コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口
リサーチをすれば、コンテキストも含め、それ以外の洞察を得ることができます。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、リサーチがいかに大切かが分かります。
リサーチから見つけた様々なコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いのでしょうか。
例えば、コンテキストを単純に分類しても、それはあくまで近似値にしかなり得ません。なぜなら、その分類結果は、コンテキストが溶け込んでわかりにくくなってしまっているから可能性が高いからです。
私は、コンテキストを7つの「切り口」で分類しました。これを使えば、コンテキストの重要性を理解することができるでしょう。
本記事では7つの切り口のうち2つ目の「環境」について取り扱います。
切り口-2: 環境
インタラクション(相互関係)を取り巻く周囲の物理的な環境とコンテキストは、互いに関連し合っています。
屋外の環境は天候により大きく左右されることもあり、屋内の環境よりも多様なものになっています。例えば、手が冷たくなってしまう様な環境であれば、最小限の入力でコントロールすることができるようにすることで、手を思いやることができます。
タッチスクリーンユーザなら、手袋を外さなくてはいけないかもしれないですし、光沢のあるスクリーンならば、太陽光のまぶしさや雨によりコントラストが低減するため、ユーザは色を知覚しづらくなってしまいます。そのため、それらを考慮してコントラストと読みやすさを最適にするために、色や書体、フォントサイズを調整するということになります。
(これは、アクセシビリティの観点からもお勧めします。Webコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン参照)
このような気象条件は、ユーザの行動にさえも影響します。例えば雪の日であれば、ゴルファーはゴルフ場のコースを回ろうとはせず、屋内の練習施設を探すでしょう。
騒音の大きな環境では、ユーザは集中力を阻害されます。その様な環境で使われるアプリでは、画面遷移のたびに情報を覚えておかなくてもいいように、視覚的に分かりやすい、強弱のある配色にするかもしれません。それとは逆に、静かな、あるいは暗い環境ならば、アプリからの音や光による妨害を極力減らす様にするでしょうか。なるべく音を鳴らさないようにし、映画館やオペラハウスで邪魔にならない様な暗い配色にするでしょうか。わずかな違いでも、それはユーザのことを最優先に考えたということを証明するものとなります。
タスクを完了するために必要な情報が、ユーザーの周囲の環境には含まれていることがあります。例えば家族で使っているPCなら、パスワードが書かれた付箋が画面の周りにいっぱい貼られているかもしれません。また、オフィスで事務作業している人なら印刷された価格表を見ているかもしれません。ユーザがどんな環境に置かれ、その環境でどんな情報を欲しがっているのか考えてみましょう。そして、欲しかった情報が得られなかった場合にどんなことが起こるか、ということまで考える必要があるのです。
確かに、環境のコンテキストについて想像を膨らませ、光センサや温度センサにを使うことは便利のように見えます。しかし、実際ユーザは、ほとんどの環境要因には自分で適応するものです。例えば、スクリーンに当たる太陽光が邪魔ならそれを遮り、静かな環境にいるならデバイスの音をミュートにします。システムが環境に対しあまりにも敏感に反応しすぎると、そうしたシステムは面倒くさく捉えられてしまいます。システムが反応する環境がユーザに明確にわからない限り、ユーザには不安感を与えてしまうでしょう。そのため、全ての環境における問題を解決しようとするのではなく、控えめであくまで自然な素振りをみせる様にする方がいいのです。
環境コンテキストを理解するポイント
- 利用シーンは屋内でしょうか、屋外でしょうか
- 気象条件がデザインに影響するでしょうか
- 周辺環境の情報源でインタラクションに関連するものがあるでしょうか
- ユーザはプロダクトが環境に適応する理由と仕組みを理解しているでしょうか
- 自分のプロダクトが置かれる環境で自然なものに感じられるにはどうしたらよいでしょうか
切り口-3: 時間に続きます。
本記事は、2013年に記載されたケニー・ボールズによるコンテキストの紹介記事を翻訳したものです。
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