ユーザーの声はわかっているが…
UXDTでは、定期的にユーザビリティテスト検定講座を開催しています。ユーザビリティテスト(UT)の有効性として、あるWebサイトを見て、UTをやらない事が、どれだけもったいないことなのか。を理解してもらいます。実サイトを見ているので、ご自身の現場にもあてはまる。と感じてもらえるのですが、一方で、「ユーザーの声はわかるけど優先順位が先にならない」と言う方がいます。
内情は外からだとわからない
その後、続くアドバイスをしたのですが、“外の方なので(理解できない)。”と、境界線を引かれました。コンサルタントが良く言われる言葉です。
その方が言うのは、“簡単にはできない。影響範囲が大きい”という理由で優先順位が下がる、後回しにするということでした。私からすれば、この言葉は逃げでしかありません。
やはり、ビジネスには「思考」が大切です。そして、考え方に影響を与える「言葉」は非常に大切です。私は、上記の言葉から前向きに感じることはできませんでした。
組織ではネガティブ発言はNG
ネガティブな言動は、自分でも気がつかないうちに使っていることがあります。そして、そのネガティブな言葉が、自分の行動をも変えてしまっていることがあります。
例えば、以下のような言葉を、無意識に使っていませんか?
- (言い訳)****できない
- ****(失敗)しちゃうかも
- ダメだ。(否定的)
言葉は伝導するので、組織にも影響を与えてしまいます。頭で思ったとしても、仕事やチームでは、言葉に出しては駄目(NG)です。
“簡単にはできない。影響範囲が大きい”という現実があったとしても、影響範囲はどこまでなのか?いつまでにできるのか?誰が影響するのか?具体的に何日(何時間)でできるのか?など、実現できることを前提に考えるべきです。それが例え1ヶ月かかったとしても、1ヶ月後というゴールは見える訳です。
闇雲に「できない」と放置していては何の改善にもなりません。もちろん、優先順位もありますが、優先順位が低くてもできない理由にはなりません。今回は割愛しますが、適切な優先順位をつけることも大切になってきます。
仕事ができる人とできない人
組織の仕事の進捗も、中に居る人の働きで決定されます。いわゆる個人の作業スピードが、最終的に組織のスピードになると言っても良いでしょう。
いろいろな方と仕事をしていると「この人はできるな」と思うことがありますが、仕事ができる人は、往々に“仕事が早い”という印象があります。
もちろん、作業が早いことが全部ではないですが、早いことは自分が仕事をするうえでもメリットが大きいのではないかと、感じることもあります。
早いだけで仕事ができる人に思われる

お気に入りが7000以上の人気記事:仕事が早い人=仕事ができる人
NEVERまとめでも、「仕事が早い人=仕事がデキる人!仕事が早い人に共通する10の特徴」の記事があり、人気です。
この記事によると、仕事が早い人の共通点は10個あるとのことです。
- デスクなどが整理整頓されている
- メールなどのレスポンスが早い
- 目標(ゴール)から逆算して作業を組み立てる
- 仕事・作業の優先順位がはっきりしている
- 期限を決めて仕事・作業をしている
- 仕事・作業の進捗管理がきちんとできる
- 完璧主義ではない
- 仕事を断る事ができる
- 頼み上手
- 仕事・作業全体を俯瞰して見ることができる
どれも当たっているので「なるほど!」と思うことばかりですが、実行するには「心得(マインド)」が要になります。
早く仕事を行ううえでの心得(マインド)
人の作業時間・効率は、基本的に変わるものではありません。しかし、同じタスクでも、人によってスピードも出来も変わっていきます。そこで、少しでも早く・良く終えるための思考ポイントをまとめてみました。
早く・良く終えるための思考ポイント
- 難しく考えない、わかることだけやる
- できることはすぐにやる・丁寧にしすぎない
- 本質の問題を見る(言い訳・モノやツールのせいにしない)
- 自分を信じる・自分に言い訳しない
- 自分を大切にする
難しく考えない、わかることだけやる
仕事をお願いすると難しく考えてしまい、作業を後回しにする方がいます。一方、始めることでその作業の8割方が終わったと言う方もいますが、その方々には仕事が早い印象を持ちます。まずは始めてしまいましょう!
はじめから完璧にしようとする方は、この傾向に陥りがちです。まずは、いつまでにどのくらいできそうかの目処を、簡単に考えましょう。早く取り掛かることで、問題や壁に早く当たるので、完璧になることも早くなります。
できることはすぐにやる・丁寧にしすぎない
すぐ終わることは、優先順位が低くてもすぐに終えてしまいましょう。終わらないタスクはツァイガルニク効果で、いつまでも記憶に残ります。
人が一時的に記憶できる記憶量は限られているため、タスクをいくつも同時に持つと、どうしても各タスクに集中して取り組みにくくなり、効率が落ちることになります。最終的に、自分はできない人間なんだと自信を持つことができなくなり、チャレンジすることもしなくなるそうです。
返事は1秒でも早く
できることは、すぐにやりましょう。例えば、レスポンスは見たら直ぐに返事をする鉄則をします。
クライアントからのメールも、すぐに対応できないものであれば、「後で見ておきます。」などの返事だけでもまずは行うようにします。特に、オンラインでの仕事が一般的になっている場合、リアクションは凄く重要になります。
作業をした方が早い場合は、返信より作業を優先する
ただし、全ての内容に一々返事するのも受け取る側も面倒です。常に連絡をし合うなかで、何をしているのか互いに理解できているようであれば、返事をまとめることで仕事が早くなります。そうでないと、返事をすることが仕事になってしまい本末転倒です。
同種のUXイベントを行っている企業と、イベント情報を互いに紹介するメディアスポンサーを締結したことがあるのですが、待てど暮らせど、メールマガジンの配信をした形跡がありませんでした。
催促をすると、凄く丁寧な文章で「誠に申し訳ございません、いろいろとタスクが重なってしまって・・・・・・・・・」と長文のメールが続きます。
しかも、そのメールの返事も1〜2日経ってから到着するので、“郵便か?”と感じてしまったくらいです。この長文のメールを打っているくらいなら、テンプレートを渡しているので、配信を先にお願いできないのか?と感じてしまいました。(簡単にメールマガジンは発行できるものではなく慎重にすべきですが、配信が遅くなれば、結果的に早割のタイミングを逃すなど、受信者にとってもあまりメリットがないメールマガジンになってしまいます)
時間をかけるべきものに時間をかけよう
15~30分程度の仕事であれば、優先度が高くなくても行ってしまいましょう。自分では「そんなに時間をかけていないだろう」と思っている、メールの返信やSNSチェックには、以外と時間を奪われていることが多くあります。
本当に重要なメールの返信なのか?時間を使ってまでSNSに書き込む内容なのか?考えて行動をすると良いです。たまに、SNSで「めちゃくちゃ忙しいですが。」と書き込みしている人を見ると、「書き込みできるじゃん。本当に時間を作るのが下手だな」と思います。忙しい、タスクが溜まっている、というのは、後回しにして塩漬けにしているだけかもしれません。
仕事にも大きく影響するマインド
記事冒頭のユーザビリティテスト検定講座で紹介したサービスの中ページも、(1ヶ月も経たずに)今は改善されています。つまり、そのサービスにとって優先順位が低いものではなかったということです。
講座で紹介したこの問題は、検索サービスにとって致命的な問題であり、且つ、比較的短時間(できる人であれば、フロントエンドのJSで1日もあれば改善できる)内容だったので、優先度が低い、大きな作業だと言われたのが凄く驚きました。これは、上記のマインドに繋がると考えています。
同じ問題に遭遇しても、どのように考えるかで仕事のスピードが変わるのですね。後回しにしたり、責任に巻き込まれないようにする行動は、大手企業のあるあるマインド問題(大企業病)です。
このような問題に何度か遭遇したことがありますが、共通して言えることは、この様な大企業病のマインドチームやプロジェクトはうまく行った試しがないということです。マインドは仕事にも組織(チーム)にも大きく影響します。そして、自分においても。良い思考が身につく環境と習慣を、身に付けていきたいですね。
後回しにする傾向を「現在バイアス」と言います。現在バイアスにかからないような思考を持っていきましょう。