戦略を認識しよう
ある現場の様子を漫画にしたものです。CTOの言っていることをちょっとバカにしている漫画ですが、現場で良く起きていることだと思うので、参考にしてみてください。
右(CTO)「きみの製品戦略は何だね? 必要なのは、戦略だよ」
漫画のセリフを日本語訳してみました
Our Competitors just made our new five-year plan moot.
左(エンジニア):「競合他社が、我が社の新しい5カ年計画を台無しにしてしまいました。」
While we were strategizing, they were doing something I believe they call “work”
左(エンジニア):「我々が戦略を立てているうちに、他社は何かを進めていたんです。きっと彼らが「作業」と呼んでるものだと思います。」
右(CTO):Whatever you are doing, stop it.
「何にせよ、君がやっていることは中止だ。」
On the plus side, I managed to salvage some joy by mocking you. ※吹き出し:こころの声
左(エンジニア):(アナタをバカにする楽しみを見つけたのが、かろうじての成果だな)※吹き出し:こころの声
シーンを振り返る
このシーンを思い浮かべるたび、プロダクトチームに響き渡る、CTO(最高技術責任者)の悲痛な叫び声が聞こえてきます。
CTOはイライラしていました。なぜなら、2か月の間、非常に明確な目標に向け、試行錯誤を繰り返し、かなり進展もしていました。
ユーザーのコンバージョン率を低くしている多くの問題がわかりましたし、自分たちがどの方向に向かうべきかもはっきりとしていました。しかし、私たちにはまだ自分たちのアイデアの検証が必要でした。このことに、CTOは納得しませんでした。
実はCTOは戦略が欲しかったわけではなく、計画が欲しかったからです。私たちが何を構築し、いつそれを作るのかのリストが欲しかったのです。CTOは明日、私たちが集まり何をやっているのかについて、手応えが欲しかったのです。
そうすれば、私たちがどのくらい作業をしたかを基に進捗状況を把握することができたからです。確かにCTOが悪いわけではないのですが、こうして、私たちは製品戦略について考えることを学びました。
製品戦略について考える
多くの企業は、ある種の特徴や機能を生み出す計画として製品戦略を考えるという罠に陥ります。私たちはよく、自分たちの製品戦略は次のようなものだと説明します。
- 「音楽プロデューサーが作った曲をアップロードし公開できるプラットフォームを作る」
- 「営業部のリードを管理するバックエンドシステムを作る」
- 「ターゲット・ユーザーに売り込み、コンバートするファネルの入り口を作る」
これは戦略ではありません。計画です。計画もだめですが、更に問題になるのは、製品戦略を計画のように扱ってしまうと、必ずといっていいほど失敗します。
計画に成功の保証はない
計画は不確実性や変化に対応できず、また、間違った安心感「計画に従っていれば、うまくいく!」を与えてしまいます。
しかし、残念なことに、計画したものを実施したからと言ってそこに成功の保証はありません。(計画どおりにやるだけであれば、私達の仕事は本当に楽なはずです!)
このような製品主導は必ずしも間違っているわけではありませんが、適切でない時に、間違った意図で伝わってしまいます。ある機能を構築する計画に自分たちをロードマップのようなものに固定してしまうと、その目標を達成するために、構築すべき正しい機能なのかどうかを疑ってみることを止めてしまいます。
得られる成果にフォーカスすることを忘れ、生産したモノでもってチームの成功を判断してしまいます。
目標達成のための戦略を立てよ
計画をたてる必要はありますが、その計画は「機能Xの構築」であってはなりません。計画とは、ビジネスの目標を達成するためのものであるべきです。製品戦略について考え方を変えましょう。それは、上意下達(トップダウン )の何かといった戦略ではなく、何が自分たちの目標達成に役立つのかを知ることで明確になるものなのです。
製品戦略とは、達成可能な目標とビジョンからなるひとつの形態です。それに沿ってチームは一丸となり、ビジネスと顧客の両方にとって望ましい成果に向けて、力を合わせていくのです。
製品戦略は、目標へ進む途中の試行錯誤から生まれます。機能、製品とプラットフォームがそれを証明していきます。チームに設定しているKPI(重要経営指標)、OKR(目標と主な結果)や他の指標は、製品戦略の一部です。しかし、それだけでは成功に導く戦略を立てることはできません。
戦略を成功させる核
製品戦略を成功させるには、いくつか核となるものが必要です。
ビジョン
ビジョンは、企業や事業が最終的に目指す目的の場所の、高い視座からの風景です。企業規模が大きいと、事業分野やカスタマー・ジャーニーにそれが落とし込まれるかもしれません。より小さな会社になれば、会社および製品全体のビジョンということになります。
ここでは長期的な視野に立ち、「定性的なもの」にしておきましょう。そうすれば、競合他社についてや顧客目線でのイメージ、そして今後の展開の抱負について話し合う良い機会になります。
チャレンジ
より長期的なビジョンへと向かう途中に達成すべき最初のビジネスとしての目標が、チャレンジです。カスタマー・ジャーニーやファネルのどの領域を最初に最適化する必要があるか? それは、戦略的目標として共有され、製品開発の必要な点ついてチームをまとめ、焦点を絞ることに役立ちます。
これは定性的であり、定量的でもあります。幅広く、高いレベルで維持するようにしてください。私個人としては最も難しく頭を抱え込んでしまうものですが、理解を深めるために下の事例を確認しましょう。
目標とする状態
チャレンジをブレークダウンさせるときに役立つのが、「目標とする状態」です。この先、解決する必要のある小さな問題によって、チャレンジは作られています。そして、達成可能だったり、測定可能な言語に置き換えられます。
目標とする状態を設定したら、チームはいかにそれを達成するかをはっきり知る必要はありません。それよりも、どこから見通しを立てていくかについて、優れたアイデアを手に入れるべきです。
現在の状況
これは目標とする状態と比較した現在の状態のことです。最初の目標の達成に向けて作業に取り掛かる前に、現状を測定し、定量化するべきでしょう。
こうしたことはすべて「統一場理論(場の理論において種々の相互作用力を一種類に統一する理論)」と呼ばれるものにつながります。
それについては、リンク先において、「Toyota Kata(トヨタのカタ)」という本でBill Costantino(ビル・コンスタンチーノ)とMike Rotherが大変わかりやすく説明しています。製品を作ろうとする時が知識の出発点です。
初日から、自分たちのビジョンに向けた明確な計画を作り、スタートすることなんてできません。あまりにも未知のことや不確実性が多いからです。むしろその途中途中にゴールを設け、ビジョンに到達するまで試行錯誤をしながら障害を取り除いていくのです。
Uberを仮説に考えてみる
ここでは、わかりやすく説明するために、Uberを例として取り上げます。
皆さんは、ドライバーがドライバー登録できるプラットフォームの開発に取り組むプロダクト・マネジャーです。
ビジョン
CEOはこう言いました。Uberのカンパニービジョン、それは、Uberを車の所有や公共交通機関の利用に代わる、低価格で効率的な交通手段にすることである。(ここまではインタビューで実際に述べています。それ以降はすべて想像です)
チャレンジ
この「ビジョン」を正しく理解したならば、、Uberの望みは、人々がただ唯一の移動手段として使って欲しいと考えるでしょう。そして、人々はUberでなく、別の交通手段を使っているのかについて深く知ろうと考えます。
調査のためにUberが普及していない町に出て、車に乗るために長い列ができていることに気づくかもしれません。このことを他の問題と比較し、彼らは重要度を決定します。
調査から、待ち時間が長い町において、その時間を短縮するということを目標にしました。具体的な数値として、10分以上という時間は長すぎるため、5分以下に短縮するという目標です。5分という数値も感覚地ではなく、人々の80%以上は5分待ってもUberを使っていそうだからです。
チャレンジ
具体的な日にちを入れ、例えば、2018年1月30日までに、待ち時間10分以上の町において、それを5分以下に短縮すること。とします。
目標とする状態
プロダクト・マネジャーとして、長い待ち時間の原因を解明しましょう。この事例における問題点は、その地域に稼働する車の数が足りてないということかもしれません。そこで、新しいドライバーの獲得ということが、今重要な指標となります。
チームの目標は、計測可能であり、かつ達成可能なものにしましょう。例えば、2017年1月30日までに各都市で少なくとも50人につき1人のドライバーを割り当てる、といったものです。新しいドライバーの手配に責任を負うプロダクト・マネジャーとして、皆さんはドライバーの獲得に有効な働きをしなくてはなりません。
まず、各都市で人口当たり何人のドライバーがいるのかを測り、現在の数 (現況) を把握します。次に、現在新しいドライバーのサインアップに障壁となっている問題を見つけます。さらに目標を達成するまで、各障壁を取り除くための実験を行います。その方法については、「プロダクトのカタ」が教えてくれます。
(ここから、記入式の製品戦略作成シートをダウンロードできます Dropbox PDF155KB )
プロダクト・マネジャーとして、皆さんはこれらの数値すべてを設定するわけではありません「ビジョン」はCEO、CPO、取締役会やその他役員らが設定します。「チャレンジ」は、次の段階の管理者(各工程や事業分野における製品の副主任)が設定します。
チームマネジャーは、チームが有効な目標とする状態を設定できるよう手助けします。最初は、経営陣がこれを設定する必要があるかもしれません。チームがこの作業に慣れてくると、マネジャーとチームが協力して設定できるようになります。
この4つのアイテムを決めて話し合えば、チームは「プロダクトのカタ」手法の応用を始めることができ、ゴールに到達する方法を理解していきます。ユーザーの問題や目標とする状態に挑戦する途中に現れる障害に対して決断を下すのが、プロダクト・マネジャーとチームの責任です。そして、問題の解決を身につけます。
こうすることで、すべての人が戦略的目標とビジョンに関わります。あらゆる職位の人がそれぞれの目標を持ちます。チームは、達成しなければならない目標に向けて前進することに責任を背負うのです。
さて、ここまで読んで、あなたはこう言うかもしれません「いや〜、これは製品戦略じゃないよ、事業戦略でしょう」と。確かに、これは事業目標のような感じがします。しかし、なぜ製品を作るのか?の答えにはなっていません。
事業目標を達成するためでしょうか?プロダクト・マネジメントとは、顧客の問題を解決し、それにより事業目標を達成する専門技術です。その両方を行わないことには、どんな製品も見せ物的な絵空事にすぎません。