、結果的には売上が上がります。
心理学を活用することは簡単ではない
心理学は、多岐にわたる研究分野から成り立っています。書籍では、認知心理学や社会心理学を中心に、デザインに近い領域から記憶や脳科学に至るまで、多くの分野と関連性を図で示しています。
心理学を深く理解するには、大学で学ぶレベルでの学術的な領域で基礎を学ぶ必要があることが書かれており、心理学の広大な領域を理解することは容易ではないということを痛感しました。
ただし、デザインと心理学を結びつけて教える大学はないし、大学に通うには時間がかかるため著者はお勧めしていません。その代わりに、オンライン学習が紹介されており、具体的に受講できるコンテンツも掲載されていました。
(海外のスクールですが、オンラインで学べます。それらの情報を手に入れるだけでも本書を読む価値があります。)
難しいからユーザー調査やテストで確かめる
心理学を深く学んでも、ユーザーは想定通りに行動しないのでリサーチやテストが必要です。つまり、心理学に基づいて設計し、ユーザー調査によって検証することで、効果的にデザインにすることができるのです。海外の優れたUXデザイナーでもユーザー調査を必ず行っているのが納得できました。
こんな学び方があったんだ!デザインに迷った時の情報収集方法
デザインに関連した心理学研究や調査も、実はインターネットで読むことができます。書籍では、デザインに迷った場合に、研究結果を参考にすると良いと書かれています。関連する文献を見つけるために、現場で使えるテクニックが載っていたのでご紹介します。
最適なメニューの数に迷った場合
例えば、メニューの選択肢をいくつまで表示するのが最適か迷った場合、Googleの文献検索サービス「Google Scholar」で「メニューデザインの最適解」と検索すると、「メニューデザインの階層における最適解:構文と意味論」という文献が見つかります。
調査方法や推論から、自身の目的に適した文献かを判断します。引用や参照文献から、より最適な文献がないか確認しましょう。
文献に目を通す時に優先的に見るべき箇所や、参考にして良い文献を判断する方法など、他にも効率的に文献調査するのに役に立つ内容が多く書かれていました。
心理学を活用できれば、差がつくデザイナーになれる!
本書籍は、デザインにすぐ使える心理学のテクニックが書いてあると誤解されがちです。心理学は書籍1冊読めば、効果を出せるほど簡単ではありません。優れたデザイナーは、常に多くを学び、自分で考え最適解に辿り着きます。
私は、もっと心理学を深く学べば、他と差がつくデザイナーになれる!とモチベーションがアップしました。今後は書籍でも紹介されているHCI(human computer interaction)を学んでいきたいと思っています!