「うまいもんドットコム」に「豊洲市場ドットコム」萩原 章史(はぎわら あきふみ)社長 が2月24日放送のカンブリア宮殿に出演されて「万人にうまいものはない」という名言を残していらっしゃいました。
食べることが好きな私は、その話を聞いて「へ?。美味しいものは誰にとっても美味しいじゃん!」って思ってしまいました。しかし、その言葉はユーザー調査やUX設計で理解しておくべき言葉だと感じました。
カンブリア宮殿の内容は「うまいもんドットコム」の紹介として、産地直送の鮮魚や野菜や、あまり知られていない食材を扱い、知る人ぞ知る方に販売するという内容で、この言葉が紹介されていました。
その数日後、3月3日に放送された水曜日のダウンタウンでは「苦手な食べ物を克服するのに最高峰の食材はアリか?を検証」という検証がされていました。検証結果として、最高峰の食材を持ってしても、苦手な食べ物を克服した人は誰もいませんでした。
それを見た瞬間、気に留めてもいなかった「万人にうまいものはない」という言葉が「本当だ。」と心から感じ、これは私達の調査にも言えることだと理解が深まりリンクしました。
ユーザーは無意識に嘘をつく
ZOZOスーツが誕生した時、凄く盛り上がりましたね。私の周りでも多くの人がオーダーしていました。スタッフの中にも「ZOZOスーツ、すっごいよ。」「これは成長するに違いない。」と話題になっていました。それは良いです。応援する気持ちや感動したことがあったのだと思います。しかし、あなたが、ユーザー調査をする人であれば、その言葉を鵜呑みにしては駄目です。
「私は購入しないけど、○○さんであれば(このプロダクトは)良いのでは?」「たまに利用しています。」「1〜2回くらい購入したことがあります。」「利用したいと思います。」などの回答者は、願望・希望・応援の気持ちが含まれた言葉で、そのプロダクトの本当のユーザーや客ではありません。
他にも、ユーザー調査を何度もやったことがある方は経験していると思いますが、ユーザーは無意識のうちに、表向き良い言葉を発してしまっています。これは、本能的によく見られたいという心理であるポライトネス理論があるので仕方ありません。
ユーザーを見極めるキラークエスチョン
プロダクトのユーザーであるかを検討できるキラークエスチョンがあります。時と場合によってアレンジが必要ですが、「お金を払ってこのサービスを使いますか?」です。
ZOZOの場合では、「ZOZOで服を購入していますか?」と聞きました。すると。。。「1回だけかな・・」という回答でした。
ゲーム好きでなければ、ゲームはやらないし、漫画好きでないと漫画は読まない。当たり前のことですが、なぜか、インタビューとなると、調査会社が集めてきた顧客全員が本当の顧客だと思い込み、調査した言葉をすべて実現させうようとしてしまいます。
以前行った化粧品の調査でも、憧れの化粧品ブランドを1つだけ購入してみた程度の方が調査対象に入っていました。この方の意見を全く聞かなくても良いという話ではないですが、メイン対象でないユーザーの声までも入れようとすると、そのプロダクトは方向性を見失ってしまいます。お金や時間をかけて調査をすると、どの声も漏れなく採用しようとしてしまいますが、それは間違っています。
ユーザーのどの声を拾って、どのようにプロダクトに活かすかはUXerにとって重要で、かつ、UXerとしての力量・差が出てくるところでもあります。鍛錬していきましょう。
多くの人に愛されるプロダクトを目指したいけど?
では、多くの人に愛されるプロダクトを目指すにはどうしたらいいのでしょうか?
「万人=多くの人」と解釈すると、1人でも多くの人に愛されるプロダクトを作ることはできないのか?と不安になってしまう方もいると思いますが、その解釈は間違っています。
言葉では、一人でも多くの人に愛されるプロダクトはないから目指す必要はない。と聞こえるかもしれませんが、時と場合で、かける言葉は変わります。
言葉は使っているシーンや文脈で意味が異なる
同じ言葉でも言葉にはいろいろな意味があり、使い方次第で意味が変わってきます。そんな言葉の多義によって「相手に誤解される、理解してもらえない、分かってもらえない」といった現象を多義の誤謬と言います。
「認知バイアス事典」では、以下の例が出ていました。
男子学生1:親が億単位で財産を持ってたら、就活なんてしなくていいのに……。
男子学生2:いや、お前は莫大な財産を持ってるよ。
男子学生1:は?
男子学生2:親友ってのは財産だろ?つまり、オレはお前にとっての財産なんだよ。
男子学生1:ま、まあな……。
男子学生2:だから就活なんてやめてしまえ。三段論法にまとめると。
前提1:財産があれば就活をしなくていい。
書籍「認知バイアス事典」
前提2:親友は財産である。
結論:したがって、親友がいれば就活をしなくていい
状況や受け取り方・解釈で、言葉の意味が変わってしまうため、どんな言葉も100%確実な意味で伝わりにくいのです。
「万人にうまいものはない」の意味の誤謬
「万人にうまいものはない」という言葉も同じように誤謬が発生しています。
前提1:万人にうまいものはない
前提2:特定の人にだけに特化したプロダクトにすればいい
前提3:多くの人に愛されるプロダクトはつくらなくてもいい
「万人にうまいものはない。」という言葉は、ユーザーを履き違えるな。あくまでちゃんとターゲットを見つけよう。という意味なだけで、みんなにうけるものを探す必要はない。万人に愛さるプロダクトを作るな。と言っているのではないことを理解しておきましょう。
まとめ
- プロダクトの本当の顧客・ユーザーを見極めよう
- ユーザーは、応援の気持ちなどで、良かれと思って結果的に曖昧な回答してしまう
- キラークエスチョン「このプロダクトにお金払いますか?」で見極める
- 万人にうまいものはない。の言葉の意味は、言葉通りではない