
こんにちは、スタッフでエンジニアの 、かじしまさちこ です。UX DAYS TOKYO 2025で登壇したルー・ダウン氏の著書「Good Service ーDX時代における本当に使いやすいサービス作りの原則15ー」の読書会に参加しました。
「サービスデザインはプロダクトを設計する人のもの」と思っていた私にとって、この読書会は大きな発見でした。私の仕事にも直結する原則が数多くあり、今日からすぐに活かせる知見を得ることができました。
15の原則の中で、私が特に「これはすぐ使える」と感じた3つを紹介します。
不確定なことを曖昧にせず、具体的に伝える
読書会の冒頭に、UX DAYS TOKYOオーガナイザの大本さんから「ウェブサイトで『近日公開』という表現は避けるべき」という話がありました。
私は「遅延した時のことを考えて、日付を明記するのは避けよう」と考えていました。しかし、実際にユーザーが期待しているのは「〇〇月XX日公開」のように具体的なものです。その具体的な期待に応えることが信頼につながるのだと気づきました。
本書の原則3でも「ユーザーがサービスに期待することを定め、それに応えること」が重要であるとされています。たとえば、機能のリリース日を明記し、遅延が発生した場合には理由と新たな予定日を示すことで、誠実な対応だと受け止めてもらえます。

この原則は、ユーザーだけでなく上司や同僚とのコミュニケーションにも当てはまります。たとえば、上司から依頼された資料作成に対し、期日と期待される内容を確認し、進捗を報告することも信頼の構築につながるということが1つ目です。
サービスの一貫性は、内部事情を超えて実現する
2つ目は、本書の原則9では「よいサービスは首尾一貫している」と説明されています。
この言葉を聞いて、以前関わった金融機関のウェブサイトを思い出しました。株取引とFX取引のページで文章のトーンやUIが異なり、まるで別会社のサービスに感じてしまったのです。
そのように感じてしまう背後には、異なる開発ベンダーや組織の合併など様々な事情があります。しかし、このような事情はユーザーには関係ありません。期待されるのはあくまで「統一された体験」です。

まさに「コンウェイの法則」です。「コンウェイの法則」は、組織のコミュニケーション構造が、そのままプロダクトやシステムの構造に反映されるという考え方です。内情に縛られず、一貫性のあるサービスを提供するには、部門や企業をまたいだ調整力が必要だと痛感しました。
想定外の問題に対応できる人の力が不可欠
最後は、原則15の「困ったときにサポートが受けられること」です。問題のすべてを事前に想定することは不可能であり、柔軟に対応できる体制が必要です。
印象的だったのは、名義変更の手続きをした女性ローラの事例です。亡くなった夫のアカウントを変更した際、「どうぞお楽しみください!」というメールが届き、しかもアカウント名がそのままだったため、深く傷ついたというものです。最終的に遺族専用のサポートチームに引き継がれ、ようやく対応が完了しました。

このような事例は、感情的な配慮がいかに大切かを教えてくれます。私自身が関わる業務でも、予期せぬエラーが発生した際に、定型文で突き放すのではなく、人の温かみを感じる対応があると安心してもらえたことを思い出しました。
近年ではチャットボットや生成AIの活用が進んでいますが、想定外の問題には十分に対応できない場面も多くあります。読書会で大本さんが話していた「0から1を作るのは人間、中間を支えるのがAI」という言葉が印象に残っています。
「誰か」のために働く限り必要な、サービスを提供する視点
「サービスデザイン」はUXデザイナーやプロダクトマネージャーの専売特許ではありません。対価を得ている限り、私たちひとりひとりがサービス提供者です。
サービスの受け手であるユーザー、チームメンバー、上司など、誰に対しても相手の期待に応え、信頼を築き、一貫性のある体験を提供することは、どの仕事にとっても不可欠な視点です。
『Good Service』の原則は、単なる理論ではなく、現場の判断に活かせる実践的な知識です。私も、この原則を取り入れて、よりよいサービスをつくっていきたいと思います。