TOP 組織・ファシリテーション コンテキストを理解する(切り口-6: 場所)

コンテキストを理解する(切り口-6: 場所)

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、コンテキストも含め、それ以外の洞察を得ることができます。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、リサーチがいかに大切かが分かります。 リサーチから見つけた様々なコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いのでしょうか。

例えば、コンテキストを単純に分類しても、それはあくまで近似値にしかなり得ません。なぜなら、その分類結果は、コンテキストが溶け込んでわかりにくくなってしまっているから可能性が高いからです。

私は、コンテキストを7つの「切り口」で分類しました。これを使えば、コンテキストの重要性を理解することができるでしょう。

  1. 切り口-1: デバイス
  2. 切り口-2: 環境
  3. 切り口-3: 時間
  4. 切り口-4: 行動
  5. 切り口-5: パーソナル
  6. 切り口-6: 場所
  7. 切り口-7: ソーシャル
  8. コンテキスト・デザインの5原則

本記事では7つの切り口のうち6つ目の「場所」について取り扱います。

切り口-6: 場所

ロケーションの情報は、ハードウェアのAPIとWeb上のGeolocation APIで、自動で検知するのが簡単になりました。APIはデバイスに現在地を返すように命令します。GPSやIPアドレス、WiFiやBluetoothのMacアドレス、携帯電話ID、ユーザインプットなど、使えるものなら何でも使って検知します。

APIから得られる主な情報は、1組の緯度と経度の座標情報です。もし他の地理的なデータにアクセスする権限があれば、より分かりやすく、場所の検索がしやすいものにすることができるでしょう。

例えば、街や地域の名前、住所、特定の場所に個人的な名称(「家」や「仕事場」)を付けるなどです。人は「家」や「仕事場」のように毎日を過ごす場所にいることが多いですが、どこにいてもテクノロジーを駆使することができます。ここで、用語について整理しておきましょう。私は「モバイル」という用語はユーザの場所を参照するものであり、単なるデバイスの種類とは考えていません。持ち運びやすいデバイスも存在しますが、生活圏以外の場所で使われた時のみ、そのデバイスを「モバイル」と言うことができます。

デバイスとそれを所持する人の現在地が、単純には関連していないことが想像できます。外出している全てのユーザが、情報に気を取られていたり、情報を消費しているわけではありません。また、全てのスマートフォンのユーザが細かな作業に対処できるわけではありません。しかし、モバイルの特徴を考慮すると、ある1つの事柄がわかってきます。旅行や仕事で見知らぬ場所にいる人々は、その地域に関する情報を必要とするということです。推測によると、スマートフォンからの検索の33%は、ユーザのいる「場所」に関する情報だといわれます。

ロケーションのコンテキストを知ることは、旅行、小売、観光業に関連した業界にとっては重要な情報となります。ロケーションのコンテキストは、ポータブルデバイスの最も分かりやすい活用事例ですが、これはデスクトップブラウザでも応用できます。ほぼ全ての主要なブラウザで、Geolocation APIはサポートされているので、ユーザの利用機会を損なわないよう気をつけましょう。

また、キーワード的なロケーションデータを活用できるかもしれません。キーワード的なロケーションデータとは、カレンダーの予定や、旅行の目的地のツイートメッセージなど、ユーザーが自身の意志で発信した情報のことです。このような個人的なデータを扱う際は細心の注意を払い、曖昧な言葉がある場合は配慮をしたほうが良いでしょう。

英国人にとって「ボクスホール」というのは、ロンドンにある地域の名前と、人気の車のブランド名の両方を意味します。「ビーストン」はノッティンガムにもリーズにも存在する地名です。同じような曖昧なコンテキストのデータは、キーワード的なデータを使ってエラーの可能性を探り、それを吟味して改善を試みましょう。

情報のモラル

位置情報を知らせるアプリは、商業的にもUX的にも、良い機会を与えてくれます。しかし位置データを軽率に使えば、トラブルを引き起こすことになります。GeolocationAPIは、プライバシーに配慮した仕様になっていて、位置データを取得する際にwebアプリを通じてユーザーにアクセス権限取得の許可を確認する必要があります。現在のブラウザはプライバシー保護を目的として、許可確認のメッセージを出すようになっています。

同じように、OSは通常、ネイティブユーザにGeolocationのリクエストを受け取るように促します。利点がすぐに明らかにならなければ、ユーザはアクセス権限を拒否するでしょう。アプリが位置情報にアクセスすることで、より良い仕事をしてくれるような(より適切な結果を導きだし、ユーザをイライラさせない)ものであれば、権限のリクエストと同じタイミングで、利点を説明することを忘れないようにしましょう。開発者の自分勝手な理由だけで、位置情報を取得してはいけません。不当なリクエストはユーザの信頼を裏切ることになり、国によっては、情報に関する保護法に引っかかり違法になるケースもあります。

相関関係と因果関係の混同

どんな場合でも、不完全な仮説は巨大な落とし穴を生み出します。例えば、アメリカで行われる世界最速の周回レース「インディ500」が開催される日に、インディアナポリス・モータースピードウェイにいる人はおそらくレースのためにそこに来たのでしょう。しかし、その目的は、観客としてなのか、スポンサーとしてなのか、主催者としてなのか、あるいは警備員の1人としてなのかは分かりません。人それぞれで目的が異なります。API(Geolocation APIも含む)のなかには、正確な緯度経度の値をリターンするものがあります。その値をよく見て、目的とは違うエラーの可能性を見つけ、最適で正確な情報を提供するようにしましょう。

場所コンテキストを理解するポイント

  • ユーザは詳細な位置情報を必要としているか
  • ユーザの位置情報にアクセスすることで、アプリのサービスは向上するか
  • ユーザに位置情報のアクセスを許可してもらうには、どう説明するのが一番良いか
  • 位置情報を提供するのに、緯度経度の他にもっと分かりやすい形式はないか
  • 提供する位置情報が正確であると確信を持つにはどうしたら良いか

切り口-7: ソーシャルに続きます。


本記事は、2013年に記載されたケニー・ボールズによるコンテキストの紹介記事を翻訳したものです。

SOURCE

デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー 元Clearleftエクスペリエンスデザイナー

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UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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