5月12日に「UXライティングの教科書」の読書会を開催しました。今回の参加者は総勢14名で、参加者の多くは都内で働いているデザイナーやチャットボットの設計者、事業会社でUXデザイナーを行っている方々で、いわゆるUXerとして一線で働いている人達が参加しました。
そんな方々ですが、UXライティングについてしっかり理解していないという方も居ました。書籍を通してUXライティングの基本を学び「自分たちの現場は駄目だ!」と振り返る人が続出する読書会になりました。
そんなできているようで、実はきちんとできていないUXライティング。書籍では、現場ですぐに利用できる改善方法が山程あり、それらを取り入れることでCVアップはもちろん、いろいろな施策ができるようになります。ぜひ参考にしてみてください。
ちょっとしたコピーでユーザーの行動が変わる
参加者の方から、「海外ではマイクロコピーの事例がたくさんあるけど、日本ではあまりない。」と発言されている方がいました。とっても鋭い視点ですね。
日本の現場は、他がやっていると真似る傾向にあり、ユーザーを見て設計をしていないのだと私は想定しています。これは「これは危険!現場でよくある意味のないリサーチ方法を知る」という記事でも問題提起していますが、一番はじめに出てくる壁であると認識しています。
書籍でも、「ユーザーとのコミュケーションを構築するために、マイクロコピーを作ろう」とありますが、UXライティングは、まさしくユーザーとの関係性を構築するためのものです。
操作しやすく、操作が楽しくなるデザインにできたら、たとえBtoBのシステムでも仕事の効率があがります。
ベンチマークを大義名分にした、競合のみを見ている視点。良いところだけを真似ようとする思考。そこから脱却しなければ、日本では同じようなマイクロコピーばかりなってしまいます。
それでは、CVは上がりません。
体験談で盛り上がる読書会
UX DAYS TOKYOの読書会は、書籍内容をまとめて発表するだけでなく、参加者同士のディスカッションが醍醐味です。
「この章はこんなことを記載しているけど、自分の周りで同じようなことはありますか?」そんな質問から、読書会参加者は、受動的なオーディエンスから、能動的なプレイヤーとなり、考えてディスカッションをすることになります。考えることで、書籍の知識と現場との繋がりを見出すことができます。
今回は、「任天堂Switchのサポートを受けるために会員登録した際に、フォームの情報設計が良くできていて、とってもわかりやすくて感動した」といった体験談や、
「過去に金融のアプリでかわいい動物のキャラクターを採用したところ、サービスの雰囲気と合っていなかったのでユーザーの信頼獲得ができず上手くいかなかったことがあった。書籍から”ボイス&トーンが合っていなかった”からだと分かった。」という、書籍を読んだことで気づいた過去の失敗の原因や、
「5年前に、Airbnbでホストにメッセージを送るフォームのプレースホルダに”あなたのことをホストに知ってもらうために、自己紹介してください”とあった。どこまで書いていいか悩んで、丁寧に自分の経歴まで記載してしまった」などのエピソードが多数飛び出しました。
現場での悩みを即座に解決!?
特に今回は、「今、現場で抱えている問題をその場でどのように解決するか?」というディスカッションも行いました。
3つの対策案を考えていたようで、どれが良いかを参加者全員に手をあげてもらい、なぜその対策が良いのかという理由を話していただきました。理由までとなると言葉にできない方や、理由がでてきても、正しくないこともあります。ディスカッションを通じて理論的な判断を理解できるようになるので、通常の読書以上のものを得られると感想をいただいています。
参加者の感想
参加者のみなさんと議論をすることで本の内容がさらにローカライズされ、より理解が深まりました。「日本語だとこうなりがち」などなど、本ではカバーされなかった悩みどころも議論を通じて解決へのステップが見つかった気がします。
一人で読むよりも書籍の内容が頭に入りやすいことと、他の方の解釈や体験談が聞けること。そして、毎回豊富な知見をお持ちの方々が参加されているにも関わらず、敷居が低くてフレンドリーな雰囲気なのもとても有り難いです。
ボイス&トーン、会話体ライティング、エラーメッセージ、プレースホルダー、不安や懸念を軽減する、エラーやトラブルを防止する、マイクロコピーとアクセシビリティの章。 知っているつもりでも、なぜそうなのか、なぜそうするのか、あらためて考えると論理的に説明できない。それをしっかり教えてくれました。また、現在自分の関わっているサイトのことを考えながら読むと、だからダメなんだ…と大いに納得できて勉強になりました。
スタッフのスライドの完成度が半端ない
UX DAYS TOKYOのスタッフも一緒に読書会に参加していますが、会を重ねるごとにスライドの作り方が半端なく上手になっています。
書籍内容を解釈して、それを今の現状のわかりやすい例に出して紹介してくれるので、更に理解が進みます。
スタッフの池田さんが、UX TIMESで紹介したSD法をUXライティングで使えると、合わせて紹介しているのがとても良かったです。
UXライティングでUXを良くする事例
他にも、いくつか参考になるものをご紹介します。
- CTAは「同意して確認画面へ」などの無機質なものではなく、「一緒にはじめよう」など、次にユーザーが行動するテキストにする
- ユーザーの価値を、ユーザー視点での言葉で表現する「例)ギフトカードがあれば、多数の店舗でお買い物ができます」
- Googleの一例でプレースホルダのに入っていた文字はクリックと同時に枠の外に出るUIになっている
*プレースホルダにはテキストは入れないのがベターという基本ルールから外れる場合において - タイトルの「ロケーション」を補う形で、具体的な記入例をプレースホルダに入れる
ECサイト運営者は知ってきたい「クイックトリガー」
商品を購入する際、迷ってしまう場合は多くあります。そんなユーザーの背中を押してくれる「キャンセル無料」のテキストは安心して購入という行動に移すことができます。購入にあたり懸念点を払拭させる方法は、ECサイト運営者なら覚えておきたいノウハウです。
UXライティングは誰がやるのか?
最後に、私(大本)から「UXライティングは誰が行うものか?」という問題提起をさせていただきました。参加者からはUXライターが必要という考えもあがってきました。私もそのような職種ができれば良いと思う反面、組織としてUXライティングの価値と評価・判断ができなければならないと考えています。
UXライティングも結果的にテキストでしかありません。単なるテキストに過ぎないけど、ユーザーを見て作ったものと、よく利用されているアリモノのテキストでは雲底の差があります。
そしてUXライティングを行うには、たくさんの時間・工数のコストをかけていて、それなりのスキルが必要になります。クライアントからすれば、プロがやるなら、これらのライティングも「できて当然」だと思ってしまうことがあります。しかし、一方でコストが削減できるかどうかでしか判断できないクライアントも存在します。
つまり、UXライティングに予算がつかないということです。UX設計やテストも同じで、その工数がかけなければ、アリモノを採用してしまいます。「他社がやっているから、それは効果のある設計だろうし、そのまま使おう」という冒頭に記載した行為です。
UXライティングは、自社の大切なユーザーにかける「言葉」でしかありません。それは、コピペで量産するものでもなければ、他社から真似するものでもありません。
ユーザーとの大切なコミュニケーションツールの価値を知って、日本のデジタルデザインを次のステージに進化させていきましょう。
今のファーストステップの壁が超えられなければ、何も変えることはできません。
「ユーザーのエンゲージメントを上げる」、定例会ではかっこいいそんな言葉ばかりが飛び交いますが、結果的にユーザーを見ない制作物になっていることが多くあります。企画やコンセプトだけで仕事が取れれば良い時代ではありません。
誰かがやってくれる、でもそれは私の仕事ではない。と思ってはUXerではありません。UXはクライアント・ステークホルダ、関わる全ての人、全員がUXerになって行っていくものです。それらを自分の組織にも広めたい、より理解されたい方は、「UXの基礎の基礎」を受講してください。
UX DAYS TOKYOのスタッフになりませんか?
UX DAYS TOKYOでは、イベント運営をはじめ、真剣にUXを自分のスキルにしたい。と思っている人をスタッフとして募集しています。
スタッフの活動は簡単ではなく、時に自分のミスを見つめ直すこともでてきます。しかし、それらは自分の成長に繋がる行為で、社会人になってから指摘を受けずに成長できない環境が多い中、学びが多い環境となっています。
本当のUXerは、日々の生活の中でも頭を動かし、視点や思考を身に着けなければならず、簡単にマスターできるものではありません。そんな「視点や思考」が身につく環境に身をおいて切磋琢磨しましょう。
形のないこれらのスキルは、現代社会に求められるPO、PMの職種とも言えます。肩書だけでない本物を目指す、心熱き方をお待ちしています。