毎月開催されるUX DAYS TOKYOの読書会に毎回参加していますが、せっかく読んだ書籍の内容を1ヶ月も経たないうちに忘れてしまうことがあります。そんな時、UX DAYS TOKYOオーガナイザーの大本さんから「ビジュアルでアウトプットすればより考えが深まり、記憶にも残りやすい」とアドバイスをいただき、実際に試してみたところ大きな効果を感じましたので、ご紹介します。
ビジュアル化は効果的な学習法
書籍「 1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の読書会で大本さんがビジュアル化したスケッチを見せていただきました。そこには、コーチであるビル・キャンベルの似顔絵と彼の言葉が描かれていました。書籍は文字で構成されているため、テキストだけでは印象が薄く、理解も浅くなりがちです。内容を整理しイラストで視覚的にまとめることで、複雑になりがちな内容も理解することができます。
比較するために、上記のメモをテキスト表現だけにしてみました。
テキストだけでは、誰の発言なのか、どの部分が大事なのか、パッとみても内容をすぐに理解できないのではないでしょうか?
歴史も漫画で読めば理解しやすい
学生の頃に学ぶ歴史も、教科書の文字ばかりを読んでいては理解が難しいことがあったと思います。しかし、漫画を通じて人物像や背景がわかると、理解が進み記憶に残るという経験をされた方も多いはずです。
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大本さんも、お兄さんが描いたイラストでまとめられた日本史の学習ノートを見て覚えることで、成績が向上したそうです。
世界のUXerも実践するビジュアル・シンキング
UX DAYS TOKYO 2024で登壇されたエヴァ・ロッタ・ラム氏は、「ビジュアル・シンキング」の専門家として知られる著名なUXerです。ビジュアル・シンキングとは、描くことによって「理解」「思考」「効果的なコミュニケーション」を引き出す方法であり、海外で高く評価されています。
エヴァ氏のスケッチ 引用元:evalotta.net
大手クライアントにデザインやコーチングを提供するコンサルティング会社を経営するジェイソン・メスット氏のワークショップにも参加しましたが、彼も受講者との説明や会話にビジュアルを活用していました。世界で活躍するUXerたちも、ビジュアル化を実践しているんですね!
理解を深めるビジュアル化の3つの効果
ビジュアル・シンキングをやってみると、書籍の内容を深く理解できるようになり、記憶に残りやすいことを実感しました。ビジュアル化の効果は「描くために理解する」「関連付けて理解が深まる」「俯瞰して思考の整理やあらたな視点が生まれる」の3つが大きな要因だったと感じています。
◼︎ ビジュアル化の3つの効果 ・描くために理解する ・関連付けて理解が深まる ・俯瞰して思考の整理やあらたな視点が生まれる |
1)描くために理解する
書籍で紹介された具体例をスケッチ(ビジュアル化)しようと思ったとき、読んだだけでは内容を十分に理解していないことに気づきました。頭のどこかで「具体例は重要ではない」と勝手に判断し、流し読みをしていたのです。具体例を丁寧に読み直し、スケッチすることで、重要な言葉や文脈をより深く理解できるようになりました。
「情動システム」の具体例をビジュアル化したら理解が深まった
下記の図は、「より良い世界のためのデザイン」読書会で描いたスケッチです。書籍では、危険な状況でも目の前の利益を優先してしまう「情動システム」が紹介されています。
具体例として、スキューバーダイバーのエピソードが挙げられています。ダイビング中に危険な状況に陥り、すぐに水面に上がる必要があるにもかかわらず、ウェイトベルトが高価なために捨てる決断ができずに命を落とすという話です。情動システムという言葉だけでは理解しにくくても、具体例がイラストで説明されるとスムーズに理解できるようになります。
2)関連付けによって理解が深まる
ビジュアル化が思考を深めるもうひとつの理由は、書き出したものを後から関連付けることができるからです。頭の中でわかったつもりでも、ビジュアルとビジュアルに矢印を引くことで、親子関係や時系列、対立・反対の意味などを整理できます。
これを文字だけのメモと比較してみると、テキストメモは上から下に順番に書き連ねるため、関連付けたい箇所が遠い場合には長い線を引くことになり、見づらくなります。また、ページをまたがることが多く、つなげるのが難しいこともあります。
ビジュアル化はテキストとは異なり、必ずしも時系列に沿って書く必要はありません。まずは上下左右にスペースを空けて書き始め、その後、関連のある図の近くにスケッチを追加していくことで、情報を自由に関連付けることができ、理解が深まります。
実際に関連付けしてみたら、意味を深く理解できた
書籍「最善のリサーチ」では、「リサーチャーは判断を間違える」と紹介されています。その理由は、ユーザーが本当のことを伝えられないからです。この点は、別の段落で述べられていた内容と関係していることが理解できました。
3)俯瞰することで、思考の整理やあらたな視点が生まれる
写真のように記憶する「フォトグラフィックメモリー」が存在するように、視覚による記憶は他の情報よりも残りやすく、認識しやすい特徴があります。メモを俯瞰して見ることで、全体像を即座に把握し、新しい視点に気づくことができます。
ミーティングも俯瞰することで整理できる
ミーティングでも、ビジュアル化を取り入れて進行しました。終了時には、話し合った内容を俯瞰して振り返ることで、新たな視点での気づきを得ることができました。
できる範囲でやってみるのがオススメ
エヴァ氏は、ビジュアル化で最も大切なのは「気にしすぎない」ことだと述べています。イラストに自信がなくても、完璧に描く必要はありません。まずは、言葉を丸で囲んだり、矢印でつなげたりするシンプルな方法から始めてみましょう。
文章のメモとは異なり、ビジュアルメモは見直しが容易で、復習もしやすく、より記憶に残りやすいと感じています。ぜひ、このビジュアルの強みを活用してみてください。