― 1000億円の手作業を、次の時代へアップデートするために
「僕は疑問なんですよね…これ、いるの?」
テレビ朝日の情報番組「モーニングショー」で、コメンテーターの玉川徹さんがこう問いかけたのは、5年に1度行われる国勢調査についてでした。
日本に住むすべての人を対象に行われる国勢調査。
その実施コストは、なんと約1000億円。
「マイナンバー制度があるのに、なぜまだ人が戸別訪問しているのか?」
そんな素朴な疑問に、多くの人がうなずいたのではないでしょうか。
現場では今も“人の足”で支えられている
実は私の知り合いに、国勢調査員を務めていた方がいます。
2ブロックほど担当すると約7万円の報酬がもらえるそうですが、実際の現場はなかなか大変です。
何度も同じ家を訪問したり、ドア越しに冷たい反応をされたり…。
決して気持ちの良い仕事ではないけれど、真面目に続けている方々がいてこそ、国のデータが集まっている現実があります。
さらに、調査員を派遣するコストだけでなく、CM制作や郵送費、印刷費などの広報費用も膨大です。
国を支える基礎データを得るためとはいえ、1000億円のアナログ作業は、いまの時代に合っているのでしょうか?
「マイナンバーと一緒にできないの?」という問い
玉川さんの問いに対して、番組では「マイナンバーデータと国勢調査データを結合するのはNG」と解説されていました。
なるほど、個人情報保護の観点からそれは当然のこと。
でも、よく考えると、“くっつける”必要まではないのです。
たとえば、マイナンバーに紐づいたメールアドレスやSMSに
「国勢調査の回答はこちらから」
と通知を送るだけでも、調査員の多くの仕事は省けるはずです。
回答が届いていない世帯だけをピックアップし、そこだけを人の手で確認すれば十分。
しかも、同じ住所・同じ苗字の世帯であれば、代表者が回答済みかどうかもAIが照合できます。
AIが得意な“整合性チェック”を、なぜ活かさないのか
AIは、大量のデータの中から欠損や重複を検出するのが得意です。
つまり、国勢調査で最も時間がかかる「確認」と「照合作業」は、AIがまさに得意とする領域なのです。
実際、地方自治体の中には、AIを活用して住民基本台帳や戸籍データの不整合を検出する取り組みも始まっています。
それができるのなら、国勢調査も同様の仕組みに移行できるはずです。
DXを声高に叫ぶなら、国の調査もアップデートを
日本では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉がすっかり定着しました。
しかし、その一方で、国民全員を対象とした最も大きな業務が、いまだに“人の足”に頼っているという矛盾。
「目的が違うから」「完全にできないなら、やらない」などの固定概念でなく
「できるところから変えていく」発想が求められています。
AIを使った国勢調査は、単なるコスト削減の話ではありません。
それは、人がより価値ある仕事に集中するための社会インフラ改革です。
今回、AIと漠然的な書き方をしましたが、データサイエンスだけでもカバーできる内容です。つまり、技術的な問題だけでなく、人の判断がテクノロジーの採用に大きく関わるのだと、この事例で感じることができました。
1000億円の国勢調査を、次の5年ではテクノロジーを活用したスマート国勢調査にするかどうかは、その判断とスマートに組み立てる能力なのだと感じ、5年後に期待したいと思います。
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国勢調査画像引用:https://www.city.omuta.lg.jp/kiji00320546/index.html
この事例を元に考えてみよう
国勢調査をAIを使ったプロダクトにするというお題で、UXデザイナーも設計する思想が必要になると感じました。これは、今までのUX設計だけでない新しい領域(AIの知識)を学ぶ必要があります。
AI時代に生き残るための知識と設計力を今勉強していきましょう。