TOP 組織・ファシリテーション 関係者全員の理解がないとUX設計が無駄になる

関係者全員の理解がないとUX設計が無駄になる

こんにちは。UX DAYS TOKYO(以下、UXDT)のスタッフ中井です。

UXDTのスタッフでは勉強会を行っています。スタッフの中には、会社員やフリーランス、大学生の有志が集まっています。勉強会で話題になったテーマが「UX設計を行うときには、プロジェクトに関わるチーム全体で共通認識を持つ必要がある」という内容です。

2017年12月に実施したワークショップ「UXガイドライン作成の心得」は、まさにこのテーマを取り扱ったものでした(以降も不定期に開催予定です)。

では、なぜ共通認識を持つことが大切なのか、実際にUXDTの勉強会内で出てきた事例をもとに考えてみたいと思います。

Google主催のあるイベントでの体験

あるスタッフがGoogleのイベントに参加をして体験したことです。

Google主催のイベントに公式サイト経由で申し込みを行いました。そこにGoogleカレンダーへの追加ボタンが設置されており、それを利用しましたが、カレンダーに追加された情報は下記の3つのみでした。

  1. イベント名
  2. 開催日
  3. 説明文(テキストのみ)
実際のカレンダー追加画面

実際のカレンダー追加画面

申し込み完了後に受信したイベント案内メールにイベントのサイトURLが記載されていましたが、リンク先はイベント会場や日時が書かれている詳細ページではなく、イベントの意義や概要の書かれているトップページになっていました。そして、トップページからは、イベント詳細ページに遷移するのが難しいUIになっていました。

ユーザー目線で考えてみると不足情報が多い

さて、皆さん。この状況の中で、おや?と思われる点があるので、一緒に考えてみましょう!実際にイベント当日に会場に向かうシチュエーションを思い浮かべてみてください。

イベントの開催場所を知るために、まずはGoogleカレンダーに登録しておいた情報を見ると思います。開催場所の詳細は申し込み時点では覚えていないことが多いですし、今自分がいる場所からの行き方(交通機関)も調べたい、となりますよね。

しかし、今回のイベントページから同期をしたカレンダー情報の中には、開催場所が含まれていませんでした。さらに、カレンダーに同期されていた説明文の中にもリンク等は一切含まれていません。イベントに申し込みをしたスタッフも、このカレンダー情報からは会場に辿り着くことが出来ませんでした。

カレンダーが使えないでの、次にイベント案内メールになると思います。実際にスタッフもそのような順序を辿り、メールに記載されていたURLからイベントページに行き、開催場所を探しました。

上記にも書いた通り、そのページには開催場所の情報が一切なかったのです。しかも、案内メールではスピーカー変更との案内でしたが、その内容も一切見当たらず困惑してしまったそうです。

案内メールから遷移したイベントトップページ

案内メールから遷移したイベントトップページ:開催場所、イベントカリキュラム情報の記載がない

スタッフは以前Googleのオフィスに行ったことがあったため、なんとか会場に着いたものの建物の入り口から会場までの間に看板等案内は一切なく、分からなくなってしまったスタッフは、止む無くインフォメーションに立ち寄ったそうです。イベントサイト上にも何階で開催するのか、会場となるホール等詳細の案内はありませんでした。

結果として、今回のGoogleのイベントでは開催側が案内している情報からは、参加者が本当に必要としている情報には辿り着けない状態になっていました。ここから、イベント開催者側でのWEB上での参加者募集からイベント当日の誘導までのUX設計が、適切に出来ていなかったことが推測されます。

イベント運営側でのUXが実行されなかった

Googleカレンダー自体はユーザーのタスクをしっかりと理解をしており、カレンダー追加ボタンのタグやURL発行の際には、作成者がカレンダーに記載した内容をそのままパラメータに書き出してくれます。

しかし、今回のイベントページを作成した運営側は、その仕組みを知らなかったのか、もしくは必要ないと感じたのか、いずれにしても使用していませんでした。ほんの少しのことですが、この「運営サイドでUXの実装がされていなかった」ことにより、ユーザーに望ましい体験をさせることが出来なかったのです。

今回の件で、Googleカレンダーそのものを設計・制作したチームがUX設計を入念に行い優れたUIを用意したとしても、そのサービスを運用する側にも同じ意識がないと設計どおりのUXは提供できない場合があることに気付かされました。

言い換えれば、どんなにしっかりとUXが考えられたサービス、システム、機能であっても、それを使い提供する側もUXを把握して設定することを行わないと、エンドユーザー(最終的な利用者)は“良いUX”を得ることが出来ないということです。

UXを利用者体験の末端まで浸透させるには

サービスやシステム、機能を作成した側が利用する側にも自分たちが考えているUX設計を浸透させることは、実務的に難しいところがあるかもしれません。しかしながら、今回のGoogleのイベントで起きたように、イベント運用ベースでUXが利用されないと最終的に「UX設計通りの体験が提供できた」とは言えなくなってしまいます。

現在、様々なUXに関する手法やフレームワークが世の中に出回っていますが、それらに該当しない今回のようなケースは見落とされがちに感じます。繰り返しますが、どんなに優れたUX設計でも、”最終的な利用者”がそれを体験できなければ意味をなさなくなってしまいます。UXは、誰か一人が理解している状態では本来は良くないのです。

それを回避するためには、UX設計者だけではなく、サービス等の利用者や実務実行者までを含めた意識統一を行うことが大切になってきます。前述したUXDTのワークショップ「ガイドラインの作成と心得」でも触れているのですが、意識統一を行うためにUXに関するガイドラインを作成するということが重要になってくるのではないでしょうか。

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