Googleをはじめとする大手IT企業は、アクセシビリティ・ユニバーサルデザイン・インクルーシブデザイン・ダイバーシティの考え方を積極的に取り入れています。なぜ彼らはこれらを重視するのでしょうか?
あなた自身は、これらの概念がビジネスにどう貢献するのか、自分の言葉で説明できるでしょうか?
UX DAYS TOKYO 2025での試み
UX DAYS TOKYO 2025では、「生成AIを活用してダイバーシティを実現する」ワークショップを開催しました。生成AIという技術に注目が集まりましたが、本当に焦点を当てるべきなのは、アクセシビリティ、ユニバーサルデザイン、インクルーシブデザイン、ダイバーシティの理念です。
これらの言葉は「一部の人だけのための特別な対応」と捉えられがちですが、本来は誰もが便利に、心地よく使える環境を目指す考え方です。
人の「違い」から始めるデザイン
アクセシビリティは、情報へのアクセスのしやすさ
たとえば「見やすい」「聞きやすい」「理解しやすい」といった体験を指します。ユニバーサルデザインは、年齢や能力に関係なく、誰もが使いやすい設計を目指すものです。
アクセシビリティやユニバーサルデザインを実践するには、何らかの設計指針が必要です。そこで、「少数派のニーズを起点に設計する」という視点を持ってみてはいかがでしょうか。
つまり、こうした設計を進めるうえで有効なのが、「少数派のニーズ」を出発点とすることです。
有名な例に「カーブカット(歩道の段差をなくす設計)」があります。本来は車椅子利用者のために設計されたものですが、ベビーカーや自転車、キャリーバッグを使う人など、より多くの人々にとっても便利な工夫となっています。これは、少数派の視点から生まれたデザインが、結果的に多くの人に役立つ「カーブカット効果」と呼ばれる現象です。
このように、少数派の特徴を意識して設計し、それによってアクセシビリティとユニバーサルデザインの両方を実現しようとする考え方が、インクルーシブデザインです。このように捉えることで、インクルーシブデザインの価値と意義がより理解しやすくなるでしょう。

4つの用語の覚え方
意味の近いこれらの言葉を混同してしまうこともあります。そこで、簡単な覚え方をご紹介します。
「ダイバーシティを実現するために、アクセシビリティを目指し、ユニバーサルデザイン手法を利用してインクルーシブデザインを行う」
少しだけ修飾語を追加するとイメージしやすい方は、以下を参考にしてください。
「多様性(ダイバーシティ)を実現するために、アクセスしやすい環境(アクセシビリティ)を整え、誰でも使いやすい仕組み(ユニバーサルデザイン)活用して、誰ひとり取り残さない設計インクルーシブデザインを行う」
インクルーシブデザインを実装するためにAIを使う

AIでインクルーシブデザインを支援する
インクルーシブデザインでは、少数派のニーズをできる限り多く取り入れる必要があります。しかし、すべてを人力でカバーするのは難しいのが現実です。
Googleのケリー氏は、生成AIを活用することで、少数派の声を効率よく取り入れたインクルーシブな設計を実現していました。
UX DAYS TOKYO 2025のワークショップでも、AIに頼りすぎず、人間中心の設計思想を維持する大切さを学びました。AIはあくまでツールです。作業を効率化し、バイアスや見落としを減らす助けになりますが、根本の設計思想が間違っていれば、AIも間違った結果を出してしまいます。
まとめ:インクルーシブデザインで未来をつくる
ユニバーサルデザインの価値を理解し、インクルーシブデザインを通じて多様性を実現すること。それが、今後のプロダクトやサービスに求められる姿勢です。
誰もが心地よく使える体験を目指して、まずは目の前の「違い」からデザインを始めてみましょう。