TOP お知らせ UX DAYS 本編 レポート 昇格にとらわれないキャリアパス設計と成長するチームの目標設計を学んだUX DAYS TOKYO 2024カンファレンス【後編】

昇格にとらわれないキャリアパス設計と成長するチームの目標設計を学んだUX DAYS TOKYO 2024カンファレンス【後編】

2024年3月15日に開催されたUX DAYS TOKYO 2024のカンファレンスについての学びを前回に引き続きご紹介します。

前回の内容はこちらよりご覧ください。

本記事では、カンファレンスでの「ジェイソン・メスット氏によるキャリアパス設計」と「マット・ルメイ氏によるメトリクスと組織論」についての学びを紹介します。

また、今回もUX DAYS TOKYO大本とカンファレンス参加者有志で復習会を行いましたので、そこで咀嚼した学びの内容も紹介します。

自分にとって「良い人生」のキャリアパスとは?

スピーカー:Jason Mesut(ジェイソン・メスット)

ジェイソン・メスット氏は、UXデザイナーでありながら、人々や組織の成長を支援するスペシャリストで、エグゼクティブコーチング、コミュニティリーダーシップ、戦略コンサルティング、未来デザインを行っています。彼はロンドンのIxDA(Interaction Design Association)の共同リーダーを務め、PA Consultingなどの国際的なコンサルティングファームで20年以上にわたりUX分野で活躍しています。

このセッションでは、自分のキャリアを見つめ直し、より良い未来に向かうための考え方が示されました。

キャリアパスについて講演するJason Mesut氏

「なぜ学びたいのか?」「どう成長したいのか?」自分の志を見つけよう

講演の中で、メスット氏は「人は皆それぞれ個性が異なるのに、同じキャリアパスを追い求めてしまう」と指摘しました。

復習会では、スタッフの高橋さんが「UXを学ぶことにおいても、何になりたくて、なぜ学ぶのかがなければ、自分のキャリアに繋がらない」と話していて、私も世間一般的な「良いキャリア」を求めるあまり、「何を学ぶか」を先に考えてしまっていて、思考の順序が逆になっていると気づけました。

大切なのは「自分の志に合ったキャリアを築くことが良い未来に繋がる」という視点だと学びました。講演では、「なぜ学びたいと思ったのか」「どう成長したいか?」を様々な視点から自分に繰り返し問いかけるためのツールキットが紹介されていました。キャリアには決まったレールがあって昇格をめざすという視点を脱却し、自分がどうなりたいか、何で貢献できるかといった志を明確にすることがキャリア設計の第一歩になります。

メスット氏はセッションの中で、「自分の個性を伸ばし成長することで、既存の肩書にとらわれずに多様性のあるキャリアを築くことができ、より良い未来を切り開く一歩になる。」と語っていたのが印象的でした。多様性のあるキャリアの好例として、同カンファレンスで講演を行なったエヴァ・ロッタ=ラム氏のキャリアが挙げられます。彼女はUXデザイナーとしての経験を積みながら、ビジュアルシンカーとしてオリジナルのキャリアを築いており、キャリアの多様性を体現しています。

海外でも広まるIKIGAI(生きがい)

また、北欧では日本語の「生きがい」を基にした「IKIGAI」という概念が広まっていると講演中で紹介されていました。IKIGAIは、日本語の生きがいの意味だけでなく、キャリアや仕事への価値観も含んでおり、海外でも人生の中で仕事の意義を重視していることを示しています。

自分の志と他者に貢献できることを見つけ、より良い未来にすることがIKIGAIに繋がると学びました。

カンファレンスの後に行われたワークショップでは、メスット氏の指導のもと、参加者それぞれが自分のキャリアを見つめ直しました。詳細なレポートはこちらをご覧ください。

組織成長には、ビジネス目標と一致したチーム目標が必要

スピーカー:Matt LeMay(マット・ルメイ)

マット・ルメイ氏は組織とメトリクスのスペシャリストで、プロダクトチームがビジネス目標や収益に最大限の影響を与えられるよう数々の組織を導いてきました。彼の著書である『みんなでアジャイル』(オライリー、 2020)や『プロダクトマネージャーのしごと』(オライリー、2023)は実践的な内容で、日本を含む世界6か国で愛読されています。

講演では、「組織のビジョンやビジネス目標と、チームで扱う指標をいかに近づけることかが大切」と話されていました。組織の目標の多くは階層構造であり、各部署がそれぞれの目標を達成することで、全体の目標達成につながるような仕組みになっています。しかし、各チームの目標は、ビジネス成果を直接的に追求するものではなく、チームが実施した活動を評価するアウトプット指標にとどまることが多いです。

開発チームで言えば、「顧客を増やす」というビジネス目標を追求する代わりに、「チケットを消化する」という作業量が目標になります。ビジネス成果が出ていなくても、やったことを増やせば良いわけですから、結果として仕事が増えるだけで組織は成長に繋がりません。

目標設定は階層構造ではなく、組織のゴールに直結するような目標設定であるべき

目標設定は階層構造ではなく、組織のゴールに直結するような目標設定であるべき
マット・ルメイ氏の講演スライドより引用

ビジネスに貢献するチームを作る視点を得た

ルメイ氏の目標設定の話を聞いた時に、ビジネス成果を出すための権限を持たないチームはどのように目標を立てたら良いのか考えました。

SRE(サイトリライアビリティエンジニアリング)のようなプロダクト横断的な組織では、間接的にしかビジネス貢献を考えられないかもしれません。しかし、私の解釈では、ここでいう「チーム」は必ずしも人事上の組織に限らないのではと考えました。

例えば、ユーザー数を倍に増やすという目標を達成するためには、マーケティング、プロダクト開発、カスタマーサポートなど、部署を超えた連携が必要です。ユーザーが増えることでシステムに負荷がかかり、障害のリスクが高まる場合は、SREの協力も欠かせません。

各部署のリーダーが集まってプロジェクトチームを組成すれば、ビジネスに直結するチーム目標を設定でき、目標達成に必要なメンバーを召集できます。

今回の講演を通じて、「チーム=部署」という固定観念に囚われていたことに気づき、ビジネスを達成するための柔軟なチーム作りの視点を得ることができました。

ビジネスの成功指標を松竹梅で評価する「生存指標」を紹介するルメイ氏

ビジネスの成功指標を松竹梅で評価する「生存指標」を紹介するルメイ氏

同じインプットを得た仲間と咀嚼することで、学びの点と点が繋がる

カンファレンスの翌日に行われたワークショップの中で、カンファレンス講演での学びをお互いに話し合うワークが行われましたが、驚くほど各々の理解内容が違っていたそうです。それほど、学びの受け取り方は人それぞれです。しかし、同じインプットを受けた人々で学びを共有し理解を補完しあうことで、咀嚼されたより深い学びになります。

復習会に参加して学びを自分の言葉に表現し、他の方の学びの解釈を聞くことで、自分の中でばらばらだった点と点がつながり、「こういうことだったのか」と理解できて有意義でした。

スピーカーの話をその場で完全に理解できなくても、同じ話を聞いた他の方の解釈を聞くことで、後になって理解が深まることもあります。また、スピーカーの言葉のパワーを仲間と共に直に受け取ることで得られる効果を実感しました。

来年のUX DAYS TOKYOに向けて、より多くの学びを得られるよう、チームで参加するよう働きかけていきましょう。そして、参加後は復習会を行い学びを咀嚼することで、日ごろの仕事の考え方もアップデートできること間違いなしです。

(レポート担当:Jason Mesut氏部分:池田、Matt LeMay氏部分:高橋)

スタートアップでデザイナーとして調査、UX設計、UIデザインとフロントエンド実装をやっています。UXも技術も日々勉強中!趣味は片付け、インテリア小物とゲームです。

まずは言葉を覚えよう

「UX用語」のカテゴリー

UXを取り入れるためのマインドセット

「UX格言」の新着

UX格言 一覧

現場の声をリアルで届ける

動画で学ぶUX 「You X Tubo(ゆーえっくすつぼ)」の新着

You X Tubo(ゆーえっくすつぼ) 一覧