TOP デザイン・情報設計・UI Re-statingという設計思考──LLM時代のUXデザインパターン入門

Re-statingという設計思考──LLM時代のUXデザインパターン入門

本記事は、LLMのデザインパターンを一つずつ紐解いています。最初は「Re-stating」(再表現)です。
原文:https://www.uxforai.com/p/llm-design-patterns-re-stating-auto-complete-talk-back-suggestions-nest-steps-regen-tweaks-and-guard

Re-Stating CopilotのベストプラクティスやCopilotのレポート機能について語るうえで、Copilotをここまで便利で人気のある存在にしている、LLMの「デザインパターン」*に触れないわけにはいきません。

※「デザインパターン」とあえてカギ括弧にしたのは、厳密にはデザインパターンというよりも「機能」に近いと考えているからです。現在(2023年執筆時)のLLMのUIはまだ発展途上で、決まった型が確立はありません。だからこそ、この領域のUXデザインとリサーチは非常にエキサイティングなのです。

現代のAIが示す「理解しているように見える力」

今の言語モデル(LLM)で特に印象的なのは、異なる情報や文脈を組み合わせて、人間のように深い理解を示す点である。

たとえば、あなたが運転中にAIに向かって「Park(パーク)」とだけ言ったとしよう。
最新のAIなら、カレンダーや位置情報などを参照し、あなたがサンフランシスコ市内のナイトクラブに向かっていて、すでに夜9時を過ぎ、日が暮れているという状況を理解することができる。

つまり、ChatGPTのような最新のLLMは、「国立公園の案内」や「植物園での休憩プラン」などの他の可能性ではなく、「目的地周辺の駐車場を探している」というあなたの意図を正確に判断できるというわけだ。

ChatGPT o1-previewの会話画面。運転中のユーザーが「Park」と命令し、サンフランシスコのナイトクラブ近くの駐車場を探すよう依頼している様子を示すスクリーンショット

これに比べて、従来の音声アシスタント(Siriなど)は、こうした文脈理解を行うことができない。
むしろ、Siriは「どの“Park”のこと?」と聞き返してくるだけで、今となっては少し「Silly(まぬけ)」に見えてしまうほどである。

ただし、ここでSiriやCortana、Alexaといった過去のアシスタントを批判したいわけではない。
むしろ、現代のLLMがいかに進化し、ユーザーの意図に沿った行動を取れるようになっているかを示したいのだ。
そしてこの能力をうまく引き出すためには、AIに適切に「理解」させるためのデザインパターンが欠かせない

iPhoneのマップアプリでパークの検索結果を表示。Carnegie Park、Stockmen's Park、Lizzie Fountain Park、Doolan Park、Madeira Parkの5つの公園が距離と評価と共にリスト表示され、下部にSiriが「Which one?」と質問している画面

“Park” 出典: Siri

技術は「召使い」にも「主人」にもなる

1921年のノーベル平和賞受賞者、クリスチャン・ランゲ(Christian Lange)はこう語っている。

“Technology is a useful servant but a dangerous master.”
技術は有能な召使いにもなれば、危険な主人にもなり得る。

私たちはAIを「召使い」として上手に使いこなす必要がある。
そのために欠かせないのが、以下のようなLLMデザインパターンである。

  • Re-stating(再表現:言い換え)
  • Auto-Complete(自動補完)
  • Talk-Back(フィードバック)
  • Suggestions(提案)
  • Next Steps(次のステップ)
  • Regen Tweaks(再生成の微調整)
  • Guardrails(ガードレール)

今週はその第1回目、「再表現(Re-stating)」から始めます。

Re-stating:AIが「どう理解したか」を見せるデザイン

「再表現:言い換え(Re-stating)」とは、AIがユーザーの入力をどのように解釈したかを、ユーザーに伝え返す仕組みのことである。
この仕組みを取り入れることで、AIが誤った方向に進むのを防ぎ、ユーザーが意図通りの結果を得やすくなる。

Power BIのQ&A機能によるデータ可視化例:自然言語クエリから生成された顧客分析テーブル

出典元: YouTube
Power BIにおける自然言語クエリ(Q&A)の使用方法
– 詳細レビュー【2022年更新版】by Enterprise DNA

たとえば、Microsoft Power BI の「NLP Ask」機能がその代表例だ。
ユーザーが「…where is 2017」と入力すると、システムはそれを自動的に補完し、「2017(注文日)」という形で再表現してくれる。

このように、曖昧な入力を補い、文脈から正しい意味を導くことができる。
人間がタイプミスをしたり、急いで入力しても、AIが自動的に文脈を推測して補正してくれるのだ。

「再表現」はいつ必要か?

では、すべての場面で再表現を行うべきだろうか?
答えは「場合による」。

前回の記事「AIの精度なんてクソくらえ:UXがやるべきこと」で触れたように、判断には次の2つの軸がある。

  1. AIが間違える頻度
  2. 誤りが与える影響の大きさ

これらを掛け合わせて、ROI(投資対効果)を考える必要がある。

たとえば、Power BIのように「Askクエリ」を実行しても、誤解釈による損失が小さいケースでは、即実行しても構わない。せいぜいAzureの計算コストが少し増える程度だ。

一方、SMS送信のように、誤った動作が致命的な結果を招く場合は話が違う。
たとえば、AIが「go duck yourself(くたばれ)」という誤変換をそのまま上司に送ってしまったら大変である。
このようなリスクを避けるためには、「このメッセージを送信します。よろしいですか?」といった確認ステップが欠かせない。

— Greg

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UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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