UXにおけるIAの重要性

IA(情報設計)というと、専門分野のイメージをもたれる方もいるかも知れませんが、わたしたちが直面している仕事や生活におけるすべての物事に「情報」は含まれます。それだけに、マイクロインタラクションから新しい社会的問題まで幅広く扱われる分野でもあります。

最近「UX」や「カスタマージャーニーマップ」などの言葉をマーケティングや IT 界隈でよく聞くようになりましたが、それらと IA はどのような関係にあるのでしょうか。デジタルマーケティングエージェンシーで数年に渡り、ウェブサイトの IA から UX デザインまで携わってきたわたしの経験から、異なる 2 つの設計アプローチについてお話ししたいと思います。

ある情報を理解する

サイトストラクチャやワイヤーフレームを設計する際にもっとも重要な作業が情報の棚卸しです。新規にサイトを立ち上げることでもなければ、その作業のほとんどは既存のアセット(資産)をいかに扱うかという1点に絞られると思います。そういう意味でもすでにある情報をどのように扱うのかというのは非常に大切なことです。

そこに情報設計のスキルが役立ちます。各種分類法やカードソーティングはすでにある情報をどのように分類し構造化するかという点で有効なアプローチです。単に情報としての扱いだけではなく、プロダクトとして使う人のことを理解する必要があることも情報設計には含まれます。

つまり情報設計者は、ある情報を理解し分類することに加え、利用者の使いやすい状況をイメージしながら再構築していくことが求められる。これが、これまでの情報設計において基本的なプロセスだったのではないでしょうか。

ある状況を理解する

それと対照的なのが、昨今よく耳にするカスタマージャーニーマップの作成です。エスノグラフィ調査にしても同様です。ある状況(事象)を観察・理解し、いくつかの情報に分けて再整理し状況を再現します。利用者は一人ではないため、パターンとして理解することが求められます。

ここでも情報設計のスキルが役立ちます。複雑な状況をいち早く理解するためには情報のパターン化が有効です。そのためには、ユーザー行動や一連の流れを可視化することに加え、なにがその状況を作り出しているのか、情報を分解していくこと(分析すること)が重要です。

カスタマージャーニーマップを構成する情報には、ステージ・行動・タッチポイント・場所・感情・思考などがあげられますが、これで状況をすべて分解できたことにはなりません。情報設計者は、そうした状況の理解を超えて、想像や仮説、意図や戦略なども持ち合わせて再現していく力が必要です。

これから求められる情報設計スキル

情報の理解をするだけを情報設計のスキルというのであれば、昨今言われている UX デザインなどはできません。UX デザインを進めるためには、さまざまな状況を理解し分析することが必要です。そのためには、情報を理解し構築することに加えて、状況を理解して分解していくスキルが求められます。

  • ある情報の理解 → 構築する
  • ある状況の理解 → 分解する

デジタルプロダクトを設計するにせよサービスを設計するにせよ、この2つのアプローチを繰り返すことにより、コンテンツ・コンテクスト・ユーザーを理解することに役立ちます。これまで、ある情報を理解することに長けてきた情報設計スキルは、これから作り出そうとする状況を正しく理解し、どのように再現するのかに使われる大きな力になっていくと思います。

今日からはじめる情報設計

アビー氏の書籍『How to Make Sense of Any Mess』(訳本: 今日からはじめる情報設計)には、普遍的な事柄において情報と人間との間に起こるさまざまな混乱を、どのように解きほぐしていくかが丁寧にまとめられています。ケーススタディやワークシートからそうした解決方法のエッセンスを学ぶにはちょうどいい書籍ですので、興味・関心のある方はぜひご覧いただければと思います。

彼女は現在、IA 協会(Information Architecture Institute)の理事長でもあり、教育機関でも情報アーキテクチャの教鞭をとっています。執筆や講演も多数されている彼女の Twitter アカウント「@Abby_the_IA」は、世界中の IA コミュニティでも引用され、その活動ぶりから新しい IA エバンジェリストとして見ることができます。

日本での講演ははじめてだと思いますので、たいへん貴重な機会かと思います。わたしも今からすごく楽しみです。

この記事を書いた人:菊池 聡

UX DAYS TOKYO (代表)
見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通いニールセンノーマンの資格を取得。
業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。