Googleカレンダーに新しい機能として、会議の日程調整ができる機能がつきました。これは、お金を払わなければ使えない有料機能です。
スタートアップでは、使ってもらうためにフリーミアムを利用することが多いです。ユーザーが利用する障壁を減らして、その中から有料顧客を見つけていくというものです。
有料プランがなければプロダクトは成立しないので価格設定が必要になりますが、この価格設定(プライス付け)が、プロダクトによって下手な場合があります。
ユーザー視点がなく、こんな感じだったら有料プランになるかな。と設定してまっているケースです。「そんなバカな!」と思うかもしれませんが、意外と多くの現場でおきています。
私のOJT先やコンサルで価格設定の意味を聞くと、あまり考えて設定していないかのような根拠のない回答が目立ちます。なぜ、その数や価格なのかを迫るとサーバー代金などのコストがかかるからとの回答が返ってきます。
フリーミアムをしているのに、経費に対して価格設定というのは、辻褄が合う様であっていません。また、機能によって価格付けをしていても、ユーザーはそれらのメリットを理解していない場合もよくあります。価格は心理によって変わるので、心理に合わせた価格設定と有料プランの設計をしていきましょう。
心理によって価値や価格が変わる
研修の際にも、水の価格を例に価格が変わることを説明しています。自販機で購入するお水は150円ほど、スーパーでは100円以下、山頂や離島になれば300円になっているケースもあります。
それは配送するコストがあるから価格も上がると感じてしまう人もいますが、それだけれはありません。
心理学的に価格を見ていきましょう。人は、なぜ価格が高くても購入するのでしょうか?
それは、その時(コンテキスト)に欲しいからです。人は、凄く喉が乾いていたら、ちょっと高くても購入するはずです。
レストランで飲むワインも、美味しい料理と合わせて飲むから、1杯 数1000円でも注文してしまうのです。また、ペアリングも、食べ物とのマリアージュを求めているからなりたっています。人は体験や心理で価格を決めているのです。
UX設計から価格設定を行おう
価格設定はプロダクトの成功に不可欠な要素ですが、多くの企業はユーザーの購買行動と価格の心理を理解して設定していません。
特にデジタルサービスの分野で一般的に利用されている、複数のプランを提供する「松竹梅」の価格にあわせてしまっているケースです。これはユーザーに選択肢を与えていますが、ユーザーは「松竹梅」を見て、本当に決定しているのでしょうか?
ユーザーはサービスを比較検討する際、複数のプランが存在すると、自らのニーズに最も適したプランを探求します。例えば、A・B・Cというプランがある場合、多くのユーザーは中間のプランに惹かれる傾向にあります。
これは「ゴルディロックスの原理」としても知られており、最も高価でも最も安価でもない選択肢が最も魅力的に感じられることを意味します。企業はこの心理を利用して、意図的に中間プランの魅力を高める価格設定を行うことがあります。
しかし、ゴルディロックスの原理は飲食店や携帯電話の個人的判断には有効的ですが、企業のサービス決定にはあまり有効ではありません。ユーザーが選択する際の本当の心理を理解してプロダクトの金額と見せ方を考えていきたいです。
料金プランページを見る動機を考える
次に、ユーザーが料金プランページを訪れる動機を考えてみましょう。多くの場合、無料プランの制限に直面し必要な機能を得るために有料プランを検討し始めます。
以下では、冒頭で紹介したGoogleの有料プラインへの導線とSlackとプライスページを例に考えてみます。
Googleカレンダーの有料プランへの誘導と紹介
Googleカレンダーでは、「作成」ボタンからプレミアム機能への紹介ページに誘導しています。
日程からカレンダーを作成できてしまうので気が付かないユーザーもいる問題はありますが、作成する行動から自然と有料プランを紹介しています。ユーザーの行動から無理なく紹介していたり、必要だと思うタイミング(Just In Time)で有料機能を紹介する方法として優れています。
繰り返しの説明ですが、ユーザーは、必要な時に必要なサービスを求めています。サービスの価値を認識した時に購入するので、松竹梅の形式だけをプラン紹介するのではなく、必要だと思うタイミングで、有料プランで何ができるかを丁寧に説明しましょう。
制限を感じた際に提案するSlack
Slackの無料(フリー)プランは、ファイルの保存や表示が制限されています。フリーユーザーは、容量や数に制限がかかる体験をした際に、より使いやすいプランを求めて料金プランを比較します。個人的に利用する場合は、チェックアウトにスムーズにいきますが、企業の場合は、また別の決定に至るまでの判断が出てきてしまいます。
例えば、社員が30名の企業で有料機能を誰が必要なのか不明であることが多く、それらが簡単に見積もりができれば、ツールなどの導入もスムーズになります。いくら企業のお金でも、無駄なく、効果的にサービス利用したいと思っていることを組んで理解しやすい情報を与えることができれば、無理な営業をかけずともユーザー自らが自ずと有料プランを利用するようになります。
無理に当てはめられた松竹梅形式
先ほど紹介した「松竹梅」表記をする場合には、その内容がユーザーが容易に理解できる内容であるか検討しましょう。
以下の図は、実際にあるアプリサービスの比較表の例です。簡単なユーザビリティ調査をすると、「◯ と ◎ の違いがわからない」・「数の加減がわからない」・「機能が”言葉では”わかりにくい」という結果がでました。
事実、機能を言葉にすることは難しいので、使ってもらい、その機能が何かを理解したうえで有料プランを紹介していきましょう。数においても利用した後だとその必要数を理解することができます。
価格設定と「松竹梅」表記
価格設定は、ユーザーが欲しいと思うものに値を付けることが基本です。そのためにも、UX設計を行い、その機能はいくらだと妥当なのかを検討しましょう。
競合他社がその価格だからうちもその価格にしましょう。とするのではなく、ユーザーのニーズと行動を見た上での価格設定が大切です。もちろん、他社比較も大切ですが、全く同じプロダクトはないはずです。そのプロダクトの何が強みで、何がユーザーの問題を解決しているのかビジネスの糧を大切に、念頭に価格設定していきましょう。
よくあるデザインやプラン設定として「松竹梅」形式をテンプレートのように利用する行為は、ユーザーを見ていない証拠です。価格設定を行う際は、どのプランを選びやすいか、またその理由は何かをチェックしていきましょう。