レストラン予約でイライラ体験
最近は、VUI(Voice User Interface)でレストラン予約も一般的になりました。
私もVUIでレストラン予約をしました。それは、毎年12月にお台場で開催される花火が見えるレストランを予約しようとした時です。
目当てのお店の空席状況を確認するためにウェブサイトの予約カレンダーを見てみると、希望日には「TEL」マークが表示されていました。
電話をかけてみると、店員さんの対応ではなくVUIの応答でしたが、残念なことに、VUIでは予約できず、しかも苛立つ苦い体験をしました。
レストラン予約のVUIとの会話
予約は、希望日時と参加人数を聞いて(空き状況と照らし合わせて)予約する。というシンプルな行為ですが、このVUIでは、完結までに以下のようなステップとやり取りが発生しました。
はじめに、希望の日付を聞かれます。その受け答えに、希望日を伝えます。AI(機会)側の認識があっているか、確認するためのステップ(以下、表2)リピートと(表3)確認の返答をどのようにすれば良いかの方法が案内がされます。1つ目の受け答えであれば丁寧だと感じますが、同様に、時間・人数も同じやり取りが繰り返されます。
音声ガイダンスを聞いたことがある方であればイメージが付くと思うのですが、受け答えに時間がかかるスピードでやり取りが繰り返されるので、(表5)(表6)では、正直、「また〜ぁ?」と感じ、(表8)(表9)では、「早くしてよ。」と思ってしまうでしょう。
自動音声 | 回答 | 顧客の感情 | |
1 | ご希望のお日にちをお知らせください。 | 12月16日 | 空いているといいな。(期待) |
2 | 12月16日ですね。 | ||
3 | よろしければ「はい」まちがっていれば「いいえ」でお答えください。 | はい | 丁寧なのね。 |
4 | ご希望のお時間をお知らせください。 | 18時 | |
5 | 18時ですね。 | また、同じのように聞くのね。。。 | |
6 | よろしければ「はい」まちがっていれば「いいえ」でお答えください。 | はい | そうですよ〜ぉ。 もうちょっと早いアナウンスになんないかな? |
7 | ご希望の人数をお知らせください。 | 2名 | |
8 | 2名ですね。 | ||
9 | よろしければ「はい」まちがっていれば「いいえ」でお答えください。 | はい | です、です!(早く〰) |
10 | 大変申し訳ございません。 そのお日にちは満席です。 またのご予約をお待ちしています。 ツーツーツー | ま、マジで!! |
そして、なんと!日付、時間、人数といった情報を正確に伝えたにもかかわらず、最終的には「満席」といわれて電話が切れたため、「時間を返せ!!」という気持ちになりました。
ウェブサイトのカレンダーで[TEL]になっていれば、空席を期待してしまうものです。ある空き状況がわかるカレンダーの意味がありません。
VUIだけしかなかった場合でも、「はい」または「いいえ」で答えるステップを何度も繰り返すことは、ユーザーにとって面倒で時間の無駄です。改善の必要があります。
VUIで空き状況をどのように伝える?
この問題をどのように設計改善すると良さそうかを勉強を兼ねてスタッフに聞いてみると、宅急便の再配達システムと同じように、配達可能な「日にち」と「時間」が先に分かれば、スムーズに予約できるんじゃないか?という答えが返ってきました。
再配達システムも「日にち」と「時間」を聞いて日付を決定するので、一見良いアイディアに思えます。しかし、再配達システムは、予め決まった日の中から時間を選択するだけです。もちろん、第3希望くらいまで聞く可能性がありますが、ピンポイントの日時指定ではなく、届けるだけなのである程度の融通が効くので配達側の空き状況を照らし合わせることはしていません。
一方、レストラン予約はお客さんが希望する日が空いているのか、希望日が空いていない場合はいつが空いているのかを確認する必要があります。
このように、サービスの特性やお店の規模によって同じ日時の予約をするシステムでも設計やUIが異なってきます。現場の状況や使い方によって設計が必要で、一つの解決策やフレームワークがそのまま利用できるとは限りません。まして、VUI設計は、まるっきり異なる設計思想が必要になります。
ただ、1つ共通することがあるとすれば、それは、そのサービスの実際の運営やユーザーのコンテキストを考慮することです。
繰り返しになりますが、問題となったレストラン予約のVUIは、空き状況がカレンダーでわかるのにも関わらず、空き状況を知らせるのが不得意なVUIを使ってしまったことが最大のミスです。そして、VUIにおいても、オウム返しのやり取りがユーザーの心をイライラさせています。
それを排除する設計を以下のようにしてみました。VUIしかない場合でも、確認の部分を簡潔にしただけで、ここまでスッキリさせることができます。
改善の予約のVUI
自動音声 | 回答 |
このお電話の予約はAIが担当します。 ご希望の日時を復唱しますので、ご確認いただき、「はい」「いいえ」で回答してください。 | |
ご希望のお日にちをお知らせください。 | 12月16日 |
12月16日のご希望でよろしいですか? | はい |
ご希望のお時間をお知らせください。 | 18時 |
18時のご希望でよろしいですか? | はい |
ご希望の人数をお知らせください。 | 2名 |
2名のご希望でよろしいですか? | はい |
大変申し訳ございません。そのお日にちは満席です。 | |
他にご希望のお日にちはありますか? | ないです |
またのご予約をお待ちしています。ツーツーツー |
改善点したポイント
- 人にロボットだと認識させておきたい場合は、ロボット対応と事前に伝える
- ユーザーが回答した内容を復唱し、誤りがないかを1回のやり取りで確認できるようにする
- 希望日が空いていない場合は、他の希望日を聞く
杓子定規な人と、迅速な対応ができる人
オペレーターによる電話対応も、杓子定規な対応をする人と、柔軟性があり迅速に対応してくれる人がいます。
杓子定規な対応では、一見、規則正しく丁寧で好印象を与えますが、何度も「よろしいですか?」と繰り返し、「はい、いいえ」の回答を求められると、ユーザーにとってはとてもストレスです。
一方で、迅速で効率的な対応ができるオペレーターは、単にスピードだけでなく、ユーザーの要望を的確に捉え、適切な情報を素早く提供してくれます。
ユーザーは、スムーズにサービスを利用したいと思っています。特に、予約を取る際には手続きが簡潔で迅速であることが求められます。
電話では、ユーザーの表情は見えませんが、声のトーンや話すスピードからユーザーの状況を感じ取ることはできます。常にユーザー視点で考え、対応することが大事です。
ステップバイステップの場合もメリットはある
ユーザーへの対応は正確さや素早さが求められますが、ステップバイステップのアプローチは、一つ一つの応答をデータベースに記録しやすく、ユーザーが誤って回答した場合に特定の項目だけを修正できるという利点もあります。
ユーザーが迷わなそうか、ストレスを感じないかを検討するのと同時に、ステップバイステップで確認すべき点も考慮し、柔軟な設計をしていきましょう。