マーケティングとUXは別物

UXはマーケティング手法?

UXDTのグループ勉強会で「私はマーケティングがあって、UXがあると思うのです。」という意見をいただきました。あながち間違ってはいないけど、何か引っかかると数週間悩んでいました。

弊社はUXを8年ほど前から教えているのですが、UXを教えても理解できない、納得されない方が中にいらっしゃいます。それはマーケティングとゴチャゴチャになっているからなのですが、今回もコレと同じだと感じました。

マーケティングも進化して顧客視点やユーザー視点がより重視されるようになってきました。そのためマーケティングのためにユーザー体験がでてきたと考えているようです。実際、UXって最近流行っているけど昔からあったことが言葉が置き換わっていると言う方もいます。

本当に似ているし、もっと言えば同じと捉えても良い場合もあります。しかし、最近感じるのはまずは別物と考えるべきではないかと感じるようになりました。

理由は2つあり、1つはマーケティングと同じで置き換わりと考えることで学ばなくなる。2つ目はマインドセットが異なる。からです。

UXとマーケティングの違い

UXはマーケティング手法というのは間違いで、UXはビジネスのために存在しています。ビジネスとマーケティングとUXの構成図を作成してみました。

マーケテイングとUXはビジネスの上に成り立っていて、マーケティングの上にUXがある訳ではない

イメージ的には上記のように構成され、UXとマーケティングは同じ立場にあると考えています。これを理解していないと従来のマーケティング手法が強くなってしまうケースが続出しています。

UX戦略とは?

少し余談ですが、UXはユーザー体験でしかないので、より明確にビジネスに役立たせるという意味で「UX戦略」という言葉も誕生しています。

書籍「UX戦略」では、『「UXデザイン」+「ビジネス戦略」=UX戦略』と解説しています。また、その書籍にUXの巨匠ジェシー・ジェイムス・ギャレット(Jesse James Garrett)のメンタルモデルの解説にある「エクスペリエンス戦略=ビジネス戦略+UX戦略」も紹介しています。ちょっとややこしい話しなのですが、要はビジネスにはUXが必要ということが伺えます。

少し話しが逸れましたが、ビジネスにはUXは必要で、マーケテイングとは別と捉える必要があります。先ほども説明したのですが、マーケティングのためにある、もしくはマーケティングと同じ。と捉えると、従来の思考をあてはめてしまい、UXをいつまで経っても理解することができません。

別物と認識しないと失敗する

書籍「UX戦略」でも、以下のようにペルソナの利用を間違えていることを指摘しています。

2002年までに、ペルソナはデザイナーの道具箱には〜(略)〜その本来の目的とは無関係に使われることが多くなった。代わりに、レイザーフィッシュやサピエントといった大きな代理店は、クライアントへの調査業務の収益を上げるために利用してきた。本来の目的と異なるペルソナは何のマーケティングデータとも関係のないこまごました固定概念を詰め込んだお粗末な風刺画になっていた。

書籍「UX戦略」P58の引用部分の画像

大手企業でも間違えてしまう

この書籍ではお粗末な風刺画になった結果を記載していますが、なぜレイザーフィッシュやサピエントのような大きなマーケテイング・広告代理店は間違ってしまったのでしょうか?

自分たちでは正しいペルソナを作っていると思っているのに間違ったことをしているのです。その原因は、マーケティングにあるターゲティングのように捉え、マーケティングのターゲットに置き換えて理解してしまったからだと考えられます。

ターゲティングは、マスと相反してユーザーの属性を抽出し、そのターゲットユーザーに合わせたサービスや広告・コンテンツを考えます。この考え方のままペルソナを作成すると、結果として、固定概念が詰まった都合の良いペルソナを作り上げてしまうことになります。しかし、ペルソナは、そうではありません。

関連記事:正しいペルソナについて知りたい方はこちらの記事などを参考にしてください。

日本でもマーケティングで生まれたペルソナと記載している書籍もあり、間違って捉えているのがわかります。

UX vs マーケティングなのか?

マーケティングとUXはビジネス上に成り立っていて、横並びと説明しましたが「マーケティング vs UX」なのでしょうか?

CX(顧客体験)とUX(ユーザー体験)の違い

マーケティングの考えの中に顧客体験(CX)があります。これらとユーザー体験(UX)の違いは顧客というアプローチか人としてのアプローチかの違いで同じことを指します。

「顧客=利益を挙げてくれる人」であり、お金がつきまとってきます。逆にUXは顧客を意識しないアプローチになります。これは大きな違いです。

東洋経済新聞の『「日本車とドイツ車」、デザインの決定的な差』というインタビュー記事を見て「コレだ!」と思いました。

アウディ時代、ワルター(・デ・シルバ)からは日産時代に言われた「売れるクルマをつくれ」というようなことは一度も言われませんでした。(略)

もしも日本メーカーのデザイナーが売れるためならなんだってする”と考えて仕事をしているとしたら、真逆と言いたいです。

東洋経済「「日本車とドイツ車」、デザインの決定的な差」

引用記事:http://toyokeizai.net/articles/-/179917?page=2

UXデザイナーは、売ることを考えてサービスを考えてはいけないのです。売るために作ろうとすると売れるものは作れません。

逆にマーケティングは、経済・市場・競合などの視点が入り、ビジネスに必要不可欠なマインドセットです。

同じ様であり、違うという認識は凄く重要になります。2015年に行なったUXメトリックスのワークショップに参加したディレクター職からUXデザイナーになった方は、UXメトリックスの定義が理解できなかったのですが、それはこういった概念を理解していないからだと感じました。

(注意:アートを作る思考でなく、あくまで商業デザインとしてのデザイン発想)

UXとマーケティング、どちらを優先にするか?

UXとマーケティングの違いと、UXの重要性がわかったところで”どちらを優先するのか?”という問題が発生することがあります。

例えば、よくある問題として

TOPバナーはユーザーにとって邪魔だから取りたいというUXチームと、広告収益があるからバナーは外せないマーケティングチームのコンセンサスです。

UXDTのメンバーからは「UTを行い実証してから それによって離脱がより高まるようなら改善しましょうとUX視点から提案します。広告収益も大事ですので、どういう導線なら楽に見てもらえるかを模索します。」と意見をいただきました。とっても良い対応だと思います。

しかし、TOPのその位置にあることで広告収益になっている場合は簡単にはとったり、位置をずらすことはできません。UXデザイナーの”離脱していたら元もない。”理論は悲しいことに通じないことが多いです。

そこで経営者もマーケターの方もUXを理解してもらう必要があるのですが、TOPバナーに変わる広告案を出す必要が出てきます。(数字として)売上を下げない方法を考えなくてはなりません。その辺りは、マーケティングチーム、UXチームが一緒になって作る必要があります。そして、広告モデルを改善するのです。(簡単に記載していますが、それなりの期間をいくつかのテストをしてクリアしなければなりません。)

収益を優先してUXを無視することはNG

ここで説明したいのは、広告収入があるからと言って、それらがすぐに優先されないということです。”UXを最優先で考える、とは限らない。”と、考えてしまうのは「マーケターの視点」です。UXという肩書を名乗るのであれば、まずは売上を見込まないことを考え、その上でなんとかUXでのアイディアが入らないかを模索するのがUXの肩書がついて良いのだ考えています。(肩書だけの人、多いです。ボソ)

UXデザイナーとは

いろいろな方とUXの肩書ついて話しをすることがあるのですが、UXデザイナーは多角的な視点と柔軟な姿勢、そして、今だけかも知れませんが、UXを啓蒙しなくてはならい役職でもあるため、社内で推し進める根性が必要になってきます。

他業種でも通じるマインドセット

ダウンタウンの松本さんが本音でハシゴ酒 – ダウンタウンなう – フジテレビで「人を笑わすネタの見つけ方はどのようにしていますか?」的な質問をされていたのですが、松本さんは「笑い取ろうしないことが大切」と言っていました。

業界は違いますが、考え方のマインドセットは同じことなのかも知れないと感じました。

連載のご案内

UXを実務化する上で重要なのは「マインドセット」と「視点」です。

現場に取り入れるための「UXの基礎マインドセット」として連載を予定しています。この連載はUX関係の一般的な内容をご紹介するのではなく、より現場に取り入れるための大切な考え方をご紹介予定です。

大本 あかね

この記事を書いた人:大本 あかね

UX DAYS TOKYO を運営してる Web Directions East.LLCの大本です。
カンファレンス運営していますが、毎年行われているUXDTは私自身も学びの場になっています。また、海外のUXカンファレンスにもいくつかいくようになりました。学んだ知識を実践し、勉強会やブログなどでフィードバックしています。UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう。