私たちUXデザイナーは、UX設計を行っています。同様に、マーケティングチームは顧客体験を良くし、ブランド戦略部では、企業のブランド価値も上げる仕事をしています。部署ごとに異なる仕事でなく、一貫して行う必要性もあり、それらを通してUXデザイナーは部署横断型のコンサルティング的な仕事も担っています。
プロダクトマネージャーのスキルセットとしてもUXが必要だと言われています。UXを学ぼうとするのは良いことですが、一方で、ビジネス要件を扱うPdMは、UXは企業視点やビジネスとのバランスが重要であるという考えが蔓延していていて、捉え方を間違えてしまうと危険だと思い記事にしました。
UXとビジネスを天秤にかける考え方
UXは企業視点やビジネスとのバランスが重要であるという考えに基づいた発言は以下のようなものがあります。
「UXの考え方は好きだけど、ビジネス的にね。」
「UXは理想論だよ。」
「ユーザーの意見より、情報設計が重要。」
「ユーザー体験が良くても、売上が上がらなければ意味がない。」
「ユーザー体験とビジネスのバランスが重要。」
これらの声からも「UX vs ビジネス」という対立構造を持ってしまっています。しかし、この考え方は本質的に誤っています。
UXは、ビジネスの根源である「人」を深く理解するためのアプローチであり、天秤にかけるべき対象でも、対立するものでもありません。まずもって、天秤にかけてしまうのが問題です。
UXとビジネスの真の関係
以下の図は、私の考える「UXとプロダクト・ビジネス・ブランド・企業と社会、マーケテイング」との関係です。
この図では、顧客と企業とプロダクトの関係を表しています。
ビジネスの核心にユーザーの成果(アウトカム)が存在し、何遂げたいJobs to be doneがあり、いわゆるUX設計が必要なデジタルプロダクトを中心にした操作する・利用するサービスが存在します。
UX設計のスキルは、操作する瞬間的・短期的な体験だけに留まらず、人生の長期的な体験構造も設計することができます。
企業はプロダクトやソリューションを通じて顧客にサービスを提供し、これらのサービスが顧客体験を形成し、最終的にはブランド価値に繋がります。ただし、この中で重要なことは、顧客とブランドとの信頼関係です。企業はプロダクトやサービスを通して、信頼を構築しています。
UX設計を通じて私たちは、ユーザーのインサイトやアウトカムを明らかにしています。そして、信頼で繋がったサービスやソリューションを提供しなくてはなりません。
「UXは理想」という考えは、実際のユーザーを見ていないことに起因します。ジョブ理論で紹介されている「レンズ」の概念を借りれば、どの職種や役職の方でもUXerとしてユーザーとの信頼関係を意識しながら仕事しなければ信頼を構築するはできません。
つまり、天秤にかけるものではなく、ビジネスの糧を見つける(糧を設計する)のがUX設計になります。より良いUX設計を作り続けることができれば、持続可能なプロダクト開発が可能になります。
(なお北欧では、持続可能なプロダクト開発には、ユーザーだけでなく「地球・環境・生物」を含めての設計が必要だと言われています。)
UXは理想でなくビジネスの糧を知るものであることを覚えておきましょう。
少しのズレが大きくマインドを変えてしまう
企業内には、先に述べたようなUX とビジネスを天秤にかけてしまう視点を持つ人が少なからずいます。
もしかしたら、自分の中にもそのように考えてしまっている人もいるのではないでしょうか。
ビジネスを継続するには利益も必要です。しかし、その利益先行の企業マインドを先行にしてしまうと少しずつズレが発生します。凄く細かい考え方の違いに思えてしまうかもしれませんが、とっても重要な内容です。ちゃんと認識しておきましょう。