デバイスの多様化によって必要となる視点 コンテキストを理解する(切り口-1: デバイス)

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、単なるコンテキスト以上の洞察を得ることができます。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、いかにリサーチが大切かが分かるでしょう。

しかしこのようにして見つけた様々な種類のコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いのでしょうか。たとえ、コンテキストをいかに分類してもそれはあくまで近似値にしかなり得ません。なぜならその分類結果は、コンテキストが溶け込んでわかりにくくなってしまっているからです。次に示すコンテキストの7つの「切り口」を使えばコンテキストの重要性を自信を持って説明できるはずです。

  1. 切り口-1: デバイス
  2. 切り口-2: 環境
  3. 切り口-3: 時間
  4. 切り口-4: 行動
  5. 切り口-5: パーソナル
  6. 切り口-6: 場所
  7. 切り口-7: ソーシャル
  8. コンテキスト・デザインの5原則

本記事では7つの切り口のうちの1つ、「デバイス」について取り扱います。

切り口-1: デバイス

デバイスの形状と性能はユーザの使い方を形作り操作方法やスクリーン、その他の出力、ネットワーク接続性など、デバイスの特徴は個々の機能によって形作られます。しかし、ユーザのデバイスの選択はどのようにそのデバイスの使用に関するコンテキストに影響を及ぼすのでしょうか。

デジタル時代は、「形状が機能に従う」時代ではありません。スーパーコンピュータがチェスに取り組む一方で、スマートフォンはロケットを打ち上げられるくらいの処理能力を持っています。そうはいっても、デバイスの形状と機能の間にはまだいくらかの相関関係があります。例えばスクリーンはデバイスの物理的形状と、それに伴うタスクを決定づけています。

1991年、ユビキタスコンピューティングの先駆者Mark Weiser氏はデジタルデバイスの3つの未来形を提示しました。「Tab」、「Pad」、「Board」だ(『The Computer for the Twenty-First Century』, Scientific American, Vol. 265, No. 3. (1991), pp. 94-104)。今日のデバイスはこの分類の中に明快に位置付けられます。スマートフォンとMP3プレイヤーは「Tab」。初期の小さな携帯用のデバイスの機能は限られたものでしたが、時間の経過とともに大きく拡張してきました。Weiser氏のいう「Pad」はノートPCとタブレットを、「Board」は大きなデスクトップコンピュータやテレビを具現化したものです。

モバイルイメージ

(Photo by adactio.)
写真: ADACTIO


最近、Dan Saffer氏は、Weiser氏のデバイスのタイプの拡張版として、「Dot」(小さな、ほとんど目に見えないデバイス)、「Box」(トースターやステレオのような持ち運びを想定しないデバイス)、「Chest」(食器洗浄機のような大きく、重いデバイス)、そしてVehicleの追加を提案しました(『Designing Devices』, Saffer D, 2011.)。

今となっては、形状が機能に従っているのは一部だけに過ぎません。一昔前のネットにつながる冷蔵庫などは、いわゆるインターネットバブル時代の安直なアイデアによる負の遺産です。私たちは「Dot」上でうまくWebブラウザを活用することはできなかったのです。しかしテクノロジーの急速な進歩によって、どんなデバイスの形状であっても、Webまたはアプリケーションにアクセスをすることが可能となりました。

たしかに小型のデバイスではバッテリーの寿命や小さなスクリーンによる制限を受けるかもしれませんが、位置情報を活用するプロダクトや、日々の生活情報などを読み上げるプロダクトとしての利用というのは容易に想像がつきます。最近の車にはWiFiのホットスポットと小型スクリーンが搭載してあります。これから数年のうちに、インターネットや、IoTなどの製品は、予想だにしない場所で活躍することでしょう。デバイスの中には、特定の使い方に一層最適化された製品も登場するでしょうし、人々にとってより重要になるものあるでしょう。しかし、全てはデジタルデザインに繋がっていくということを忘れてはいけません。

ソフトウェア・コンテキスト

デバイスのオペレーティングシステム(OS)は、それ自体がソフトウェアのコンテキストをある程度決定づけます。OSがどんな機能を提供するか考え、これらをプロダクトに統合する方法を探ってみてください。例えば、ユーザーがスマートフォンであなたのWebサイトを利用することが分かっている場合は、Webサイト上でリンクをクリックすれば問い合わせをするための電話ができるようにするといったことです。

もしあなたが必要としている機能がユーザーのOSに備わっていなかったらどうなるか考えてみてください。ファイル操作に制限があるデバイスに対する準備をしていただろうか。ブラウザのプラグインに依存フォーマットで、あなたの用意した動画は閲覧可能だろうか。

OSの機能が邪魔をする可能性もあります。例えば、着信やシステムのアップデートとプッシュ通知はユーザをアプリから遠ざけるかもしれません。また、アプリを再度立ち上げた時、ユーザ自身が何をしていたか思い出す助けとなる方法を探してみてください。そして、データが失われるリスクを考えてみてください。一定時間放置しているとログアウトされてしまうようなアプリにとって長い通話というのは特に痛手となります。

どのOSにも多くのUIのルールが積み込まれています。そのため主要なOSのインターフェースガイドラインを理解し、ネイティブアプリケーションを各デバイスの確立したルールに合わせてみてください。

しかし、Webデザインの場合には、ネイティブのルールよりもWebのルールを優先させましょう。1つのプラットフォームのルールに従うということは、他のプラットフォームのルールから遠ざかることになることもあるのです。たった1つのOS上で動作するWebアプリはほとんどありません。あなたのプロダクトのユーザ層が特定のOSに限られていたとしても、OSをアップデートする習慣はユーザによって異なるため、ある特定のOSにフォーカスするのは危険です。

Webアプリに対してネイティブデザインのルールを再現することは、痛みを伴う努力となります。インタラクションデザインパターン(トランジション、タイミングと挙動など)は、リバースエンジニアリングや模倣には向きません。これはあなたのコードを肥大化させますし、OSが変わった時は常に対応する必要が出てきます。

特定のデバイスに最適化されたWebアプリを作りたい、という衝動は理解できますが、破滅的にもなります。ネイティブデザインが重要だと感じたら、ネイティブアプリを構築してみてください。Webアプリは、プラットフォーム的に中立でなければなりません。Webの多様性は、その主な特徴です。

一方でWebアプリを作る際、ユーザのOSとブラウザ情報が分かると役に立ちます。それらはUser-Agent(UA)という文字列を通して取得でき、ブラウザは、その名前とバージョン、OS名とバージョン、使われているデフォルト言語といった他の情報を特定してくれます。この情報はある程度役に立つが、UAは完全ではなく成りすましが容易です。ユーザーエージェントスニッフィングは信頼性がないことで有名です。

また、仮にUAに頼ることができたとしても、バージョン番号から正確にブラウザやOSの機能を読み取るような方法はありません。UAを補うための技術的な方法としてはクライアント側とサーバ側の技術の合わせたものがあります。例えば、基本的な特徴を学ぶためにWURFLの言及や、JavaScriptを使用した、ブラウザ側の機能探知などがあります。ModernizrというJavaScriptのライブラリはは、ユーザーのブラウザがタッチイベントやローカルストレージ、advancedCSSなどの機能をサポートしているかどうかを教えてくれ、これらの情報を含んでいるクッキーをユーザーに渡すことで次回からサポートしている機能を特定する速度を上げることができます。

それら全ての利点をもってしても、技術的な解決方法というのはWebサイトに訪れる顧客やデバイスに対する深い知識に取って代わるものでは決してありません。今日における洞察の用途を制限しないでください。正しくデバイスコンテキストを理解するために、デザイナーは新しいハードウェアとソフトウェアをに関する知識を常に最新にし続けておかなければなりませんし、また新しいトレンドにもアンテナを伸ばしておかなければなりません。

デバイスコンテキストを理解するポイント

  • プロダクトに使われているデバイスは何でしょうか
  • 1年後はどうか。3年後、5年後はどうでしょうか
  • そうしたデバイスにできること、できないことは何でしょうか
  • このようなデバイスにはどのようなインタラクションが最適でしょうか
  • 強みを生かすことができるデバイス固有の機能があるでしょうか
  • 私たちのプロダクトが必要とする機能を持ち合わせていないデバイスにどのようにべきでしょうか
  • プロダクトを使いづらくしてしまうデバイス固有の機能があるでしょうか。もしあるとしたら、どのようにしてその影響を減らすことができるでしょうか

切り口-2: 環境に続きます。


本記事は、2013年に記載されたケニー・ボールズによるコンテキストの紹介記事を翻訳したものです。

SOURCE

デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー 元Clearleftエクスペリエンスデザイナー

大矢 礼子

この記事を書いた人:大矢 礼子

京都出身、大阪在住のグラフィックデザイナーです。
知育文具のデザインを約4年半、広告制作のプロダクションに約9年勤務し、フリーランスになって今5年目です。
趣味は木版画とドローイングです。
紙媒体中心のデザイナーで、かなりアナログなのですが、UXを勉強することで自分のデザインにどのような変化が起こるのか、ワクワクしています。
どうぞよろしくお願い致します。