UXデザイナーとして、私たちはユーザーの生活シーンを「ジャーニーマップ」に書き出し、課題を可視化するのが得意です。そこで、近年注目されている「103万円の壁問題」についても、対象者のライフタイム(人生の全体像)を考え直すことで、解決の糸口が見えるのではないかと考えました。
政治の専門家ではないのでアイデアに不足や甘さがあるかもしれませんが、このアプローチが日本社会をより良くする一助となれば幸いです。また、ジャーニーマップが問題解決の有効なツールであることも示したいと思い、この記事を書くことにしました。
103万円問題の現状と課題
「103万円の壁」とは、年収が103万円を超えると扶養控除から外れ、所得税が発生する仕組みを指します。この壁を取り払うため、政府は150~170万円に引き上げる案を提示していますが、それには税収減の懸念があります。すぐに実施するのは難しく、2025年以降への延期が議論されています。
税収減は確かに問題です。ただ、多くの人がこの問題に対して不満を抱くのは、税金の使い道が見えにくく、納税が「取られる」と感じられるからではないでしょうか。透明性の向上や心理的負担の軽減を図る取り組みも必要ですが、それは別の機会に述べるとして、ここでは「壁」を感じる人々に焦点を当てます。
103万円の壁を感じるのはどんな人?
この問題が直接影響を与えるのは、主に以下のような人々です:
- 学生のアルバイト
- 扶養内で働くパートタイマー
彼らは、103万円を超えると扶養から外れ、税負担が増えるため、働く意欲を抑えられることがあります。しかし、これらの状況は一生続くものではありません。
例えば:
- 学生の場合、アルバイトをしている期間は数年から8年程度。
- パートタイマーの場合、結婚・子育てのライフステージに合わせた働き方をしており、103万円の壁を感じるのは主に20年程度。
ライフタイムを見据えた解決策
対象者のライフステージを踏まえた柔軟な対応が必要です。
例えば以下のような条件付きの施策を考えられます:
- 申請制を導入
前年の収入が103万円を超える場合は対象外とし、免税措置(扶養控除)が必要な場合は申請する仕組みを設ける。 - 免税期間を限定
扶養控除の適用を、最大20年間など、特定の期間に限定する。
現在は、基礎控除として働いている人全員が対象になっていますが、上記のような条件をつけることにより、壁の影響を受ける対象者を絞り込み、税収への影響を最小限に抑えることが可能になります。
問題解決の基本に立ち返る
どのような課題にも「完璧な正解」を見つけるのは難しいものです。この問題も例外ではありません。重要なのは、本質的な問題が何かを見極め、小さな実行可能な施策から進めることです。
特に政治のように多くの人々に影響を与える分野では、慎重なルール変更が必要です。柔軟な視点と試行錯誤を通じて、103万円問題の解決に近づけるのではないでしょうか。
今回はライフタイム(ジャーニーマップ)で対象者を明らかにすることができました。問題の発生は人に関わっています。人に関わることを可視化して問題解決に役立てていきましょう。
余談
103万円の壁について理解がすすむ動画ありましたのでご紹介します。