Melissa Perriのブログの「Stop Blaming the User」の翻訳記事です。
長い出張が終わり、私は家に帰れることに喜びを感じていました。しかし、ユナイテッド航空とのやりとりは、そんな気分を完全にぶち壊すものでした。
ユナイテッド航空のスタッフは会社の犯した過ちについて、ユーザーである私を責めました。これらの光景は製品管理の現場でよくある出来事かもしれません。
ロンドンからニューアークへの帰りのチケットを予約する際、最も安い選択肢は「Mixed Cabin」でした。ロンドンからダブリンまではビジネスクラス、ダブリンからニューアークまではエコノミークラスでした。
空港へ行くために朝5時に起きなければならない私にとって、最初の便でビジネスクラスというのは魅力的だったので、そのチケットを予約しました。
これが、先ほど確認した私の予約状況です。
2016年10月22日 イギリス、ロンドン(ヒースロー空港) - アメリカ合衆国、ニュージャージー州、ニューヨーク/二ューアーク(リバティー国際空港
出発: |
到着: 10:10 a.m. 2016年10月22日(土) アイルランド、ダブリン(ダブリン空港) |
所要時間: 2時間20分 |
飛行距離: 280マイル/451km |
便名:UA7653 運航:エアリンガス 機種:エアバス A320 料金クラス:ビジネス(Z) 食事:なし 特別食の提供なし |
出発: 12:55 p.m. 2016年10月22日(土) アイルランド、ダブリン(ダブリン空港) |
到着: 3:35 p.m. 2016年10月22日(土) アメリカ合衆国、ニュージャージー州、ニューヨーク /二ューアーク(リバティー国際空港) |
所要時間: 7時間40分 合計所要時間: |
飛行距離: 3,193マイル/5,139km 合計飛行距離: |
便名:UA131 |
日本語翻訳
しかし、エアリンガス航空の搭乗手続きを行ったら、ビジネスクラスではない席の番号である「27B」というシートを割り当てられた時の私の驚きが想像できるでしょうか。
「何かの間違いに決まっている」、そう思った私は、ユナイテッド航空にてビジネスクラスを予約したことを客席乗務員に伝えました。しかし、彼女はこう答えました。「弊社の便にはビジネスクラスは存在いたしません。」
なんというおとり商法でしょうか! ユナイテッド航空は、存在しない商品を私に売っていたのです。2時間ちょっとのフライトについて、一日中不平を言うつもりはありませんが、問題の原因を突き止めたいと思いました。そこで私は、誰もが腹が立った時にするように、問い合わせのツイートしました…
ここでも、カスタマーサービスの担当者は、私に落ち度があると考え、些細なことであるかのように対応したのです。
”メリッサ、料金クラスZは、エアリンガスではビジネスクラスではありません。この件については、webチームにアプリを検証させます。大変混乱をお招きしたことと存じます。問題についてご指摘いただき、ありがとうございました。”
”メリッサ、あなたは帰りのフライトについて、ビジネスクラスを購入されていません。アプリの表記以外でビジネスクラスであると思われた理由はありますか?”
”はい、注文時、最初の便はビジネスクラスで、乗り継いだ後の便はエコノミーとなっていました。精算の時にもそうなっていました。最初の行程がエコノミーであるとはどこにも書いてありませんでした。購入手続きの最初から最後までずっとそうでした。なぜ私に聞かれるのか理解できません。私はチケットを買い、そこに書かれている通りのことを期待しただけで、何も間違ったことはしていません。”
”メリッサ、出発時にビジネスクラスをとられたことはわかりますが、予約状況を見る限り、後半のフライトについてはビジネスクラスではありません。”
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航空会社に勤めているわけでもない人が、どうやってエアリンガスにビジネスクラスが存在しないことを知りえるのでしょう? 買ったチケットに”ビジネス”と書いてあれば、それがビジネスと期待するものです。私が不満を言うのも当然です。しかし、ユナイテッド航空のスタッフは私を非難しています。
それは、レストランに行き、カモを注文したとして、ウェイターが「すみません、メニューにはカモと書きましたが、実際には牛肉という意味でした。こちらが牛肉になります。ご了承ください。」と言っているのと同じです。
この記事を記載したのは、単にユナイテッド航空を非難するためにこの話をしているわけではありません(まあ、それも一つの理由ですが)。この話の要点は、製品管理の現場においてこの基本的な誤りが頻繁に起こっているということです。
特に、プロダクトマネージャーはユーザーを非難することが大好きです。ユーザーが何かを理解できなければ、それは愚かな客で、自分の求めるものを伝えられなければ、それは難しい客、苦情の電話を掛けてくるユーザーは不愉快な客といいます。
これは危険な考え方ですが、意外にも頻繁にみられます。「ユーザーは自分の必要としているものを理解していない」、そんな言葉が世界中のプロダクトマネージャーの合言葉になり、彼らがユーザーの声に耳を貸さない理由となっています。ユーザーが(自分の)ほしいものを理解していないのに、伝えられるはずがないというのです。
問題は、ユーザーではなく自分たちにある
「知識の呪い」は、プロダクトマネージャーの方が、自社の製品について、ユーザーよりも詳しいという事実を忘れさせます。自分(プロダクトマネージャー)にとって簡単なことが、彼ら(ユーザー:顧客)にとっていかに難しいかということが理解できません。ユーザーは問題児であり、彼らの苦情や、質問に対するあやふやな回答とともに立ち去ってくれれば、世界一の製品を作ることができると信じているのです。ユーザーが立ち去れば、ビジネスは成り立たないということを忘れて…。
先日、非常に大きな会社のプロダクトマネージャーの教育に携わりました。私は常に、ユーザーに主眼を置き、彼らの問題を突き止めることから始めるように伝えます。これを実践するため、私たちは(製品を作るための)プロダクト・カタの教室を開きました。プロダクト・カタの背景には、一度立ち止まり、何を知る必要があるのかを理解します。知るためのテストやステップを作成する目的があります。
教室のワークショップでは、「紙でできたピザ」をユーザーに提供することになりました。スピーカーの一人であるクリス・マッツ氏が、仮のユーザーになり、ワークショップを手伝ってくれました。彼らは45分以内に10ドル分のピザをクリスに売らなければなりません。全員がクリスに向かって一斉に群がり、「何が欲しい?」と聞き始めました。
しばらくすると、参加者はユーザーであるクリス氏のことを嫌いになりました。中には、「クリス氏に身を守る方法を教えるために、ピザ屋をやめて(武芸)マーシャル・アーツを始めるよ」という人さえ出てきました。冗談ではありますが、この問題を象徴する出来事でもあります。残念なことに、これと同じ問題は、現実でもおきていています。彼らは、自分たちの質問の「何が欲しい?」と聞いているのです。
ユーザーが求めるものを理解するのはユーザーの仕事ではない
ユーザーが直面している問題が何なのか理解することが仕事です。ユーザーのおかれた状況や問題、要求を聞き出すための質問の仕方を考える必要があります。この質問がうまくできないがゆえに、あなたは顧客に対してストレスを感じてしまいます。
(考えない状態)首のない鶏のように走り回る(受講生)彼らを呼び止め、私は聞きました。「何を知る必要があるの?」と。(直前に伝えていたにもかかわらず)誰もそのことについては考えていませんでした。クリス氏が購入することを期待して、やみくもにゴミになる質問や作業をしていました。
私のことの問いから、彼らは考えはじめ、ユーザーがピザを食べるときの状況を知ることが大切だと気づきました。その後は、5分とたたずに問題を解決することができました。30分以上、紙のピザを作り続けたことは無駄で意味がないことでした。
このような経験は、身に覚えがありますか?
ユーザーを責めるのは簡単なことですが、これは企業にとっては大変危険なことです。続けてしまえば、顧客からの軽蔑・我々自身の大いなる傲慢に満ちた関係を生み出すことになります。
大企業になればなるほど、このような状態は顕著なものとして現れます。たくさんの組織的階層や、超長期的雇用者、ユーザーとの間に介在する多様な部署の数々により、大切なことをすぐに忘れてしまいます。このようなプロダクトマネージャーは、「私は顧客と話すことができない。ほかの部署の仕事だからだ」と言います。
複数の部署が存在する場合でも、ユーザーについて知る方法は常に存在します。
例えば
- 損失の顧客にアプローチ
カスタマーサービスチームと話す。今年の初頭にクライアントと仕事をしている時、話すべき顧客を見つけるのに苦労しました。登録済みのユーザーとはすぐに話ができましたが、登録しなかった顧客にコンタクトする術がなかったのです。しかし、カスタマーサービスにはそれができました。私たちが知りたいことを彼らに伝え、質問事項を手渡しました。その後、ユーザーについて分かったことを検証するため、彼らと毎週会いました。結果的に大きな結果をもたらすことができました。 - 問題発見の仕組み
上記のケースを利用して、カスタマーからの声で企業の姿勢を学ぶ方法も考えました。顧客が登録しなかった際に意見をもらえるように、Qualarooのようなサービスも導入しました。「今回登録されなかった理由は何ですか?」という質問を用意し、なんでも書き込めるようにしたのです。その結果、何千件もの回答が得られ、最大の問題点を突き止めることができました。 - 生の声を拾う
B2B企業ので働いていた時、UX部署の主任でしたが、「邪魔になる」という理由で、ユーザーと話すことができませんでした。しかし、私は食い下がり、セールスチームと同行することを許されました。ユーザーとの会合で、作っているものが、顧客の期待しているものとは違うということがはっきりしました。その結果を持ち帰ることで、さらなる調査が任せらました。そして、最終的には、有志のユーザーグループに、先行してツールへのアクセス権を渡し、集中的な改善を行うことができました。この方法は、調査の方法としても計り知れない効果があることが分かりました。
ビジネスの成立には、”誰かが製品を買ってくれるからだ”ということを、つい忘れてしまいがちです。そして、誰かとは、データー上の数値の塊によって表される名もなき虚像ではなく、実在する一人ひとりの人間です。人間には感情と欲求があります。
ユナイテッド航空のサービスに料金を支払い、取り間違いが私の間違いと言われたとき、私は腹が立ち、不当だと感じました。この経験で、他社へ目を向けることになりました。航空会社を問わず、あなたもそんな思いをしたことがあると思います。あなたは何度彼らの対応が悪いとツイートしましたか? 彼らが全体的に顧客を大事にしていないと感じましたか?
あなたのユーザーも同じです。あなたがこういう対応をするとき、彼らはどんな気持ちになるでしょうか? 彼らを責めるのは解決策にはなりません。
顧客と話すのが簡単ではありません。しかし、会話が彼らを理解し共感を得る唯一の方法です。これが良いプロダクトマネージャーの条件です。ユーザーと話がしたくないのなら、他の仕事を探すべきです。やってみようと思うのなら、一歩引いて、ユーザーの立場でものを考えることを忘れないでください。