日本ではなぜかUIとUXの違いだけを語る記事が多く存在していますが、私個人的にはその違いを深く理解するよりUXは深く学ぶことがたくさんあると考えています。今では少なくなったかな?と思っていたのですが、再燃しているようで、かつ、UXの考え方も違った形で理解すると良いのでは?と感じたので記事にしてました。
ミルクボーイがUI/UXを語る?
UXとUIの違いを、お笑いのミルクボーイさんが言ったら。というパロディ的な記事がわかりやすいと話題になっていました。UI/UXの違いがわかりやすいと思う方もいたようですが、違いを理解する必要性があるのか?と疑問をもっています。同じように思った方もいらっしゃったようで、「虚空でしかない」とTweetされている方もいました。
私は、違いを深く理解したところで得られる価値を感じることができません。
UI/UXの違いは、操作するデザインであるUIと、それ使った体験がUXでしかありません。それ以上でもないし、それ以下でもありません。
「現場で、良く理解を取り違える人がいる」と言う方もいますが、その違いを明確にしたとて、何を得ることができるのでしょうか?実際、ステークホルダの中には、「UX設計して。」と発注してきて、結果UIだけを求めている場合もあります。ただ、望んでいることを理解し、提案できれば問題はないはずです。仮に、UXが必要であれば、そのプロダクトで何をすべきか、何が問題なのか、それらを提示・提案してあげれば良いことで、違いを理解してもらう必要はないと感じています。
私の現場では、「UX=使った体験」でしかないので、UXが悪いのであれば、UIを見直すのは当然で、表裏一体と考えています。
UIが悪ければ、UXもCXもBXも悪くなる
顧客はブランドを認識する時、ちょっとしたことで、そのブランドの価値を判断します。例えば、高級ホテルなのに、泥が落ちている廊下や臭いトイレに遭遇しただけで、「なんだ?レベルが下がったのか?」となり、CX(顧客体験、Customer Experience)が下がります。当然、高級ホテルのBX (ブランド体験、Brand Experience)やブランド価値も下がります。
これと同じように、ウェブサイトの使い勝手が悪ければ、ブランド価値自体が下がります。直接デザイン的な内容ではないですが、ウェブサイトのスピードが遅いだけでも、顧客は、そのブランド価値を下げて感じるというデーターもあるくらいです。
つまり、UI、見た目・操作するデザインも、ブランド価値に関係していることを認識すべきです。UIとUXの違いだけを見る視点はミクロ視点です。自分の仕事の範疇だけを見ているのかもしれませんが、仕事の幅を広げない視点と言えます。
UIはブランド価値にまで影響する
デザイン(UI)→ユーザー体験(UX)→ その他(商品・サービスなど)→ 顧客体験(CX) → ブランド体験(BX)
ブランド価値まで変えてしまうUIを、どのようにすれば良いかを、UIデザイナーは深く学ぶことの方が私は大切だと感じています。
間違い!UX(エクスペリエンス)は、「コンテンツ×インターフェース」だけではない
同じ記事で、以下のTwitterが紹介されていました。
“Contents x UI = UX” 的に考えたほうが良いと思うで。
https://twitter.com/fladdict/status/1458263458957328384
NNGのブログ記事でも”映画館チケットを購入するサイトのデザインが良くても、見られる映画が少なければUXが良いわけではない”とあります。
As an example, consider a website with movie reviews. Even if the UI for finding a film is perfect, the UX will be poor for a user who wants information about a small independent release if the underlying database only contains movies from the major studios.
ユーザーエクスペリエンス(UX)の定義
例として、映画レビューのあるWebサイトを考えてみましょう。映画を見つけるためのUIが完璧であっても、基盤となるデータベースに主要なスタジオの映画しか含まれていない場合、小さな独立したリリースに関する情報が必要なユーザーにとってはUXが不十分になります。
しかし、「UX=コンテンツ×インターフェース」と捉えてしまうのはUXを正しく認識できないでしょう。それは、コンテキストが入っていないからです。
この例で言えば、この女性が食事をしたばかりなのかの状況(コンテキスト)によって体験は変わります。お腹が空いた時、そのコンテンツ(料理)は美味しいでしょうが、お腹がいっぱいの時は空いている時の体験と同じにはならないでしょう。
ウェブサイトで言えば、欲しいと思った時に必要な情報が出てくると「いいじゃん!」ってなりますが、必要でない状況(コンテキスト)に、いろいろな情報がでてくると「邪魔!このサイト・アプリ使えない(怒)」となります。
UX設計=コンテキスト+ユーザーのタスク(ジョブ)
コンテキストもUX同様に理解することがやっかいな言葉です。UX DAYS TOKYOでは、「コンテキストの理解と実践」というセミナーを基本的に無料で行っています。
このセミナーでは、UX設計する際に、「UX設計=コンテキスト+ユーザーのタスク(ジョブ)」で考えましょう。と解説しています。あくまでUX設計の考え方としてですが、コンテキストは必須にしています。カスタマージャーニーマップでも、他のフレームワークを使う際も、コンテキストは必ずでてきます。
ジョブの理解もまた奥が深いですが、まずは、コンテキストが何であるのか?世界的に有名なイギリスのUXデザイナーであるケニー・ボウルズ氏の記事を参考に学んでいただいています。
ステレオタイプから脱却して考えることを学ぼう
「UXやUIをビジネスに役立たせ、成長したい」と思っているのであれば、視座を変えなければなりません。いつまでたっても、同じ位置・同じ仕事をすることになります。また、自己成長せず役職名だけが変わってもそれは長く続きません。(正直でいいですが)セミナー参加者の中にも、流行っているからUXデザイナーと名乗っています。という方、実際に聞きます。
自分の視点や技量だけでなく、広い見識と、表面的なことだけで満足せず深い学びを得ていきましょう。
UX DAYS TOKYOの読書会をはじめた当初に、書籍「知的複眼思考法」を取り上げました。オックスフォード大学の教授が著者の書籍で、”ステレオタイプでなく、複眼的に物事をみようという、そのためには考えよう。”という内容です。
UXerは、いろいろな人の感情を見極める必要があり、複眼思考が必要になります。誰か有名人が言ったからと鵜呑みにすることは社会人としてもですが、UXerとしては適任ではありません。ぜひ、広い見識で自分の頭で考える力をつけてください。それが”出来るUXer”の登竜門ですから。