2月28日、マイナンバーカードの登録を完了させようとマイナポータルにログインしましたが、手続きに迷ってしまい、結局完了できませんでした。周囲に話してみると、「私もできなかったので、結局役所へ行きました」という人が何人もいました。
日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が盛んに推進されていますが、デジタルで完結できないため、結局リアルな窓口で手続きをする──これはむしろ「逆DX」ではないかと感じました。
なぜオンラインで完結できないのか?
オンライン手続きが完結できない理由の一つに、わかりにくいUIがあります。特に、マイナポータルにログインできない問題が大きな障壁となっていますが、それ以外にもいくつかのUI上の課題が存在します。
1.ユーザーに文字を読ませようとしている
私は過去に免許証などの証明書を撮影・アップロードして認証する手続きを経験していたため、そのメンタルモデルに基づき「マイナンバーカードの読み取り=撮影」と思い込んでしまいました。そのため、細かな説明文を読まずに進めた結果、以下のような画面に行き着きました。
アプリには「スキャンの準備ができました。マイナンバーカードをセットしてください。」と表示されているが、画面上のボタンは「キャンセル」のみ。
どうすればよいのか分からず、私は戸惑いました。
数回繰り返すうちに、前の画面に「マイナンバーカードの上に iPhone を乗せてください。」と書かれていることに気付きました。しかし、それでも問題は解決しませんでした。次に直面したのは、スマホのカバーを外さなければNFCが認識されないという問題です。
何度試しても認識されないため、繰り返し操作するうちに「カバーを外してください。」という案内があることをようやく発見しました。
2.セキュリティと使いやすさのバランス
さらに、マイナポータルのログインは一度認証すれば済むものではなく、ログインのたびにマイナンバーカードをかざし、スマホカバーを外す必要がありました。
この点について社内で議論したところ、「ログインするたびにマイナンバーカードが必要なのは不便では?」という意見が多数を占めました。
もちろん、セキュリティ強化の観点から、他人が不正にログインするリスクを減らす意図は理解できます。しかし、本当にそれが必要なのでしょうか?
悪意のあるユーザーは、どんな仕組みでも突破しようとします。
むしろ、ログイン自体は簡単にし、重要な手続きのみマイナンバーカードが必要という方式でも十分ではないかと感じました。
3.ログインできない問題はネット上でも話題に
一般のユーザーがどのように感じているのか調べてみると、ログインできずに困惑している人が多数いることが分かりました。そのため、解説ページや対処法をまとめた記事もいくつか見つかりました。
Googleなどの大規模サービスでもログインに関する問題は発生しますが、マイナポータルの問題はそれとは異なり、UI設計の根本的な課題が関係しているようです。
日本のデジタルプロダクトを「逆DX」にしないために
今回の問題は、1回のユーザビリティテストで容易に発見できるレベルのものです。しかし、UAT(ユーザー受け入れテスト)などの段階では問題視されず、そのままリリースされてしまったのでしょう。
もし、ログインできない人が一定数いることを認識していたとしたら、それはデジタル庁のミッションとは矛盾します。つまり、適切なユーザビリティテストが実施されていない可能性が高いと考えられます。
ユーザビリティテストは決して高コストなものではありませんが、適切に実施するにはスキルが必要です。単発のゲリラテストだけではなく、効果的なフォーマルテストを実施するスキルが求められます。
コンサルタントの役割も重要
また、企画の段階で優れた構想があっても、最終的なプロダクトが使いにくければ意味がありません。
そのため、コンサルタントも完成したプロダクトのユーザビリティを評価できる視点を持つべきです。
「逆DX」にならないためにも、単に技術や企画の質を高めるだけでなく、ユーザーの視点に立ったプロダクト設計を徹底する文化を根付かせる必要があると強く感じました。
4/2. のローラ氏のユーザビリテのワークショップには、ぜひともコンサルタントの方や、システム開発している方々には、出来るだけ多くの人数でご参加頂きたいです。