UX DAYS TOKYOが行なっている定期ワークショップの一つ「セルフユーザビリティテスト検定講座」では、始まる前に参加者からアンケートを取っています。
「どの案件にもユーザビリティテストは実施していますか?」という設問に対して「いいえ、やったことがない」という回答が、なんと、半数以上!「たまにやっている」「案件の予算がついたらやっている」という回答が40%以上で、テストを行っていないという回答が大半でした。
気になったのが、「予算がついたらやっている」という回答です。
ユーザーの声が重視される今の時代、ビジネスを成長させるためには、UXの改善は必要不可欠です。ところが、UXの必要性を理解しつつも、アンケートからUXに取り組めていないのが現状です。
UXを実施するには時間とお金が必要です。そのため、「予算がないとできない。」と考えがちです。
なぜ、UXのために予算をつけられないプロジェクトが存在してしまうのでしょうか?それは、UXの価値を理解していないからです。
ユーザーの信頼を得ることがビジネスの成長につながる
UXを実施するのにも関わらず、なぜか、ユーザー獲得や売上向上など「企業が得られる価値は何か」を最初に考える人がいます。しかし、本来最初に考えるべきは「ユーザーが得られる価値は何か」です。
UX改善は、ユーザーが目的を達成できるように、サービスを成長させることです。だからこそ、UXデザインは必ずリサーチを行い、ユーザーニーズを特定する必要があります。
Googleが成長を続けている理由は、ユーザーにとって価値あるものを提供しているからです。「自分たちにとって必要だ」とユーザーがサービスに価値を感じて使い続けることで、企業に対する信頼が生まれ、社員や顧客が企業に抱くポジティブな気持ち「感情的資産」が向上します。感情的資産は、経営における重要な資産として注目されています。
企業がユーザーの信頼を得るために、UXデザインは必要です。ユーザーの満足度が高まれば、売上が伸びて、結果としてステークホルダーが価値を得られます。
枝葉末節の改善だけでは効果が出ない
「UIの簡単な改修はすぐにできるから、予算はつけなくてもいい」と言う人もいますが、表面的な改善を繰り返していくだけでは意味がありません。
改善策を考える前に、ユーザーが抱えている課題をリサーチする必要があります。そして、自分たちが行なった改善が正しいかどうか、検証を必ず行います。
「こんなUIなら使いやすいだろう」「こんな機能があったら使ってくれる」と、自分たちの想像で進めていては、本当に価値ある改善になりません。
リサーチや検証にコストをかけないと、何が求められていて、次に何をすべきなのか分からなくなります。目隠し状態で改善を進めていても効果が出ず、結果として「UXは効果が出ない」という結論になり、さらに予算が削られます。
UX改善に必要な工程を先に見積もる
プロジェクトを立ち上げる時には、必ずリサーチやテストの工程を組み込んでおきましょう。「本当にユーザーが求めているものは何か」を知るためのリサーチを行い、仮説を立てます。
リサーチせずに新機能を開発しても、ユーザーに求められていなかった場合、単純に機能が多くなっただけで、提供する価値は変わらず作り損となります。
必要以上に機能が増えてしまうフィーチャー・クリープに陥り、ユーザーにとって使いづらいものになっては、元も子もありません。
自分たちの仮説が、ユーザーのニーズを満たせているか確認するテストも必要です。
テストを行わずに新機能をユーザーへ提供した後で、課題が見つかっても手遅れです。ユーザーが「使えない」と感じれば、サービスに対する信頼が無くなり、ひいては企業に対する信頼も無くなります。
リサーチで得られたユーザーの声を元に仮説を立てて、テストすることは、UXデザインにおいて必要不可欠です。ユーザーにとって本当に価値あるものを提供していきましょう。
予算がなくてもできることはある
UXが大切だと理解していても、やはり予算がつけられない場合もあります。「予算がないからできません」ではなく「予算がなくてもできることは何か?」と考えてみてください。
例えば、当たり前に使える状態か確認する、ユーザビリティテストであれば、お金をかけずに短い時間でテストできます。私たちが開催しているセルフユーザビリティテスト検定講座では、1人でも行えるテスト方法を紹介しています。他にもアンケートを作って、ユーザーに有志で回答してもらえば、人件費以外のコストをかけずにリサーチが行えます。
多額のコストをかけなくてもUXを改善することはできます。改善から得た効果を見える化して組織内で共有すれば、次のプロジェクトではUX改善の予算を組むことができます。
小さく始めるユーザビリティテストMVP
最初から大きくUXを始める必要はありません。ひとりで行うユーザビリティテストのように、小さく、できるところから始めることが大切です。テストを行なって、ユーザーに価値を提供できているかどうか、細かく確認することもできます。まさにユーザビリティテストMVPと言えるでしょう。UXは「できるか、できないか」で考えるのではなく「やれることは何か」と考え、前向きな姿勢で取り組みましょう。