TOP ツール・フレームワーク・方法論 どこまで何を作るべき?機能の充足度を見極める狩野モデルとは

どこまで何を作るべき?機能の充足度を見極める狩野モデルとは

「Prodpad」創業者Janna Bastow氏の組織変革ワークショップの予習として、プロダクトマネージャー向けに「狩野モデル」を紹介する記事を翻訳しました。

ユーザーが何にどれだけの機能を求めているのか、開発リソースをどこに集中させるべきか、満足度を高めるには何が必要かを判断するのに迷うことがあります。こうした悩みを整理し、機能の優先度を見極めるために「狩野モデル」を利用できます。

原文:https://www.prodpad.com/glossary/kano-model/

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Dan Collins(ダン・コリンズ)

狩野モデルとは?

狩野モデルは、顧客を満足させ、さらには感動させる要素を優先的に考えるフレームワークです。このモデルを活用することで、プロダクトに最低限含めるべき機能と、リソースを投入する価値のある機能を見極めることができます。狩野モデルでは、顧客の反応に基づいてプロダクトの機能を5つのカテゴリに分類します。

1980年代に狩野紀昭氏によって開発されました。これまで「顧客満足は直線的に向上する」と考えられてきましたが、狩野氏の研究は、満足度は単純なものではなく、異なる感情の反応によって分類できると主張しました。その結果、顧客満足に影響を与える5つの機能タイプが定義されました。

プロダクトマネージャーは、このモデルを活用することで、プロダクトロードマップ上のどの機能が顧客満足に大きな影響を与えるのか、また、どの機能が不要なのかを判断しやすくなります。また、顧客の期待を超えるような意外性のある機能を特定し、より高い満足度を生み出す機会を見つけることもできます。   (なお、UX TIMES 用語でも「狩野モデル」を紹介しています)

  • 基本(必須)機能:市場参入時に必ず含めるべき機能
  • 性能機能:顧客が求める、満足度を高める機能
  • 魅力(驚き・感動を与える)機能:顧客が予想していなかったが、発見すると喜ばれる機能
  • 無関心機能:顧客にとって特に影響を与えない機能
  • 不満を生む(逆効果)機能:顧客に不満を与えるため排除すべき機能

狩野モデルの仕組み

標準化されたアンケートを使用して、顧客から具体的なフィードバックを収集し、プロダクトに対する評価を分析します。このアンケートでは、各機能について肯定的(機能的)な質問と否定的(非機能的)な質問の両方を用い、ユーザーの感情を測定します。

5段階評価のアンケートとカテゴリ評価

アンケートの回答は、以下の5段階のスケールで評価されます。

  1. 好き
  2. 期待している
  3. どちらでもない
  4. 我慢できる
  5. 嫌い

機能的(肯定的)な質問では、ある機能が追加された場合、ユーザーがどのように感じるかを尋ねます。

例:「チェックアウト機能にPayPal連携を追加したら、どう感じますか?」

非機能的(否定的)な質問では、ある機能が提供されなかった場合、ユーザーがどのように感じるかを尋ねます。

例:「チェックアウト機能にPayPal連携がなかったら、どう感じますか?」

アンケートの回答をもとに、各機能を以下の5つのカテゴリに割り当てます。

これらのカテゴリを使用して、ユーザーが何を期待しているのか、競合との差別化要因、無視しても安全な考慮事項、そして機能リストから削除すべき項目を決定することができます。

機能は一つのカテゴリーに留まることはありません。しかし、魅力的だと思われたものが最終的には基本的な期待に変わることもありますし、これまでうまくいったことが今後もずっとうまくいくとは限りません。

5つの機能カテゴリ

プロダクトの機能を5つのカテゴリに分類し、顧客の満足度への影響を分析します。

1. 基本(必須)機能

顧客が当たり前に期待する機能で、欠けていると大きな不満につながる。しかし、満たしたからといって特に満足度が上がるわけではない。市場参入のための最低条件となる機能。

  • スマホの電話機能
  • ECサイトの支払いシステム
  • ホテルの清潔な部屋

2. 性能機能

プロダクトの性能や品質に直結し、顧客の満足度に比例して影響を与える機能。競争力を維持するために不可欠で、プロダクト開発の中心となる。性能が高ければ高いほど顧客の満足度は向上するが、期待を超えただけでは完全な満足にはつながらない。

  • スマホのバッテリー持続時間
  • カメラの画素数
  • 飲食店の料理のクオリティ

3. 魅力(驚き・感動を与える)機能

顧客が予想していなかったが、提供されると感動する機能。プロダクトの競争力を高め、ブランドの差別化につながる。なくても不満にはならないが、あると満足度が大きく向上する。

  • スマートフォンの顔認証機能
  • 自動車のシートヒーター
  • ECサイトのAIによるパーソナライズレコメンド

4. 無関心な機能

顧客にとって重要ではなく、満足度にほとんど影響を与えない機能。あってもなくても気にされず、購入の決め手にならない。企業側が価値を提供しているつもりでも、実際のユーザーには響かない場合がある。

  • パッケージデザインの微細な変更
  • アプリのUIアニメーションの追加
  • スマホのカスタムフォント

5. 不満を生む(逆効果)機能

導入することで顧客満足度を低下させる機能。使いにくさやストレスを生む要素が該当し、顧客体験の妨げとなる。できるだけ排除すべき。

  • 操作が複雑なUI/UX
  • 広告が多すぎるアプリ
  • 不親切なカスタマーサポート

ホテルの機能を狩野モデルで評価する

狩野モデルをホテルの例で説明すると、その考え方がより明確になります。例えば、お湯が出ることはどんなホテルでも当然期待される「基本機能」であり、欠けると大きな不満につながります。一方で、快適なベッドや高速Wi-Fiは「性能機能」に分類され、品質が良ければ満足度が高まるものの、驚きは生みません。

宿泊客の期待を超える「魅力機能」として、DoubleTreeホテルが提供する温かいチョコチップクッキーが挙げられます。これは、あれば嬉しいが、なくても不満にはならない要素です。しかし、こうした魅力機能も普及すればやがて「基本機能」へと変わる可能性があります。

また、スタッフ専用エレベーターのように、宿泊客に影響を与えない「無関心な機能」もあれば、カプセルホテルの極端に狭い部屋のように、不便さが強調されることで不満を生む「逆効果の機能」もあります。

このように、ホテルの機能は時代とともに変化し、かつての特別なサービスが当たり前になることもあります。競争力を維持するには、顧客の期待の変化を捉え、新たな魅力機能を生み出し続けることが重要です。

狩野モデルのメリットとデメリット

顧客が求めるものと不要なものを明確にし、優先順位を決めるのに役立つフレームワークです。しかし、万能ではなく、他の手法と組み合わせることでより効果的に活用できます。ここでは、そのメリットとデメリットを整理します。

メリット

  • 顧客のニーズを明確にし、優先順位を決定できる
  • どの機能が顧客にとって最も価値を持つかを把握できる
  • 顧客満足度やロイヤルティの向上につながる
  • リソースを効率的に配分し、時間とコストを節約できる
  • 競争力を高めるためのイノベーションのヒントを得られる

デメリット

  • 顧客のニーズに特化しており、他の要因(ビジネス戦略や技術的制約など)を考慮しない
  • 分析結果の解釈にばらつきが出ることがあり、意思決定の一貫性が損なわれる可能性がある
  • 機能の追加にかかるコストや実現可能性を考慮しない
  • 顧客ごとに期待が異なるため、適用が難しい場合がある
  • 定性的なデータが中心で、なぜその機能が重要なのかを明確にしにくい
  • 文化や地域ごとの違いを十分に反映できない可能性がある

狩野モデルは強力なツールですが、単独で使うのではなく、他のフレームワークと組み合わせて活用することで、よりバランスの取れた意思決定が可能になります。

効果的に活用するためのベストプラクティス

いくつかのポイントを押さえておくことで、より効果的に顧客満足度を高め、競争力のあるプロダクトを設計できます。

基本機能と性能機能を優先

まずは、基本機能と性能機能の整備を優先することが重要です。顧客が当然のように期待する基本機能を満たし、さらに性能機能を向上させることで、プロダクトの基盤をしっかりと築きます。その上で、「魅力機能」を追加することで、市場での差別化を図り、競争優位を確立できます。

評価の定期的な見直し

評価は定期的に見直すことも大切です。市場が進化し、顧客の期待も変化するため、現在は「魅力機能」とされるものが、いずれ「性能機能」へ、さらには「基本機能」へと移行していくことがあります。新しい技術や競争環境の変化に対応し、常に顧客の期待を上回るプロダクトを提供できるようにする必要があります。

開発・運用面も考慮する

また、「無関心な機能」と分類されたものでも、すぐに無視するべきとは限りません。顧客の満足度には影響しなくても、開発チームの作業効率を向上させたり、内部プロセスを簡略化したりする場合は、有益な要素となり得ます。そのため、実際の開発や運用面も考慮することが重要です。

他フレームワークと組み合わせる

狩野モデルは顧客満足度の観点では有用ですが、ビジネス戦略や技術的制約、コストといった側面も意思決定に影響を与えます。異なるアプローチを組み合わせることで、よりバランスの取れたプロダクト開発が可能になります。

これらのポイントを意識することで、プロダクト開発をより効果的に進めることができます。顧客の期待を満たし、それを超える体験を提供することで、競争力を強化し、より多くのロイヤルユーザーを獲得できるでしょう。

さらなる学びのために

どの優先順位付けモデルが自分のプロダクトに最適か

ProdPadのCEO兼共同創業者であるジャナ・バストウ(Janna Bastow)が、他の4つのタスク管理ツールを紹介し、製品に最適な優先順位付けの方法を選ぶためのポイントを解説しています。

プロダクトマネジメントにおける優先順位付け

プロダクトマネジメントのプロセス全体を解説するガイドです。ProdPadを活用し、バックログの管理を効率的に行う方法について学べます。

これらを活用することで、より幅広い優先順位付けの手法を理解し、プロダクト開発に役立てることができます。

■プロダクトサクセスの設計図:リーンロードマップ×OKRで実現する組織変革ワークショップのご案内

長年に渡り、無駄なく、顧客満足に繋げるために使われているフレームワークでしたが、どんなに良いフレームワークでも、持つ意味や効果を深く理解していなければ、使うだけになってしまうものです。そして、理解するには実践的な学びを得る必要があります。

3月30日に開催されるワークショップでは、無駄を省くリーン思考と、組織を成長させるためのOKR(目標と成果指標)を実践的に学び、プロダクトと組織の改善に役立つ具体的な知見が紹介されます。こうした手法は、活字で読むだけではなかなか身につきません。料理のレシピと同じように、実際に実践することで初めて体得できます。

フレームワークの使い方を学ぶだけでなく、その目的やチーム内での効果的な会話の進め方、アイデアのまとめ方などを、ジャナさんから実践的に学びましょう!

BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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