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エンジニア目線から考えた、ユーザビリティテストを広める方法

UX DAYS TOKYOオーガナイザの大本さんが執筆した「デジタルプロダクト開発のためのユーザビリティテスト実践ガイドブック」の書籍イベントに参加しました。

イベントでは、書籍の内容を紹介するだけでなく、「ユーザビリティテストを組織にどう広めるか」というテーマでディスカッションが行われました。参加者は約30人で、UXデザイナー、UIデザイナー、プロダクトマネージャー、エンジニアといった職種の人たちに加えて、カスタマーサクセスや販売促進担当者など、多様なバックグラウンドを持つ人々でした。

ユーザビリティテストが理解されていない

イベントの冒頭で、大本さんから書籍を執筆した背景とイベントの目的に関する説明がありました。大本さんは、「ウェブサイトやアプリケーションの開発において、ユーザビリティテストがほとんど行われておらず、実施されている場合でも正しくは行われていないことが多い」と指摘しました。「このイベントを通じて、組織内でユーザビリティテストをどのように普及させるかを考えてみたい」と述べました。

イベントスライドより
イベントスライドより

この話を聞いて、私はユーザー企業が実施していたUAT(ユーザー受け入れテスト)を思い出しました。そのテストには「使いやすさ」を評価する、後付けのような項目が加えられていました。

しかし、UATとユーザビリティテストは根本的に異なるものです。UATはシステムが定められた仕様に沿って動作するかを検証するもので、使い勝手に関しては評価しません。ユーザビリティテストに関する正しい理解が不足していることを再認識しました。

ユーザビリティテストを根付かせる方法をディスカッション

説明の後、私たちはグループに分かれて「ユーザビリティテストを組織に広める」をテーマにディスカッションを行いました。私のグループには、私(エンジニア)、2人のデザイナー、1人のプロダクトマネージャーがいて、合計4人で議論しました。

イベントスライドより
イベントスライドより

ユーザビリティテストが行われない理由と解決方法を考える

私自身はユーザビリティテストの実施者として、過去に数回テストを行ったことがあります。「ログイン方法が分かりにくい」「購入プロセスが複雑で迷う」といった問題を発見し、感謝されました。ユーザビリティテストの効果は明らかですが、関わってきたプロジェクトで定期的に行うことはありませんでした。

他のメンバーも、仕事でユーザビリティテストを行った経験がないとのことでした。そのため、なぜユーザビリティテストが行われないのかについて意見を交換し、解決策を模索しました。

ユーザビリティテストが行われない理由解決方法
ユーザザビリティテストに対する理解不足ユーザビリティテストが何か知ってもらう
営業が売りやすい機能が優先され、後回しにされる具体的な数値を説明する
(コールセンターへの問い合わせ数など)
使えないわけではないので、優先度が下がるユーザビリティテストを小規模で実施し、効果を実感してもらう
ディスカッションで出た意見
ディスカッションで出た意見

私たちは、「まずはユーザビリティテストを理解してもらい、小規模な実施から成功体験を積み重ねる。そして、ステークホルダーには、問い合わせ数の減少などのビジネス上のメリットを定量的に示すことが重要。」という結論に至りました。

他のチームからは、ユーザビリティテストを通じて顧客満足度を高めるという意見も出されました。

ユーザビリティはインフラと同様の非機能要件

ディスカッションの内容を発表した後、大本さんからフィードバックがありました。「ユーザビリティテストは、狩野モデルで言うところの当たり前品質を保証するものであり、必ずしも満足度を向上させるわけではありません。」「ユーザーは使いやすいプロダクトを特別に記憶しているわけではありません。なぜなら、使いやすさは意識せずに感じるもので、無意識的に操作しているからです。」とのことでした。

この説明を聞いて、私はユーザビリティはインフラやセキュリティと同じように、非機能要件の一つであると理解しました。システムが安定して動作し、レスポンスが速く、セキュリティが確保されていると、ユーザーの不満や不安を取り除くことはできますが、直接、満足度を高めるわけではありません。レスポンスで例えると、遅さは記憶に残っても速さは特段意識されないのです。それにも関わらず、インフラやセキュリティが大切だとされるのは、対応していなければ問題が発生するからです。ユーザビリティが低いと、品質が担保できないことが理解できました。

ユーザビリティテストを広めるには、ステークホルダーのマインドを理解することも必要

私は「ユーザビリティテストを組織に浸透させるためには、ユーザビリティが非機能要件であるという認識を広めることが一つの方法だ」という結論に至っていました。

「ステークホルダーがどのような結果を求めているかを理解し、ユーザビリティテストの結果を定量的なデータとして示すことが大切です。そのためには、ステークホルダーマップを作成し、仮説を立てることも有効です。」という大本さんからのアドバイスをきいて、売上向上を目標としている人に非機能要件の重要性を説明しても、売上につながらなければ理解されないことが腑に落ちました。

非機能要件は具体的なカタチがない分、ステークホルダーには直接的な効果や価値がないと思われがちですが、非機能要件を軽視すると発生する問題点などのマイナス面を伝えることが良いと学べました。

書籍の内容は、ユーザビリティテストの手法にとどまらない

イベントの参加に先立ち、「デジタルプロダクト開発のためのユーザビリティテスト実践ガイドブック」を一通り読みました。

読む前は、ユーザビリティテストのハウツー本かと思っていました。もちろん、具体的な手法について分かりやすく書かれていたのですが、ユーザーに愛されるプロダクトを作り上げていくためのチームビルディングや持つべきマインドについても触れられていました。

プロダクトに関わる全ての方にとって学びになる本だと思います。1月に開催される読書会も楽しみにしています。

フリーランスのエンジニア。 2001年東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。独立系ソフトハウス(システム開発)、株式会社シンプレクス(金融機関向け取引システムの開発・運用)を経て2011年よりフリーランス。フリーランスになってからは、スマホアプリ、サーバーサイド(Java,Railsなど)と様々なプロジェクトで開発に携わる。現在は会社員時代にお世話になった企業様でRPAプロジェクトで開発を担当している。 ダイエットのためにランニングとヨガを5年ほど続けているが、どちらもガチになる一方で全く痩せないことが最近の悩み。

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