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成長するビジネスのメトリクス設計方法を学ぼう

UXデザイナーが学ぶべきメトリクス

定量データだけを見てもビジネスは成功しない

ユーザーの軌跡をメトリクス(数値・指標)として見れる代表的なものは、Googleアナリティクスです。最強のツールではありますが、Googleアナリティクスで取得する定量データだけをビジネスの判断に利用することは非常に危険です。

定量データは事実ですが、ユーザーの本当のニーズや意図を把握しづらいからです。結果を取得できても、理由がわからなければ対策のしようがありません。その数値の中には、ビジネスの成長を測る上では意味をなさない「バニティメトリクス」が含まれ、それを追っているだけにすぎない現場も存在します。

アナリティクスの定量データは軌跡にしか過ぎない

ふくよかな女性

ふくよかな女性

例えば、あるふくよかな女性がダイエットに励んでいるとします。1週間で1kgの減量に成功しました。しかし、彼女は「サプリメントを飲んでいた」「プールに2日間通った」「ボーリングを友達と3時間行った」「2日間だけ夜はダイエット食にした」など、いつもと違うことを行っていました。

つまり、体重が1kg減った原因が何だったのか明確には分かりません。結果として出てくるアナリティクスの定量データは因果関係が見えにくいです。

ダニエル・カーネマンの書籍「ファスト&スロー」の中にも、統計学者のほとんどはデータを読み間違えているとし、小数の法則(サンプル数が少ない場合、偶然が重なって極端な結果になってしまうこと)を提唱しています。結果の数字だけを見て因果関係を特定するのはとても多くの検証を行う必要があるものの、現実的には不可能であり、真の因果関係を見誤ってしまうのです。

ABテストとアクショナブルメトリクス

日本ではABテストで結果を判断することがありますが、その大半が比較対象(UI)の違いを検討しています。

ユーザーの多くは無意識に行動していることが多く、両方のテスト対象を同時期に細かく比較してしまうと設計者は疲弊してしまいます。また、その設計思考でメトリクスを設計しても何をすべきか分からなくなってしまい、間違った使えない調査のため時間を使う事になります。最悪なのは、時間とコストをかけたので、何かしらの結果を出そうとよりバイアスがかかってしまうことです。

UXメトリクスは、ユーザーが目的を達成するための行動に沿って設計します。そして、それを数値化し評価します。上記のダイエットの例で言うと、プールに行くという行動のみに数値を設定します。ある特定の行動だけをメトリクスにすることによって、プールに行っても、浮かんでいただけなのか?1時間泳いだのかを計測するし効果を測ることができます。

見るべきところと観察するべきところが分かれば良い

ダイエットの話と同じで、次のアクションに繋げられる数値化設計(アクショナブルメトリクスの設計)が適切に行えれば、あとは見るべきところを観察すれば良いだけになります。しかし、ダイエットの例とは異なりビジネスでのメトリクス設計は簡単ではありません。

言葉からメトリクスを導き出す

メトリクスを使ってビジネスの成長を測ることはとても重要なことです。自分たち(設計者)の活動が意味があるものか否かを、メトリクスを用いて適宜判断できれば、ビジネスの成長を効率的に伸ばし、最大化させることができます。

UXデザイナーは、「言葉:ストーリーテーリング(ナラティブ)」や「画像」、「数値」の3つを巧みに利用してユーザーの行動を把握して問題を解決しなければなりません。

しかし、UXデザイナーの中には「言葉」や「画像」を扱うことに比べて「数値」を上手に活用できない人がいます。数値を巧みに扱うことができれば、UXがビジネスにおいて重要な要素であることを、ステークホルダーやチームメンバーに理解・共感してもらえます。

UXメトリクスは、ユーザーがどのくらい問題解決できたかを計測することが目的です。

UX DAYS TOKYOが毎月開催している「コンテキストの理解と実践」のワークショップの実習では、以下のストーリーテーリングを用いて、仮にユーザーになってきただき、宿泊施設を探してもらいます。UXデザイナーは以下のようなシナリオから導き出せる行動をUIに落とし込み、そこからメトリクスを設計します。

連休に両親と弟家族の3家族(大人6名/子供3名)で旅行に行こうと企画した。宮城の温泉で、3月9日から10日までの1泊2日の温泉旅行。車は3台利用して高速を使って移動する。
父親は足が不自由で車椅子のため、部屋にお風呂がついているか、家族風呂などの貸切風呂があるといい。できれば、施設はバリアフリーだとうれしい。3家族は別々の部屋だが、食事は一緒が良い。
私達夫婦には小学生の男の子と女の子が1人ずついて、弟夫婦には幼稚園の女の子が一人いる。支払いは、両親の分も含めて弟夫婦と折半するが一度に申込みはしたい。予算は、大人2万円ほど子供は大人の半分くらい。
2月中旬の土日の休みを利用して自宅のタブレットでWebサイトを何軒か見て回っている。

数値化はデザイナーの独りよがりを止める効果がある

ユーザビリティテスト等で、ユーザーがやりたい事や思っていることをある程度検討できますが、本当のユーザーではなく、あくまで仮であり、テストでしかありません。

実際のサイトを使っているユーザーの行動は明らかな事実です。

UXメトリクスを設計すると、ストーリーテーリングから作られた設計が適切なものだったか、ユーザーが正しく理解して操作しているかを確認することができます。数値として計測することで、デザイナーの感覚だけに頼りすぎてしまったり、独りよがりのデザインになることを止めてくれます。UXメトリクスは、開発者視点からユーザー視点へ戻してくれるきっかけになります。

LEAN ANALYTICSでは学びきれない、アクショナブルメトリクス

書籍「LEAN ANALYTICS」

書籍「LEAN ANALYTICS

日本でも「LEAN ANALYTICS」の書籍が話題になり、読まれた方も多くいらっしゃると思います。上記で紹介したアクショナブルメトリクスについても記載があり、とても参考になる素晴らしい書籍です。

後半では、SaaS・メディアサイト等の事例が多く掲載されていますが、同じ業種でも前提があまりにも違うため、参考例を見てもピンと来ない人もいたのではないでしょうか?事例だけを見ても参考になりにくいのがUXメトリクスの難しいところです。

上記の実習例である、旅行の宿泊先を決定するサービスのUXメトリクスを設定するのも簡単ではありません。

成長するビジネスのメトリクス設計方法を学ぼう

UXメトリクスの講師である Kate Rutter氏は、20年以上に渡るデジタルプロダクトの設計を行ってきた経験を活かし、何百の起業家、デザイナー、UXチーム対して、ワークショップを開催し、顧問として助言しています。

Uberをはじめ、グローバル企業の研修実績もあります。直近まで、Tradecraftというスタートアップ向けコンサルティング企業ではUX Track Leadとして、UXのカリキュラムを提供したり、UXの観点でメンターとして支援していました。また、Luxrの共同創業者として活躍したり、超有名コンサルティングファームのAdaptive Path(アメリカ金融大手Capital One傘下)では、副社長兼シニア・プラクティショナーやコンサルティング・リードも務めていました。

ワークショップでは、みなさんが日頃関わっている製品・サービスをテーマに最適なメトリクス設計の考え方を紹介していただきます。書籍では学びきれない実践に即した考え方や視点を学ぶことができるでしょう。

今まで効果が出にくかったり、自分たちのビジネスの成長をどうやって見極めるか判断できなかった、などの課題を感じていたとしたら、次に進むべき道が拓けてくるでしょう。

メトリクスを伸ばすためにインターフェース(UI)をどのように構築すべきなのか計画する「UX Stack」・時間と共にどのように計測すべきか考えるための「Metrics Tracker(メトリクス・トラッカー)」など、彼女のノウハウを手にいれ、ビジネスを成長させていきましょう。

ケイト・ルター氏

ケイト・ルター氏

現在、システムエンジニアとして自社サービスの企画/開発を行なっています。 ユーザーファーストなサービス開発を心がけたいという思いから、UX DAYS TOKYOのスタッフとして活動を始めました。 最近はリサーチスキルを伸ばすために統計学を勉強している。

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