――中間作業がなくなる、AIで手軽に作成できる、もうそんな時代
AIの波が、いよいよ「ウェブ制作」を含むソフトウェア開発の現場にも押し寄せています。
欧米ではすでにAIによるリストラが進み、ホワイトカラー職が次々と消えています。
Googleのデザイナーがレイオフされたというニュースも話題になりました。
コロナがまだ日本に来ていない時と同じように、「それは海外の話」と思っていませんか?
残念ながら、日本も同じ波から逃れることはできません。
世界で注目を集めた「Figmaはタイタニック」論
AI for UXのワークショップ講師であり、UX業界のオピニオンリーダーでもあるグレッグ・ヌードルマン氏(Greg Nudelman)。
彼が発表した記事「Figma is a Titanic」は、世界中で大きな反響を呼びました。
しかし、多くの人がその本意を正しく理解していません。
私たちはこの記事を題材にしたディスカッション形式の勉強会を開催しましたが、参加者の中にはこんな声もありました。
「今までと変わらないですよね」
「FigmaもAI機能を出しているし」
まるで他人事のような反応です。
しかし、グレッグ氏が訴えているのは「Figmaが沈む」という表面的な話ではなく、制作の前提が根本から変わる産業革命が起きているということなのです。
なぜ“革命”を感じられないのか
その理由は、私たちがいまだに「これまでのやり方」をベースに考えているからです。
AIによる変化は、ツールの置き換えではありません。
プロセスそのものが、再設計されています。
私自身もこの変化を理解するまでに、数週間、頭を抱えました。
つまり、いま必要なのは「スキルアップ」ではなく「マインドシフト(パラダイムシフト)」です。
では、具体的に何が変わるのでしょうか。厳密なステップではないですが、比較のためフローを書き出しました。
これまでのウェブ制作プロセス
- 手書きモックアップやテキスト設計
- Figmaなどのデザインツールでページ設計
- ステークホルダーと確認
- HTML / CSSでコーディング
- React化・デザインシステム構築
このプロセスは長年、多くの制作現場で採用されてきました。しかし、AI時代にはこの構造が根本から変わります。
AI時代のウェブ制作プロセス
- 手書きモックアップやテキスト設計
- React化:AIが行う
- (ステークホルダー含め)ブラウザ上でステークホルダー確認・テスト(RITE)
この違いは、単なるツール選択ではなく制作哲学の転換です。
Figmaで「主に静的な画面」をつくる代わりに、Ract化させ、デザイニング・イン・ザ・ブラウザ(HTML / CSSを直接操作)で、動的なプロダクト上で即座に検証・改善(RITE)する。つまり、中間工程がなくなり“デザイン”と“実装”の境界が溶けていくのです。
激震!ウェブサイト制作が大きく変わる!
この差はとても大きく、ページ数が多ければ多いほど、このプロセスの差は広がります。
従来のやり方では、1つのページを確認するだけで複数のデザイン案・スマホやタブレット等のデバイス対応を作らなければなりません。
AI時代では、これらの無駄な工程が自動化・統合され、制作スピードは1/10以下に短縮されます。
これこそが「AIによるウェブ制作革命」です。
Reactじゃないし。。。
では、Reactを使わないLP(ランディングページ)は?という疑問が出てくるでしょうが、すでにAIが自動でLPをデザインしてくれるサービスが多数登場しています。
もちろん、Figmaでも生成可能ですが、Figmaを使う必要すらないケースも増えています。つまり、Figma中心の制作プロセスに依存している企業は、今後組織レベルの変革を迫られることになるのです。
「デザイニング・イン・ザ・ブラウザ」とは、ブラウザ上でデザインと開発を同時に行う手法です。Googleをはじめ、シリコンバレーでは10年以上前から一般的になっています。
これら方法を導入していない企業は、いまや無駄なコストを払い、競争力を失うリスクを抱えています。
なぜなら、プロジェクト全体の開発スピードやコスト効率が、桁違いに変わるからです。
いま、私たちが問われていること
自分はいま、どの船に乗っているのか?
それが「Figmaというタイタニック」なのか、「AIという新しい航路」なのか。
ウェブ制作の産業革命は、すでに始まっています。
気づかないふりをしても、波は止まりません。
AI駆動型プロダクトを理解する
もう1つ忘れてはならないものがあります。それはAI駆動型プロダクトが主流になるということです。
プロダクト開発業界では、SaaSが死んだとも言われ、AI駆動型プロダクトが台頭しています。
現在のAI駆動型プロダクトは、LLMが中心なのでチャットボット型が主流ですが、いずれにしてもAIが出してくるデータをデザインすることになります。つまり、デザインツールではAIが出すデータを表現することができないのです。
AI時代は誰もが学び続けるしかない
イスラエルでは、1970年代からコンピューター・プログラミング教育が始まり、2000年初頭には子供向けのCodeMonkey(コードモンキー)も出ています。そのイスラエルで、グレッグ氏のワークショップに100名以上が参加しています。日本でも負けずに世界の知識を取り入れましょう。
とても重要な余談
AIという言葉がついていれば、同じではありません。「FigmaもAI(make)開発しているよね。」とか、「Gemini」と連携したよね。」と思ってはいけません。
AIは道具です。使い方で決まります。
そう、そして、AI駆動型プロダクトではAIをどう使うかがポイントになります。
このワークショップには、この辺りの内容が含まれているので楽しみで仕方ないですね。
ワークショップのご案内
>>2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」