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WBC優勝が教えてくれた、最強のチームを作る心理学

WBCの優勝にサッカー界からも祝福【写真:Getty Images】
引用:https://www.football-zone.net/archives/440466

2023年3月22日、日本はWBC決勝戦でアメリカを破り、世界一に輝きました。おめでとうございます!

この優勝の要因として、技術的な実力だけでなく、チームの団結力や心理的要素が大きく影響していたことは間違いありません。特に、ダルビッシュ有投手がいち早くチームに合流し、14年前の優勝経験を共有したことが、選手たちの結束力を高めたと言われています。

心理的リアクタンスと勝利のメンタリティ

心理学には心理的リアクタンスという概念があります。これは「やりなさい」と強制されると、逆にやる気を失う心理的傾向を指します。この影響は勝負の最終局面において顕著に表れます。

例えば、「絶対に勝て!」と強く言われすぎると、プレッシャーに押しつぶされてしまうことがあります。しかし、心理的リアクタンスを適切に理解すれば、「自分のペースで行いたい」という願望が根底にあることがわかります。つまり、選手が主体的に「勝ちたい」と思える環境が整っていれば、より強い精神力が発揮されます。

自分の意思で行動できないと強い思いが形成できない

主体性が生む強い意志

「勉強しなさい!」と言われるとやる気がなくなるのと同様に、「勝て!」と外部から押し付けられるだけでは、本当の意味での勝利への執念は生まれません。重要なのは、「なぜ勝ちたいのか?」を自分自身で考え、主体的に動くことです。

WBC決勝戦での大谷翔平選手とマイク・トラウト選手の対決は、その象徴とも言える場面でした。大谷選手は試合中、自ら「諦めない!勝つんだ!」と声に出して気持ちを高めていました。このように、自分自身で勝利の意義を見出し、主体的に行動することで、本当の強さが生まれます。

ビジネスにも活かせるチーム心理学

「勝ちたい」という気持ちが、人から言われたものだとどうなるでしょうか?

心理的リアクタンスの観点から見ると、そのような動機は諦めやすい傾向にあります。自ら強い思いを持つことができていないため、モチベーションが続かないのです。

それどころか、「勝つんだ!」と周囲から言われることで、逆にプレッシャーを感じてしまうことさえあります。

メンバー一人ひとりが主体性を持ち、「なぜ勝ちたいのか?」「どうすれば諦めない自分になれるのか?」を深く考え、自問自答することが大切です。

しかし、強い思いは簡単に生まれるものではありません。ただ「勝つこと」だけにフォーカスしすぎると、プレッシャーとなり、無意識のうちに嫌になってしまうこともあります。

そのプレッシャーから解放されるためには、「勝つこと」ではなく、そのプロセス自体を楽しみ、好きになる発想が必要です。「自分が好きだからやっている」と認識できると、主体性がより強まり、自らの意志として気持ちを貫くことができるようになります。

環境がチームを変える

チームの雰囲気や言動は、個々の選手の心理に大きな影響を与えます。

例えば、スポーツジムで筋トレを継続する際、自分一人では続けられなくても、周囲の頑張る姿を見たり、トレーナーからの励ましを受けることで継続できることがあります。これは、WBC日本代表チームにも当てはまります。

決勝戦前、大谷翔平選手はチームの士気を高めるために、「憧れの選手と対戦するけど、勝ちに行くんだ!」と声をかけました。この言葉が選手たちの意識を変え、最終的な勝利につながったのです。

大谷翔平選手は、決勝戦の士気を高めるために「メジャーリーガーで憧れでもある選手がいるけど、勝ちに行くんだ!」という言葉を円陣の声がけとしてチームメンバーに伝えていました。

登板している時も、全身全霊で声を出してボールを投げている大谷選手を見ているだけで、メンバーの気持ちは高まったようです。そんな強い思いは、チームメンバーの気持ちも高め、戦っている行動や雰囲気から、「自分も勝てるのではないか?」と自ら思えるチームができあがります。言動や環境が、チームを優勝させるのです。

ビジネスにも活かせるチーム心理学

1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え

スポーツチームだけでなく、企業のチームや組織においても、心理的要素は成功の鍵となります。

シリコンバレーでコーチングをしていた有名なビル・キャンベル氏をご存知でしょうか。
私は書籍「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」で彼のことを知りました。

アップルの創業者・ジョブズ氏の師であり、グーグル創業者たちをゼロから育て上げたコーチ。さらには、アマゾンのベゾス氏を救い、ツイッターやユーチューブのCEOたちを鍛え上げ、シリコンバレーの企業に空前の成功をもたらした伝説のリーダー。

これほどの功績を持つのだから、さぞ卓越した経営のプロかと思いきや、意外にも彼の出発点はアメフトのコーチでした。

デジタルの世界も、結局のところ”人の組織”によって成り立っています。強いチームを育てるためには、自分だけでなく組織全体の成長を考え、心理的要素を理解しながら、しなやかで成長し続ける組織をつくることが欠かせません。

心理バイアスで組織を成長させる

書籍「バイアスを回避するためのデザイン(Design for cognitive Bias)」の読書会で、デイビット氏がプロダクトを成功にさせるために、組織を大谷選手のように導いた経験を学ぶことができました。

先程のように、強い思いをもたせるために、相手や自分に「どうやって?」などの問いかけをして、自主的に思うデザイン(設計)をしていると言います。強い組織を作るために、認知バイアスを知り、バイアスも上手に使う必要があると言います。

私自身、コンサルティングの現場で「良いアイデアがあっても、開発者自身が納得し、自分のアイデアだと感じなければ、実行されず成功しない」場面を何度も経験してきました。

タスクとして指示通りに動いているだけでは、そのタスク自体の正しさに気づけません。「何のためにこれを作っているのか?」「どうすればもっと良くなるのか?」と主体的に問い続ける組織でなければ、強いチームは生まれません。今回のWBC優勝からも、強い組織には主体性が不可欠であることを再認識しました。

ぜひ、組織を強くするためのマインドセットや仕組みづくりを学んでみてください。かつてGoogleはスーパースターエンジニアを集めても失敗し、それをビル・キャンベル氏が立て直したと言われています。優れたメンバーが揃っているだけでは、組織は強くなれないのです。

上司やステークホルダー、発注者の指示通りに作るだけでは、主体的に動いているとは言えません。チーム全員がインクルーシブに動ける組織設計をし、強い組織を築いていきましょう。これは、コーチングを仕事とするビジネスコンサルタントはもちろん、プロダクトマネージャーやプロダクトオーナーにも求められる重要な役割です。

組織を強くするために

WBC優勝から学べることは、単なるスポーツの勝敗だけではありません。チームや組織が強くなるためには、以下のポイントが重要です。

  • 個々のメンバーが主体性を持つ
  • 心理的リアクタンスを理解し、強制ではなく自主性を促す
  • 環境や言動がメンバーに与える影響を意識する
  • チームの一体感を高め、互いに刺激し合う文化を作る

どんなに優秀なメンバーが揃っていても、組織全体の環境が整っていなければ成果は生まれません。強い組織を作るために、心理的要素を理解し、主体的に動ける環境を整えることが大切です。

WBCの優勝を機に、皆さんのチームや組織も、より強く成長するきっかけを作ってみてはいかがでしょうか?

組織を強くするワークショップの開催

2023年4月1日(土)にデビット・ディラン氏のワークショップ「インクルーシブデザイン:バイアスに配慮した実践と組織内の環境構築」があります。こちらで、彼の経験と強くする組織の方法を体験を通してぜひ学んでいただきたいです。

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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