書籍「7つの習慣」をUX読書会で読みました。日本だけでも200万部以上を売り上げる有名な書籍ですが、そのタイトルと直結しないビジネス書として読まれることが多いようです。
ビジネスの現場では基礎部分を無視して、手法や結果だけのノウハウを取り入れようとすることが往々にしてあります。ビジネスを成功に導くための基礎として、ビジネス書として読まれているようです。
なお、書籍には成功のためには思考が大切で、その思考はパラダイム(物の見方や捉え方のこと)をシフトする(動かす)必要があるとしています。著者であるスティーブン・R・コヴィー氏自身も、障害を持つ息子に対して見方を変えることで、息子はもちろん、自分の人生を大きく変えた経験から「自分の内面を変えるインサイドアウトから全てが始まる」と説いています。
私にも起こったパラダイムシフト
私は「7つの習慣」に対して偏見を持っていました。学生時代にアルバイト先の社員さんから薦められて「7つの習慣」を知ったのですが、社員さんと考え方が合わなかった私はこの本を読むことはありませんでした。それどころかビジネス書自体を避けるようになっていました。
仕事をするようになって、ビジネス書の重要性を頭では理解しつつも、拒絶する気持ちが邪魔してしまい、読んでみても全く頭に入ってこない日々が続きました。「7つの習慣」もそのうちの一つです。中には、タイトルを見ただけで読んだことにしてしまうものもありました。そうしているうちに、いつの間にかビジネス書を読むことを諦めてしまいました。
しかし、定期的に開催されるUX DAYS TOKYOの読書会に参加するようになって、自分では手に取らないビジネス書を読むようになりました。
読書会では発表があり、書籍の中身を理解して自分の言葉で説明しなければなりません。「頭に入らない」などとは言っていられません。理解するために、書籍を何回も読み込み、時には文字からだけでなく、オーディオブックも活用しながら自分の頭で発表内容を考えていくと、少しずつ内容を咀嚼できるようになってきました。
そして、何度も読書会の準備を繰り返していくうちに、私の中にあったビジネス書に対する拒否反応が少しずつ消えていきました。読んだビジネス書の内容を自分の言葉で理解し、顧客とのコミュニケーションに活用できるようになったのです。特に、7つの習慣に記載されている「相互依存」や「Win-Winの関係」は役立っています。
技術調査で結果がすぐに分からない場合でも途中経過を報告する、相手からの悪いフィードバックに対しても感謝することを意識するようにする。これらを行うことで、顧客との関係性が良くなり仕事がしやすくなっています。
これらはビジネスにおいて一見当たり前に見えるのですが、「出来ているつもり」になっていることがあると感じました。そして、読書会に何度も参加することで、自然と自分の中にもパラダイムシフトが起きていたと実感しています。
7つの習慣が成長させ、仕事や生活、人生を変える
書籍のタイトルは、「7つの習慣」ですが、習慣の方法・テクニックではありません。7つの考え方を取り入れてパラダイム・シフトさせ、連続して成長するという意味で、習慣という言葉を利用しています。
赤ちゃんが這うことから歩けるようになるように、算数の計算ができないところに微分積分は解けないのと同じで、いきなり成果を上げることはできません。成長にはプロセス(順序)が必要なのです。この考えは、コヴィー氏の考えの中心にある重要な要素で、この7つの考え方を取り入れた習慣は人生を大きく変えると紹介しています。
7つの習慣の内容は以下の通りです。
- 主体的である
- 終わりを思い描くことから始める
- 最優先事項を重視する
- WinWinを考える
- まず理解に徹し、そして理解される
- シナジーを創り出す
- 刃を研ぐ
1つ目の「主体的である」が最も大切で、順序を追って習慣を身につけていく必要があります。
まずは、自分の人生だから自分主体で動こう!というものです。言われたからやる仕事でなく、目的をもって自ら動くというのが主体的です。
主体的な行動ができるようになると、自分だけでなく他人との関わり方も含めた考え方に成長していきます。仕事は人との関係があって成り立っているからです。
これらの考え方は、スクラムやOKRにも通じる内容です。「土台になる思考がないと、OKRは形骸化する | UX TIMES」という記事で紹介していますので、読んでみてください。
プロダクトの方向性を担うリーダーシップには欠かせないパラダイムシフト
パラダイムとは、モノの見方や視点・考え方のことで、書籍には「頭の中にある地図」とも説明されていました。日本の地図は日本が真ん中になりますが、他国の地図では異なります。世界から見る日本の位置や存在の見え方が異なるように、対象となる地域によって見え方が異なります。つまり、同じ対象物でも、頭の中にある地図(パラダイム)が変わると別の視点になります。
下の絵は、遠くを見ている若い女性に見えるという人と鼻の大きい年老いた女性に見えるという人がいます。
無意識の状態で見ると、若い女性か年老いた女性のどちらかにしか見えませんが、見方を変えようと意識すると、若い女性と年老いた女性の両方が見えるようになります。この例の様に、見方や考え方の変化がパラダイムシフトです。
パラダイムはビジネスにとっても重要です。チーム一丸になって進んでも、進む方向が間違っていたら意味がありません。時に間違った方向に行った場合や、あるべき方向が変わった場合など、正しい方向に行く修正力、パラダイムシフトが欠かせません。
繰り返し勉強会に参加して、パラダイムシフトさせよう
本を読む・セミナーに参加するなどして価値観を理解すると、モノの見方が変わった(パラダイムシフトした)ような気がしますが、数日経つと元に戻ってしまいます。先程の女性のイラストも意識しなければ、また同じようにどちらかしか見えなくなるのと同じです。自分の思考の癖もあり、見方や考え方を変えるのは簡単なことではありません。
ある書籍で「朝の時間は重要だ」という言葉に刺激を受けて朝活を始めてみたものの、数日で挫折してしまい継続しなかったことがあります。頭では理解したつもりでも、行動が伴っていないとパラダイムシフトは定着せず、価値観は変わりません。
パラダイムを完全に変えるには、習慣として定着する必要があります。習慣にするためには変化(シフト)と揺り戻しを繰り返さなくてはなりません。
読書会に参加する前は、セミナーに参加すると一瞬にして考え方が変わって定着するものだと思っていたのですが、考え方を変えることも継続が必要だと体感しました。そして、読書会や勉強会が継続のきっかけになっていることを学びました。