TOP 組織・ファシリテーション エンタープライズ企業にもUXが問われる時代!最新情報と海外カンファレンスはビジネスで必須アイテム:金 成哲さん

エンタープライズ企業にもUXが問われる時代!最新情報と海外カンファレンスはビジネスで必須アイテム:金 成哲さん

エンタープライズ企業向けのUXデザインから実装が業務

まずは、自己紹介をお願いします。

私はNCデザイン&コンサルティング株式会社のCEO兼ソリューションディレクターとして働いており、主に大手の日本企業や外資系企業をお客様にUXデザインのコンサルティングからサービス・製品の実装まで幅広いサービスを提供しています。

金 成哲
NCデザイン&コンサルティング株式会社

仕事の対象はB2B2CやB2Eのサービス・製品が多く、SNSやゲーム、ECサイトのようなB2C向けの仕事はあまりしていません。したがって、UXデザインにおいて大事にしていることも異なります。見た目のUIの改善よりも効率性、安全性、迅速性、セキュリティなど、ビジネスにおける価値を高めるためのUXデザインが求められます。

また単純なデザインに止まらず、実装の段階まで深く関わることにより、最初のデザインが実装の段階で劣化しないように配慮します。弊社が関わる案件は規模が大きいものが多く、デザインを渡しただけでは実装の段階での様々な圧力によって最初の構想が歪むことが往々あります。

それを防ぐため、弊社はサービスのリリースまで関わることを原則としています。そのため、弊社のデザイナーやコンサルタントはデザインだけでなく、開発技術やプロジェクト管理までの豊富な経験をもつ人材で構成しております。私の名刺にUXデザイナーではなくソリューションディレクターと書いているのも、単純にUXデザインに仕事の範囲を限定したくないからです。

弊社のサイトにもいくつかの事例を掲載しておりますが、B2B2CやB2Eの分野ではそれなりに幅広い実績を持っていると思います。

NCデザイン&コンサルティング株式会社実績

企業のUXは課題は山積み、だからこそ面白い分野

日本のUX業界について感じることは何ですか?

先述したように、B2Cの仕事はあまりしていませんのでなんとも言えませんが、私が働いている分野に限ってい言えば、日本は欧米に比べ少なくとも2年ほど遅れているというのが個人的な感想です。

例えば、現状として、企業で業務に使われるシステムの多くはデザインなどは考慮せず、エンジニアの視点だけで作られているものが多くあります。ユーザーは、「業務システムってこんなもんだろう」という、諦めた状態で使っています。それが5年くらい前からコンシューマライジェーションなどの用語の普及と共にデザインの重要性が認知され、少しずつ変わってきてはいるものの、それはまだ一部の進んでいる企業でしかないと思います。

また一部の日本企業の中にUXデザインの専門組織ができたのも、ここ2〜3年の間だと思います。ただし、新しくできたUXデザインチームはまだ企業内でしっかり活動できているかというと、まだまだ難航しているところが多く、課題は山積みと感じています。

UXデザイナーに対しては、UXデザインのスキルは持っていても、対象業界の経験や実装技術・プロジェクト管理など、UXデザインを囲む環境・業界への知識が足りておらず、各業界へ浸透することに失敗しているのではないかと思います。日本は、海外のいいものを素早く受け入れて日本化し、さらに改善されたものを生み出すことが上手い国だと思います。しかし、UXデザインに限っていうと、まだまだカタカナのままの状態でローカライズされてない状況です。

まあ、これからやることがいっぱいあるので、だからこそ面白い分野とも言えるでしょう。

UXの勉強は「書籍」から「twitter」へ

UXの情報はどのように取得されていますか?

以前、ITのエンジニアやコンサルタントをしていましたが、個人的な興味によってデザインの勉強を始めました。最初はUIデザインから入って、徐々にUXデザインまで学習し、実践を重ねながら経験や知識を得ました。最初にデザインを勉強し始めた頃は、とりあえずたくさんの書籍を買いあさり読んでいました。
当時は日本語のUXデザインの書籍がほとんどなかったため、UXデザイン関係の書籍は洋書を読むしかありませんでした。アメリカのAmazonにアカウントを作り、Kindleで購入して読んでいました。ちなみに、今年のUX DAYS TOKYO 2017に登壇されるスピーカーの書籍はErika Hall さんの書籍以外は全て持っています。【笑】

Undercover User
Experience Design
Cennydd Bowles (著)

Simple and Usable Web,
Mobile, and Interaction Design
Giles Colborne  (著)

Seductive Interaction Design:
Creating Playful, Fun,
and Effective User Experiences
Stephen P. Anderson (著)

最近は書籍を読むよりはTwitterで世界のUXデザインの著名人をフォローして、彼らの発信する情報を中心に最新の情報を習得しています。海外で行われた講演もライブでみれたり、数日後には動画で公開されるので有益な情報は見切れないほど多いと思います。まあ、英語という壁さえ越えられればのことですが。

余談ですが、私はこのような海外のコンテンツをずっと見ていたらいつのまにか英語が上達していたというケースなので、この方法をオススメしています。【笑】また、最近は日本語でもUXデザインの良い書籍が出るようになったので、気になるものは購入して参考にしています。

海外カンファレンスは費用と時間を使ってでも価値がある

UX関係のカンファレンスは何に参加されましたか?

最近は日本にも、UXデザインに関する多くのカンファレンスが開催され、楽しいですね。ただし、私が働いている分野を扱うカンファレンスは日本にはまだほぼないので、主に海外(欧米)でのカンファレンスに参加して最新の情報を得てきます。

最近はアメリカのテキサス州、サンアントニオで開かれている「エンタープライズUXデザイン」(https://2017.enterpriseux.net)のカンファレンスに参加しています。これは2015年に新しくできたカンファレンスで、エンタプライズと呼ばれるくらいの規模の企業でUXデザインをどのように導入・展開して企業価値を高められるかにフォーカスしたカンファレンスです。

GEやIBMのような巨大企業の事例からデザイン業界の有名人の講演が直で聞けるし、ワークショップを通してより密な経験や世界のUXデザイナーとの交流もできます。私が働いているUXデザインの中の一つの分野がアメリカではどのように動いているか、またそれが毎年どのように変わりつつあるかがわかる貴重な場でもあります。

仕事柄、最新の情報を得ることは最も重要ですが、それと共に、実際にスピーカーのセッションを聞くことでモチベーションも上げる、また必要であれば直接質問をぶつけることができるので1週間程度の海外旅行にかかる時間と費用を考慮してもそれなりの価値があると考えています。

UX DAYS TOKYO 2017 の[AI]セッションに注目!

UX DAYS TOKYO 2017のどのセッションに興味がありますか?

今回のUX DAYS TOKYOのアジェンダの中にも私が興味を持っていることが含まれており、とても興味があります。明日使える知識、来月に使える知識、そして来年使える知識がうまく組み合わされていると思いました。

カンファレンスでは、Giles Colborne さんの「対話型UI」に特に興味があります。今までUIというとGUIが基本でしたが、技術の発展によって音声でのUIを意識せざるを得ない時代になったと思います。視覚を利用したUIと聴覚や音声を利用したUIの差、またそれから生じるUXデザインにおける考慮事項の差などに興味があります。恥ずかしいながら、対話型UIに対しての知見があまりないので、落とし穴のベストプラクティスなどが聞ければ幸いです。

最近、AIの話題は日本でも頻繁に耳にするようになり、Cennydd Bowles さんの「AIの倫理」といテーマにも興味があります。最近は内部にAIを採用したサービスのUXデザインを考えることもありますので、具体的なUIから一旦離れて「倫理」という抽象的なレベルから考えてみることも価値があると思います。

実は、私は元エンジニアだったこともあって、AIという用語が実態よりかなり膨らんでいるのではないかとの懸念を抱いています。しかし、例えばお客様に対して「それは過度な期待ですよ」と言い切るためにもある程度の知識は必要ですからね。【笑】

しかし、このような私の考え方をひっくり返してくれるチャンスになってくれたら最高ですね!

インタビュー後記

金さんは業務系のサービスコンサルティングを行なっていながらも世界で起こっている情報などにも貪欲な方で、御自身のご意見をキチンと持っておられるので、スピーカーにどんなことを質問されるのか、など興味深いです。当日参加していただき、いろいろな交流をしていただき、盛り上げていただけそうで楽しみです。

事業会社でサービス開発をおこなっています。 元々はエンジニアとして働いていましたが、現在ではスクラムマスター、QA、UXライティングなど様々な分野に挑戦中です。 UX DAYS TOKYOの活動を通じて、ユーザーの視点やスクラムに関する本質、共創のマインドなどを学び、現場でも多くを取り入れています。

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