ログインボタンはトップページにあるべきか
CTAの用語を出した時にUX DAYS TOKYOのスタッフがグループのチャットで「ドミノ・ピザのサイトもログインできなくて困っています。」という意見を出しました。早速サイトを見てみたのですが、言われた通りに(CTAである)ログインボタンがありません。
そこにはピザを注文するためのボタンが2つ備わっていました。”ログインしたい。”という気持ちでアクセスするとわかりにくいのですが、自分がピザを注文する時にサイトに訪れたとして見ると、私はそんなに違和感を感じませんでした。
ユーザビリティテストでも良くある開発者思考
UX DAYS TOKYOでは定期的にユーザビリティテスト検定講座を行っています。ここでユーザーになりきってサイトを検証してもらうのですが、参加者は何かしらの開発をしているのでその視点で”ココはコレが良くない。”などを評価してしまう人がいます。ご自身ではヒューリスティック的な評価をしているのかも知れませんが、ユーザビリティテストを実施している時はそのマインドは消す必要があります。
ユーザービリティテストはどこまでユーザーになりきるかが重要になりますが、そのユーザー視点で今回のケースを見てみましょう。
出前でユーザーはすぐにログインする?
私がユーザー視点で考えてみると”注文をしたい”とまず思うので、すぐにログインと言う発想は出てきませんでした。グループ内のユーザーにも何名かインタビューしましたが、まずログインしたい。という要望ではありませんでした。
結果的にはログインするのですが、上記の様に2ページ目でログインボタンが出現したので”出来ない。迷う。”という状態には至りませんでした。
開発者視点に立つと手際良くログインできると便利だと思いダイレクトに操作できるボタンを多くしてしまうことがありますが、もしかしたらこのような考えからかもしれません。
必ず少数意見の理由も聞く
一方、少数意見を聞く必要はないのか!というとそうではありません。もしかしたら、上記のような開発者視点ではなく、ユーザー視点としてそのような感じ方があるかも知れないからです。
そのため、なぜ、必要だと感じるか?をスタッフに聞いてみました。スタッフからの回答は「クーポンの確認です。クーポンがあったら買おうかなあって感じなので、まずはログインしたいんです。」と言うのです。
”なるほど!”と感じました。クーポンを先に見て何を注文するのか決定するので先に見たいという要望です。そうなればログインボタンがトップに必要です。ページ遷移で考えてみても、トップページから2つのボタンがあるのでページ遷移が1ページ少なくて済みます。論理的にはこちらの方が良いと言えます。
会員向けのクーポンがある場合に有効
スタッフが言う様に、会員むけのクーポンがある場合においてはこのデザインも1つの有効な方法だと言えます。
選択があると人は迷う
しかし、会員以外のことも忘れてはいけません!他のユーザーもいるということです。もう一度トップページにログインボタンがあるのが良いのか考えてみましょう。
もしかして、「ログインって何?」って思うユーザーがいる可能性もあります。特にリテラシーの低いユーザーはログインの言葉自体がわからない場合もありますし、必要性がわからないという疑問が出てくることは想定できます。
2つのボタンになると当然選択しなくてはなりません。人によってはこの選択で迷ってしまう可能性が出てくるので、注文・ログインのボタンを1つのボタンで実装するように考えました。
こうなるとページ遷移は増えてしまいますが、ユーザビリティ検定講座でも紹介しているページ遷移が多くてもユーザー心理に負担をかけない方法があるので、まずはトップページでユーザーを迷わせない様に選択肢を作らないボタン1つでの実装が良いと考えています。
この方法は、会員さん向けのクーポンがある場合において有効ではありますが、このようなクーポンサービスがなければ「注文」ボタンだけの実装で良いと考えても問題ないでしょう。そして、この仮説が合っているのかは、ユーザーの行動とアクセス解析をチェックして検証していきましょう。
出前系サイトはトップにログインがない
他の出前系のサイトも検証してみましたが、トップページにログインボタンがないサイトが結構ありました。サービスによって画面も変わることは先程説明しましたが、業界的にもユーザーが一番先に行う行動(注文・購入)をボタン化するのが一般的になっていると言えます。
ユーザーの行動でページが変わる
UX格言でも紹介している「ベストプラクティスを学ぶな!その手法が使えない時点で次の対応ができなくなる」でもあるように業界的にそうだから、ベストがコレ。と当てはまらないことが理解できる事例でもあったと考えています。
バイアスを持たない思考を身につけよ
バイアスはどんな人間にもあります。しかし、いろいろな角度からの思考ができるようになれば、バイアスをできるだけ少ない状態にすることができます。UX DAYS TOKYOのスタッフにはUXに必要な複眼的思考を身につけてもらうために必要な書籍を読んでいただいています。
UXやマーケティングを行う上で、少数意見を取り入れないケースもありますが、少数が悪い訳ではありませんし、それらの意見に耳を傾けるのもUX設計者として必要な要素になります。