TOP デザイン・情報設計・UI 英国のTV番組に学ぶUX設計ワークフロー

英国のTV番組に学ぶUX設計ワークフロー

イギリスのTVチャンネル「Channel4」の中でライフスタイル部門の番組は、戦略的にも商業的にも重要な位置づけで、この分野の人気番組は、ジェイミー・オリバー、クリスティー・アルソップ、メアリー・ポータスなどを主要タレントに成長させるほどです。

さらなる成長のため、「Channel 4」の年配層に向けたチャンネルである「More4」の改革に向けて、ライフスタイルをネットワーク全体で繋ぎ、ユーザと番組の「体験」の距離を縮めようと常に模索しています。

改革の方向性をさぐる

「プロジェクトの当初、イギリス、ブライトンにあるUXファーム「Clearleft」によって、方向性をさぐるため、関係者へのインタビューと、協働デザインワークショップを行いました。すばやくユーザとビジネスモデルを同時に探索できたので、短期間で幅広いアイディアを生み出すことができました。」
リチャード・デビッドソン-ヒューストン、チャンネル4オンライン部長

アイディアは、以下の4つの鍵となるテーマで構成されています。

  • 番組の体験をまるで自分のことのようにさせる
  • 視聴者の生活に加わる
  • 視聴者の欲しいものを、欲しい時に与える
  • 大きなものの何かの一部になる

この4つのテーマに加えて、プロジェクト成功に必要なプロセスと条件をまとめた戦略的提言をつくりました。従来のままだと、チャンネルが世の中に受け入れられないことは、明らかでした。

チームは、「Channel4」の3本柱である「ブランド」「コンテンツ」「視聴者」をデジタルサービス内で組み合わると、独自性が生み出せると気づきました。

シンプルなベン図にすると、すべてのアイディアを見渡せるレンズとなり、ベン図の交わる箇所に放送局の独自性を活かした成功の機会が見いだせそうでした。

当初の契約を終えるまでに、チームはアイディアをひとつの「Vision Piece(ビジョンを一枚絵にしたもの)」に凝縮してまとめました。この一枚絵は、スライド資料の素材として使われ、関係者から視聴者に至るまで、幅広くアイディアを上手く伝えるのに役立ちました。

ソリューションの候補を定義する

成功を収めた「Clearleft」はすぐに「Channel 4」に呼ばれ、今度はアイデアを成長させ、説得力のあるものに仕上げることに重点を置くことにしました。

グループ討議や内部関係者のフィードバックからは、「視聴者の生活に加わる」というテーマに最も反響がありました。

この段階で、チームはこの放送局が「コンテンツの提供者」としてやっていくことは、コストの維持の面でも、主要タレントの野望との衝突の面からみても難しく、「Channel 4の体験」の様々な部分に「加わる」ようにできるサービスが必要と確信しました。

これはプロジェクトの重要なインサイトです。
そして、ライフスタイルを「サービスとして」新たにとらえ、大変な編集作業からの解放とともに、放送局の重要な構成要素として定義しました。これらを満たす、最も良いアイディアは、「ライフスタイルの視聴者が気に入ったライフスタイルのコンテンツをウェブ上のどこからでも集めて保存できるようにする」ブックマーキングサービスでした。

推進力を得て、チームはすぐに、提供価値の定義、カスタマージャーニーマップの可視化、サービスコンセプトを表現するためのUIデザインの作成に取り組みました。

そして、戦略レベルでこのプロジェクトを成功させるには、従来とは違うビジネスモデルだけではなく、新しい製品開発のアプローチを必要とすることを伝えました。多くの成功したスタートアップを特徴付ける、迅速で反復的な製品開発のアプローチです。

リーン方式によるプロトタイピング

チームはアイディアに自信があったが、大規模開発を前に視聴者に核となるこのコンセプトが響くかの証拠がより必要でした。そうです、明確に定義された提案はあるが、この種のプロダクトを利用する人は本当にいるのだろうか?プロダクトがなくなったらそのユーザは何か困るのだろうか?ということです。

仮説検証するため、私たちはリーンの中心概念である「つくる・はかる・まなぶ」の核である「ラピッドプロトタイピング」の段階に進みました。4週間の集中的なゲリラテスト(細かいことを考えず、取り急ぎで行うテスト)と反復的なプロトタイピングをしながら、プロトタイプの精度を高め、ユーザの欲求を満たす最小の製品に洗練させました。その過程では、インタラクションやUIデザインの専門性を活かしながら、プロトタイプの完成度を着実に高めていきました。

「製品の自信が深まると、「Channel 4」は、「ThoughtWorks」を製品開発のパートナーにしました。反復アプローチは、ThoughtWorksチームのアジャイル方法論とぴったり合い、製品の洗練させるために必要な、重要なパートナー同士になりました。そして「Scrapbook」がとうとう生まれました。」
LELIA FERRO, PRODUCT MANAGER, CHANNEL 4

Channel4 画面遷移

「Scrapbook」の発表

「Scrapbook」は、2012年5月に一般公開されました。公開まで、「Clearleft」は、「Channel 4」「ThoughtWorks」との間で横断的なパートナーシップが結ばれていました。私たちの重点は、製品の将来的な信頼性が保たれるよう、力強いビジュアルデザインシステムを定義しつつ、同時に製品のビジョンとユーザ体験が守られるよう保証することでした。製品公開以来、「Clearleft」は「Scrapbook」についてのアドバイスを続けています。大型アップデートが、2013年初期に予定されています。
Scrapbookのスクリーンショット

スクリーンショット Channel4 More

UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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