「UX for AI」のグレッグ・ヌーデルマン(Greg Nudelman)氏のブログ記事の翻訳です。前編から続いています。
原文:https://www.uxforai.com/p/ux-for-ai-guide-to-inventions-and-patents-part-2
AI駆動型デザインプロジェクトにとって、想像力の欠如ほど有害なものはありません。本シリーズでは、著名な科学者や発明家たちが用いた代表的な技法を分解し、それらをどのように自分のAIプロジェクトに応用してブレークスルーを起こせるかを解説します。
著者:グレッグ・ヌーデルマン & ダリア・ケンプカ
2024年11月5日
前編の復習
前編では、過去の4人の発明家と、その手法から学べることを紹介しました。
- アルベルト・アインシュタイン:「知識よりも想像力」
- レオナルド・ダ・ヴィンチ:「想像力を羽ばたかせよ」
- トーマス・エジソン:「速く安く試作し、そして特許を取れ」
- アントニ・ファン・レーウェンフック:「道具は目的達成の手段にすぎない」
今回は続編として、さらに3人の偉人から学びます。
アルキメデス:日常からの着想
シラクサのアルキメデス(Wikipedia)は、入浴中に水の体積変化から王冠の体積を測る方法を発見したとされます。伝説では「ユーレカ!」と叫んで裸で街を走ったと伝えられていますが、実際には『浮体論』で定式化された浮力の原理が真の功績でした。
彼は身近な物や現象──水、鏡、金属、石──を観察することで発想を得ていました。数十億人が入浴してきた歴史の中で、アルキメデスだけが「浮力の原理」を発見できたのです。
UXデザイナーへの教訓:
リラックスしながらも注意深く環境を観察し、遊び心を持って発想を広げること。これ自体が「プロトタイピング」に近い行為です。
ライト兄弟:異なる領域の知識を応用せよ
自転車屋から始まったライト兄弟(Wikipedia)は、最初の動力付き有人飛行を成功させました。本当のブレークスルーは三軸制御システムの発明で、これは現代の航空機にも標準として使われています。
彼らは自転車の「バランス感覚」を飛行制御に応用し、限られた資金と無名の立場を逆手に取り、失敗を繰り返しながら改良を重ねました。
UXデザイナーへの教訓:
- 別領域の学びを応用すること
- 失敗を恐れないこと
- 限られたリソースをむしろ武器にすること
- 小さくても多くの実験を繰り返すこと
- 仲間と協力すること
関連記事: Staying Lean, Avoid These 5 Pitfalls, How to Pick an AI Use Case
ジョン・スノウ:測定せよ、そして行動せよ
ジョン・スノウ(Wikipedia)は1854年のロンドン・コレラ流行(Broad Street Cholera Outbreak)の際、徹底的な聞き取りと調査を行い、感染源を特定しました。彼は「ブロード・ストリートの井戸の取っ手を外す」ように説得し、感染拡大を止めたのです。
これが疫学の誕生です。
UXデザイナーへの教訓:
- 測定を怠らず、数値で説得力を持たせること
- データサイエンスの基礎(精度・再現率・適合率)を理解し、トレードオフを語れること
- 顧客インタビューと数値を組み合わせて「説得力ある証拠」を示すこと
参考: Digital Twin, Value Matrix
結論:巨人の肩の上に立つ
AI駆動型プロダクトをデザインする私たちは、偉大な発明家たちの知恵の延長線上にいます。
- アインシュタイン:想像力を持て
- ダ・ヴィンチ:大胆に挑戦せよ
- エジソン:速く失敗し、学び、特許を取れ
- レーウェンフック:道具に縛られるな
- アルキメデス:日常から着想を得よ
- ライト兄弟:実験を繰り返し、現実と結びつけよ
- ジョン・スノウ:測定と証拠で説得せよ
今度はあなたの番です。この美しき世界のために、あなたは何を発明しますか?
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