Capital OneによるAdaptive Pathの買収は、クライアントとUX企業の両者にとって大ニュースである。このニュースは、ユーザー中心設計が、戦略的事業レベルで重要であることを意味している。
サンフランシスコでは、デザイン会社がハイテク企業に買収されるのはよくある話になっていて、テクノロジーとデザイン思考の間には、はっきりとした相乗効果がある。
昨年、FacebookがHot Studioを買収したことを覚えているだろうか?
より風変わりな話では、つい最近、ロードアイランド造形大学の学長ジョン・マエダが、ベンチャーキャピタル会社クライナー・パーキンスの最初のデザイン・パートナーなるために辞任した。おそらく彼は、この会社が資金提供する新規事業に対し、ビジョン提供を手伝うのだろう。
だが、銀行がUX企業を買収するというのはちょっと以外である。UXデザインの旗を掲げて生計を立てている私たちのような人々にとって、Capital Oneによる著名なUXコンサルタント会社Adaptive Pathの買収は、数多くの疑問を投げ掛けるものである。
名声を確立した銀行が、優れたUXデザイン会社の1つを社内に持ち込むと決めたことは、いったい何を意味するのだろうか? UXの1先駆者グループが市場を急に去る動機は何だろうか?
常に変化する分野で、依然として才能を売り込まなくてはならない残された私たちにとって、このことは何を意味するのだろうか?
なぜCapital OneはAdaptive Pathを必要とするのだろうか?
Capital OneによるAdaptive Pathの買収以前でも、この銀行は自社内部のUXとプロダクトデザイングループCapital Oneラボの構築プロセスを開始し、かつてグーグルのデザインイノベーターだったダン・マコスキーに匹敵する人物をCapital Oneのデザイン部長として雇った。
Adaptive Pathの最高制作責任者ジェシー・ジェームス・ギャレットは立場上、買収を告げこう言った。「彼らはすでに下準備をしていました。彼らはデジタルプロダクトデザインやデザイン思考、体験調査や開発において、洗練された方法を築いていました。
ですから、私たちはそれらを生かし、私たち自身の方法とかけ合わせて新しい方法を作ることができます。
だがなぜ単にAdaptive PathをUXコンサルト会社として雇わないのだろうか?
いくつかの理由が考えられるように思われる。
第1に、Capital Oneは自身のプロダクトデザインチームの質を向上させようとしていて、採用に時間を浪費したくないのかもしれない。それよりずっと魅力的なのは、お互いをよく知っていて、一緒に好結果な仕事をしたことがあるチーム全体を連れてくることである。
もう1つの戦略的理由は、UXの才能ある熟練要員を市場から取り除くことで、先週まではAdaptive Pathを頼ることもできた競争相手のスピードを落とせるかもしれない、というものである。
UXの才能を持つ人々の需要が極端に高く供給が低い時にこれが続くと、カリフォルニア美術大学のインタラクションデザインのような、若いUXデザイナーを大量生産するプログラムを推進することになり、そこで学んだデザイナーたちはわれさきにと、たちまち湾岸地区のハイテク企業に採用されることとなる。
Capital Oneの賢明な手だ。チェックメイトは聞こえたかな? 正直なところ、こんな手を使うとは、Capital Oneは恐ろしく賢い企業だと思うし、よい選択をしたことを称賛する。私は銀行を変えることすらやるかもしれない!
しかし、なぜAdaptive Pathは企業内に行くことを望んだのだろうか?
「ある年齢の」ウェブデザイナーは、ギャレットの2002年の著書『ユーザー体験の要素』と、この本がいかに非常に簡潔にユーザー中心設計を定義したかを覚えている。
あの本により、私たちの注意は光に引きつけられた蛾のように、ギャレットが創設した会社へと向けられた。Adaptive Pathは、なんてクールでスマートな会社なんだろう。うーん、始めるなら、もちろんあんな会社を始めたい、と私は独り言を言った。
だが、デザインコンサルタント会社が、大企業金融に組み込まれるのを望むだろうという考えは、コンサルタントの本質に反する。
シリコンバレーの大ハイテク企業に買収されたデジタル会社の元創設者と、私は最近話をした。
彼はこう言った。一番懐かしいのは、助言に耳を傾け、言う必要があったことを心から気に掛けていたクライアントの人々のことであって、企業チームでありきたりの賢い代弁者となることではないと。
こうした垣根の両側で働いた経験のある人ならその違いがわかる。他の企業より、新手法やデザイン思考のサポートがよい企業が存在することは認めざるを得ない。
しかしながら、ウェブチームが企業内に行くというこの傾向が、ここ数年もの間生じていると思い起こすことは重要である。デジタルとプロダクトデザインは今、数多くの「優良」企業にとって、中核となり競争力のある強みだと見なされている。
そして、私は単にハイテク企業グーグルやアップル、Facebookのことを言っているのではない。現在では、Capital Oneのような銀行が、デザインの価値に気づいた。私はこれがAdaptive Pathが銀行の一員になることを選び、そのままで楽しさが満ち、冒険が詰まっている市場を実質的に去った主な理由だと思う。
彼らはUXデザインに関し、活気に満ちたひとつの業界に大変化をもたらす一環となる自然な行程を見て、多くの仕事が必要であることを理解したのだと思う。Capital Oneはよい銀行だが、現在彼らはよりよい銀行になろうとしている。Adaptive Pathは大々的にこの一部になろうとしていて、そう願っている。それは私もだ。
これは残る私たちにとって、何を意味するのだろうか?
単純に言えば、UXコンサルティングは解禁期間にある。私たちは自問せざるをえない。Adaptive Pathと同じ立場となる次のUX企業は誰だろうか?
請求書にUXを掲げるウェブ会社は、街にありあまるほどあるが、集中的かつ専門的なUX業務については、本当に人が足りない。
よく見られるのは、より小さなUXチームの集まりで、新規事業に必要なものを提供している。
だが、Adaptive Pathがもたらしたのは、経験やリーダーシップに関することではない。だからイードのような会社には、真に必要としている会社を引きつける、明らかなチャンスがある。
そして今、Capital Oneのおかげで、金融会社はこれまで以上に、私たちの助けを必要とするだろう。デザイン会社にとっては、何ができるのかを明確に説明すること、そしてもちろん、自身の仕事に雄弁に語らせることが重要となる。そしてこれに関連してここに、私たちがADP向けに行った仕事を紹介する。
Capital OneによるAdaptive Pathの買収は、クライアントとUX企業の両者にとって大ニュースである。これはユーザー中心設計が、本質的には銀行として動く1企業にとって、戦略的事業レベルで重要であることを意味する。そして再び、企業内で大きな意義深い仕事をする方向での変化があることを意味する。
最後に、このことは、1つあるいはそれ以上のUX会社が前に出て、熱心に活動し、ユーザーの役に立つ、有意義な、優れたデザインで先導すると同時に、ビジネスの目的をサポートする大きな責任があることを意味する。何を意味するにしても、とにかくこのことはUXが重要であることを示している。