非営利財団の例にみるUXの与える効果

世界中の被災民を人道的に支援する団体の献身的な活動を支えるのに、オンライン募金を支持することは大いに貢献する。

ウェブサイトは、募金額に関係なく、あらゆる寄贈者が立派な人道目的で支援することを可能にする。しかし、団体はどうしたらユーザーに行動に移させ、また戻ってくるようにするのか?

シリアで継続中の紛争を考えてみると、U1グループ(オーストラリアのUXコンサルタント)はその方法を探求することにした。研究者たちは質問を投げかけた。「非営利団体の優れたウェブデザインが、オンライン募金の確実性を上げつつ、良いユーザー体験をもたらすにはどうすればいいか?」

UXと募金行動の比較: UNICEF 対 Red Cross

独自の研究を行うために、二つのオーストラリアの団体、UNICEFとRed Crossのウェブサイトの利便性について、データを収集した。両団体とも、シリア危機の影響下にある人々を支援するため、ユーザーからオンライン募金を募っていた。

Figure 1:UNICEF ホームページ

Figure 2:Red Cross ホームページ
二つの異なるオンライン調査をまたいでのプロジェクト参加に、556人を要した(UNICEFn=279 に対し Red Crossn=277)。 調査の解答者には外部のオンライン解答者から集められ、年齢層は18歳から65歳以上だった。解答者はオーストラリアの様々な州や地域から集まり、世帯収入も様々で、性別もほぼ等分に分かれていた。両調査の約40%が以前に人道目的の団体にオンラインで募金をしたことがあると答えた。

オンライン定量調査方法論

我々独自仕様のオンライン利便性ツールループ11を使って、オーストラリアのオンラインユーザーに、人道支援のチャリティにオンラインで募金するのと同等な二つのタスクをこなすよう、依頼した。それぞれのタスクは「成功」「失敗」のページにに割り振られ、総合タスク完了率が計算された。その後ユーザーに、タスクを達成する難度を尋ね、さらにフォローアップで下記の質問をした。

  • 全体のユーザー満足度
  • 将来募金をする可能性(タスク開始前に確認したオンライン募金行動と比較するため)
  • その団体を友人や同僚に薦める可能性
  • 特にどういった情報や機能がウェブサイトで重要だと思ったか

調査結果

二つの全く同じオンラインタスクを達成するという調査の結果として、(Figures 7の9参照)、Red Crossの22%と比べると、UNICEFのウェブサイトは、高い確率で非募金者(以前にオンライン募金の経験がないと申告した解答者)を潜在的な募金者(32%)に変えた。

オンライン募金行動

調査タスクを完了する前に、両試験グループの40%近くが、以前に人道目的の団体にオンラインで募金をしたことがあると答えた。(Figure 3)参照)

タスク完了後、解答者は、オンラインで募金したいと思う額を質問された。Red Crossのオンライン募金者の比率に変化が無かった一方(42%)、UNICEFの潜在的な募金者の割合は、 9%増加し、解答者の約半数(49%)に達した。

オンライン募金行動

Figure 3: オンライン募金行動

募金未経験者

解答者の過去のオンライン募金行動について結果を分析すると、募金未経験者に大きな変化があったことが判明した。

Figure 4 を見ると、Red Cross非募金者(22%)と比較すると、明らかに多くのUNICEF非募金者(32%)が少なくともいくらかのお金を募金したいと言ったことがわかる。

オンライン募金の可能性(前回のオンライン募金行動の分析より)

Figure 4:オンライン募金の可能性(前回のオンライン募金行動の分析より)

UNICEFウェブサイトの何が募金行動へ誘導するのか?

1. 使いやすさ

システム利便性スケール(SUS)は、ウェブサイトがどのくらい使いやすいかについて、両参加者から提供された自己評価である。Figure 5 が示すように、UNICEFのウェブサイトに、Red Cross(65)より、わずかにプラスのSUS結果(68)が出ている。

SUS結果

Figure 5: SUS結果
さらに、全解答者の大部分が、両方のウェブサイトに肯定的な満足度で答えた(Figure 6)参照)。しかしながら、Red Cross(19%)より、UNICEFのウェブサイトは、多くのユーザーからとても満足した(32%)という評価を受けた。

全体的に見たとき、今日見たこのウェブサイトでの経験にどのくらい満足しましたか?

Figure 6: 全体的に見たとき、今日見たこのウェブサイトでの経験にどのくらい満足しましたか?

2. オンラインタスク達成

解答者は、実際にウェブサイトで行うのと類似したシナリオを基にした、二つのタスクを完了するよう言われた。平均的なタスク達成のスコアはUNICEFの解答者の方が高かった。

  • UNICEF: 63%成功率
  • Red Cross: 45% 成功率

タスク1 – オンライン募金: シリア活動への募金をするために個人情報の入力ページを探すのに、UNICEF(47%)とRed Cross(49%)両調査で、約半数の解答者が達成できた。

シリア危機について

Figure 7: ニュースで見たことがなく、紛争に苦しむ人々を支援を可能にするために[UNICEFかRed Crossに募金をしようと思ったとします。この活動にお金を送るための個人情報入力を求めるページを探してください。
見つけられた解答者は、両サイトのホームページのよく見えるところにある「今すぐ募金」か「募金」アイコンをクリックしやすい。(Figure 8)参照)

クリックストリームの経路を分析することで、このタスクに失敗したユーザーが、個人情報を入力するページで入力を完了できなかったか、「ギフトを贈る」や「月間募金」ページへ行ってしまったことがわかった。

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Figure 8: 初回クリックヒートマップ – タスク1
タスク2 – 情報検索: 解答者は、Red Crossのサイト(41%)より、UNICEF(79%)の方が特にシリア紛争に関係する情報を見つけることができた。

3. 特定の情報や機能の重要性

下表が表しているのは、人道目的で支援するためにユーザーから金銭の寄付を募るウェブサイトで、載せるべき最も重要な情報とは何かについて解答者が解答したものである。

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危機アピールに関する正確な情報や事実(例えば、紛争の結果何人の人がシリアを追われたか)を探す能力は、人道目的で支援するためにユーザーから金銭の寄付を募るウェブサイトでは鍵となる重要な情報となる。

はるかに多くのUNICEF解答者が、情報を見つけることに成功した(タスク2)という事実で、将来のオンライン募金行動についてプラスの方向に転換したことの説明がつく。

4. ネットプロモータースコア

U1グループでは、ユーザー調査プロジェクト、または「推奨の見込み」のため、ネットプロモータースコア(NPS)の使用に興味が高まっていることは認識している。NPSは、製品やサービスに対してどれくらい忠誠心を示すか、そして顧客の経験が会社の発展にどう影響するか、を計るために(2003年ベイン社のフレッド・ライクヘルドにより)設計された。

UNICEF解答者からのデータを詳細に解析し、NPS得点と将来のオンライン募金の可能性に何らかの相関性があるかを調べた。

興味深いことに、全体のNPS得点は38(Figure 11参照)である一方、将来も募金はしないと答えた回答者(-57)と比較して、得点は将来募金するだろうと答えたUNICEF解答者の方がかなり高かった。(-19)

従って、ウェブサイトの利便性が、潜在的なオンライン募金行動へ意識変化させるだけでなく、団体への忠誠心も高めるというつながりを見て取れるのである。

今日見たウェブサイトの経験に基づいて、友人や同僚にUNICEFをどのくらい薦めますか?

Figure 11 今日見たウェブサイトの経験に基づいて、友人や同僚にUNICEFをどのくらい薦めますか?

結論

UNICEFとRed Crossサイトのオンラインテストを通して、オンラインで募金する際のユーザーの思考について有用な見識を得られた。

調査では、高いタスク達成得点が募金行動の可能性を上げることに関連があることが判明した。これはタスク達成後に、潜在的なオンライン募金者の割合が、Red CrossサイトよりUNICEFで増加したことにも現れている。

Good UX alone—not just bombarding people with various types of marketing—can influence behavior

研究でも例証されているように、あらゆる種類の販促手法を浴びせるだけでなく、優れたUXのみで、消費者行動に影響を与え、オンライン転換することは可能である。

あらゆる種類の販促手法を浴びせるだけじゃなく、優れたUXのみで、消費者行動に影響を与え、オンライン転換することは可能である。

さらに、ユーザーの報告によれば、人道目的で支援するために金銭の寄付を募るウェブサイトでは、下のような情報や機能を用意することが非常に重要となる。

  • 危機/活動についての正確な情報や事実
  • 目的の支援で募金がどのように利用されるか
  • 財務執行責任/管理の透明性/スタッフ経費
  • 安全なオンライン支払手続き

最後に、将来のオンライン募金行動の可能性は、ブランドへの忠誠心につながるネットプロモータースコア(NPS)に関連し、オンライン募金行動を増やすサイトではNPSスコアも上昇しやすい。

こうした発見は、非営利団体には特に重要である。というのも、UXの改善がさらなる資源を生み出し、支援を切実に必要としている人たちの元へ届けられるからである。また、これらの発見の原理は、営利目的のビジネスにも当てはめることができる。

今回の報告の結果により、下記の場合に、オンラインユーザーテストや調査の価値が高まる。

  • ◎顧客体験の改善
  • 転換の増加
  • さらに強い顧客の忠誠心の育成(喜んで募金したり、さらなる行動にうつす、等)
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菊池 聡

UX DAYS TOKYO (代表)
見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通いニールセンノーマンの資格を取得。
業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。