先日の記事でも「UI・UXの違いについてあまり気にしなくてもいいよ。」という内容「UXとUIの比較以上の勉強をしよう」の記事で紹介しましたが、今回は、UIがブランド価値(体験)まで繋がることをご紹介したいと思います。
UI,UX,CX,BXは繋がっている

UX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーが操作する際の体験を指します。UI(ユーザーインターフェース)やVUI(ボイスユーザーインターフェース)などの操作時の体験が中心ですが、それだけではありません。パフォーマンス、スピード、インタラクション、コンテンツ、情報といった、インターフェースとして明確に見えない要素もUXに深く関わっています。
一方、CX(カスタマーエクスペリエンス)は、顧客としての体験全体を設計することを指します。サービスデザインなどは、CXの代表的な概念と言えるでしょう。
では、ユーザー体験を設計するUXなのに、なぜ顧客体験のためのカスタマージャーニーマップ(以下、CJM)を作成するのでしょうか?ユーザージャーニーマップでは不十分なのでしょうか?
結論として、UX設計もCJMで設計する内容と本質的には同じだからです。ジャーニーマップを作成する理由は、ユーザーの心理がコンテキストや前後の状況によって変化するためです。その変化を理解し、適切な体験を設計するためにCJMが活用されるのです。

SNSとクチコミの違い
例えば、旅行先で感動する風景を見て、たくさん写真を撮り、SNSには投稿するのに、クチコミサイトにはなかなか投稿しないことはありませんか?
SNSでは、友人に知らせることができ、リアクションももらえます。一方で、クチコミサイトでは、まず場所を検索し、場合によってはログインが必要になり、その後でようやく投稿できます。
さらに、クチコミ投稿は知り合い向けのカジュアルな文章ではなく、ある程度まとまった情報を書く必要があります。そのため、「後でやろう」と思いがちになり、結局、家に帰ると投稿しないままになってしまいます。この心理的なハードルが、クチコミの投稿数がSNSよりも伸びにくい理由です。
このように、同じ「写真をアップし、感想を書く」という行為でも、クチコミかSNSかによって、ユーザーの心理や行動は変わってしまうのです。
クチコミを増やすためのGoogleの工夫
Googleは、ローカルビジネスのクチコミ件数を増やすためにさまざまな施策を行っています。その一例が、リマインド通知による投稿促進です。



ユーザーの行動履歴を活用
Googleは、検索履歴やフォトのジオタグをもとに、「昨日訪れた場所です」「この場所に行ったことがありますか?」と通知を表示し、クチコミ投稿を促します。ちょうど暇な時間に表示されれば、「書いてみようかな?」という気持ちになりやすくなります。
内的報酬を活用


Googleローカルガイドでは、他のユーザーからのフィードバック(エンゲージメント)によってポイントが付与されます。さらに、クチコミへの「いいね!」が、SNSの「いいね!」と同じように、投稿のモチベーションにつながります。
このように、クチコミ投稿を継続してもらうための仕組みが進化し続けています。今後のローカルビジネスのUIの進化にも注目したいところです。
CX・UX設計におけるCJMの活用
UX設計に「なんで、カスタマーなんだ?」と思うのは当然ですが、先に述べたように、コンテキスト・前後の状況や前提知識で心理が変化します。UX設計にも重要なので、CXで使うCJMが便利なツールとして利用されているのです。
UXがCX・BXにも影響を与える

UX、CX、BX(ブランドエクスペリエンス)の関係は、ぶどうの木に例えられます。
- UX(ユーザー体験)は、ぶどうの「粒」
- CX(顧客体験)は、ぶどうの「房」
- BX(ブランド体験)は、ぶどうの「木」
例えば、小学生の頃の話ですが、ある日、私が学級会の援助を終えて自分の教室に戻ると、担任の先生が突然、私に物を投げつけました。教室が騒がしかったことに対する叱責でしたが、私はその場にいなかったため、思いがけない非難にショックを受けました。
先生は、私が直前まで別の活動をしていたことを知らなかったため、このような行動を取ったのでしょう。しかし、前後のコンテキストを無視して判断されると、人はその相手を信頼しなくなります。この経験から、私はその先生の言うことに耳を傾ける気がなくなってしまいました。
この話をUXに置き換えると、たとえば銀行のオンラインサービスで名義変更をしようとしたときに、どこから手続きを進めればいいのか分からず、何度も同じ情報を入力させられるような体験をしたとします。すると、その銀行に対する評価が下がり、ブランドイメージ(BX)にも悪影響を及ぼします。
UIはBXにもつながる
UI(ユーザーインターフェース)とUXの違いばかりを意識するのではなく、UIが最終的にブランドエクスペリエンス(BX)につながっていることを理解して設計することが重要です。
一度の体験が、ユーザーのブランドに対する印象を大きく左右します。だからこそ、UXの設計をおろそかにすると、CXやBXにも悪影響を及ぼしてしまうのです。