「ZARA」試着専用店舗のサービスサファリ

試着専用ショップに行ってみた

人気のファストファション店は試着するのに並ぶということが首都圏を中心に大都市では当たり前になっています。そこで、アパレルメーカーのZARAは、試着専用ショップ:ポップアップストア(期間限定の店舗)を六本木ヒルズにフラッグショップとして開店させました。

ZARA六本木の試着専用ポップアップストアの紹介記事

Yahoo!のヘッドラインニュースの記事からは

自分のスマホやタブレッドで試着~購入までサクサクできちゃうんです!

と紹介されていますが、実際の店舗では私も含めて戸惑っている人の方が大半でした。このブログ記事ではサービスデザインという観点で調査(サービスサファリ)した結果をご紹介します。

設計者が想定した動線を確認

シャドーイング(お客の様子を観察)すると、店舗では迷っているお客が多かったのですが、ひとまず、サービス設計者の意図がどのようなものか記事を参考に紐解いてみます。

設計者が考えるメリット

ヘッドラインニュースの記事によると以下のメリットがあるようです。

  1. タグをひっくり返してサイズ確認不要
  2. 試着室前の長蛇の列に並ぶ必要なし
  3. レジのこれまた長蛇の列に並ぶ必要なし (ネットで購入)
    だから、スムーズ!!

1)のお気に入りの洋服のサイズ違いを探す必要がないのは便利だと思う一方、そんなに困るかな?と思いました。というのも、通常の日本の店舗だと、置かれているサイズが3〜4種類程度だからです。

でも、海外では異なる体験をしました。昨年、私がイギリスに行った時のことです。マークスアンドスペンサーで、ほとんどの洋服でサイズが10種類も展開されているのを目にしました。その時、小さいものは身体の大きな人には入らないから、全てを一緒に置いてある必要はなく、自分に合ったものだけ見れるように分けられていると良いのにな、と感じました。

同じデザインの洋服のサイズは平均して8つほど備わっている

分け方としては、3つくらいのレンジになっていればいいと思います。例えば、S〜M、M~L、L〜3Lのようにです。なぜ、そんな風に感じてしまうかと言うと、海外の売り場面積が日本の3〜5倍ほどあるからです。

同じデザインのサイズが多くあるだけ、広い売り場を更に動かなくてはなりません。なので、顧客のほとんどが疲れて、売り物のソファーに座り込んでしまっているという状態です。特に、アメリカやブラジルなど身体の大きさがが異なる人種が住んでいる場合、サイズの開きが大きいためこのような事になります。ということで、洋服のデザインだけ見て自分のサイズの試着がスマホで依頼できるのは海外では便利かも?と感じました。

そして、長蛇の列に並ばずに待っていられるのも良い事です。お店にとっても、洋服を見てもらう時間が伸びることで更に購入のきっかけになる可能性もあります。

日本のユーザーの実際の動線

六本木のZARAフラッグショップでの体験に話を戻します。試着や購入をしようとする洋服は、ハンガーごと手に取り、試着室かカウンターまで持っていくのが一般的です。しかし、このショップでは、その行動を取ってはいけませんでした。なぜなら、ダウンロードしたZARAのネイティブアプリで服のタグをスキャンして必要なサイズをオーダーしなければならないからです。店頭に置かれているサイズは1種類で、それ自体を試着することも購入することも出来ません。

ZARAのスタッフは、それを認識していない顧客に毎回同じ様にアプリをインストールさせ使い方を説明します。人手が足りている場合はいいですが、顧客が多い場合は大変です。洋服を見たいだけの顧客からしても「なんでアプリなんか入れなきゃなんないの?(面倒)」となるので、そのあたりの戸惑いをなくしながら説明しなければならないのは至難の技です。

アプリを入れて、いざスキャンします。次に試着の行動を取るのですが、なぜか試着ボタンでなく購入ボタンが現れます。

まだ買わないけど?と戸惑いつつスタッフに確認をすると、「大丈夫です。押してください」とボタン押下を促され、試着依頼が完了しました。。ほどなくアプリに通知が来て、2Fの試着専用フロアへ移動し、指定されたブースで試着をしました。

その場で買えない

試着後、「これ、欲しい!購入しよう」となった時にまた戸惑います。なぜなら、洋服をその場で受け取れないからです。どの商品も全て郵送になるからです。私も事前に試着専用と知っていればよかったのですが「すぐ欲しいのに〜ぃ(涙)」となりました。購入=すぐに手に入れることと思っている、手に入れることを目的にしている人にしたら、あれ?という感じになるはずです。

慣れてくれば荷物を持たなくて済むという利点も考えられるのかもしれませんが、衝動買いもなくなり、ショッピングの醍醐味が少しなくなってしまうのでは?と感じました。当然、その日に服が必要になるケースには対応できないわけで、ビジネス的にも機械損失になる可能性があり良くありません。郵送が悪い訳ではなく、ある程度の在庫もかかえてお渡しするくらいはあっても良いでしょう。

改善点

先程も記載したように、アプリを通じた体験とリアルでの試着・購買行動が結びついていないので、「あれ?」という状態になってしまいます。そこで、いくつかの問題の改善を考えてみました。これが完璧な方法ではない可能性もありますが、今の状態より良くなると思われます。そうでないと、この試着型店舗の試み自体が良くないものになってしまいます。

  1. 全ての服にアプリダウンロードのタグを付けて案内し、スタッフが説明しなくても顧客が理解できるようにする
  2. ネイティブアプリではなくWebアプリーケーションにする
  3. ハンガーと吊り棚をワイヤーなどで繋げてしまい、洋服を持っていけない仕様にする
  4. アプリUI自体も、もっと分かりやすく改善する
  5. 店舗にも在庫を用意して、顧客が持ち帰りか郵送かを選べるようにする

はじめに、他の店舗と異なるということを普通のタグでなく知らせる必要があります。ユーザーが見る服につけることで自然と誘導することができます。

そして、アプリのインストールは面倒です。最近では、低額スマホを利用している人も増えてきているので、Wi-Fi無しでネイティブアプリをダウンロードすることに抵抗を感じるケースもあるようです。Wi-Fiが完備していても設定が面倒です。もちろん、WebアプリケーションでもWi-Fi接続はあった方がいいですが、ダウンロードをしないだけでも面倒でなくなりますし、洋服を手に入れるゴールに近づいているのでモチベーションが異なります。

その他はすでに紹介しているので割愛しますが、日本の店舗面積や3〜4種類しかないサイズ展開を考えると、このZARAのアプリを用いた試着・購入体験は、試着やレジで並んでしまう問題点を改善するためだけには手間と費用がかかりすぎている感が否めません。

既にユーザーが持っているメンタルモデルを一気に変更するには多くの努力と費用がかかることを肝に命じなければならないと感じました。そして、必ず机上でもデスクトップ・ウォークスルーなどの設計テストをする必要があり、スタッフのマニュアルづくりに役立つ、ボディーストーミング(実践的テスト)の必要も感じました。

この記事を書いた人:大本 あかね

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント

著書
ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン
Google Search Consoleの教科書

毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。
UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう!

スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「効果のあるUXを」です。