UX DAYS TOKYOでは月に1度のペースで読書会を開催しています。「参加したいな。」と思っていてもなかなか優先度が上がらず参加を見送っていらっしゃる方もいらっしゃいますので、参加する価値についてご紹介したいと思います。
読書会に参加する最大のメリットは…
どの読書会に参加しても同じメリットはあります。それは、みんなで読むことで理解度があがる、期日が決まっているのでやろうとする、一人では読みきれない書籍を読むことができ積読が減る、です。
しかし、私が一番読書会でメリットだと思うのは、前提知識のある人からの解釈できるようになるということです。
UXDTのスタッフの中にも理解が追いついていない人がいますが、文章は誰が読んでも同じように理解することはできません。それは前提知識があるかないかで理解度が変わるからです。
一般の人が医療関係の書籍を読んでもさっぱり理解できないのはそのためです。書籍「読みの整理学」の中に以下の内容が記載されています。
”難しい記事” 新聞には、そういう記事、つまり、ある程度の知識がなければ、まるで見当もつかないような”難しい”記事が沢山ある。野球のことには精通していて、さきのような記事なら手にとるようにわかると思う読者でも、株式市場のページにかいてあることはまるでわからない。ということはあり得る。 新聞は万人むけのもののように思われているが、理解するには、ある程度の予備知識、常識が必要である。 社会面の市井の事件を報じる記事でさえ、わかるのには、ある程度、現在世相に通じていないといけない。孤島で三十年ひとり暮らしをしていたような人がひょっこり現れて、読んでも、わかるわけがない。 (略) 他方、野球に不案内な人間が、さきの記事をわかろうとすると、一つ一つの言葉にひっかかる。全体像がつかめない。部分の言葉から攻めていく他に手がないのだが、その部分自体がまたわからないことずくめだ。手も足も出なくなって、わかろうとすると、たいへんやっかいなことになる。 |
テキストになると途端に難しくなる
理解が進まないのは、前提知識がないこともありますが、テキスト・活字だけでは捉え方が変わるためです。
感覚が画像で伝えられると理解できるものでも、言葉だけだと理解しにくい例はたくさんあります。
例えば、以下の画像を言葉にするとどうでしょうか?何階建てだとか、現代ぽいとか、白がベースのベランダだけ茶色い、けど、側面は赤、青、黄色、緑と色のバリエーションがあります。また、ベランダの形も違います。何戸あるかも表現しなくてはなりません。このいろいろな情報をすべて言葉にするのも大変ですが、言葉を読んで理解するのもまた大変な作業です。
書籍には図も入っていますが、主にテキストで解説しています。それらの解釈は前提で建築の知識がある人かどうかでこの図のイメージがわくか変わってきます。
学び方は、書籍だけでなくいろいろな方法があります。UXの世界で有名なのはワークショップです。それは、感覚で学ぶことが多いからです。この感覚を言葉だけで学ぼうとすると画像を理解するのと同じで、途端に理解がしにくくなります。
UXで重要な感覚や思考の学びは、ノンバーバル、つまり言葉では表せない表現やインタラクションによる解説で理解できるようになります。同じ空気感で、より感覚を学ぶということですね!
前提知識があるかで理解度が180度変わる
ワークショップもそうですが、講座や授業は先生によって理解度が変わります。説明が分かりやすい先生のいる進学塾は人気ですね。それは理解度が高くなり、難関校にも合格できるからです。
読書会も同じように、知見がある人がいるとその人の解説で理解が進みます。
ここ数年話題になっている「デジタルトランスフォーメーション:略 DX」という言葉も、実はきちんと理解していないという記事やデーターがでていました。そこで、DXについてのディスカッションをしたのですが、記事と同じように、参加者全員が自分の言葉でスマートに解説できていませんでした。つまり理解が100%ではなかったと言えます。
参加してDXについて理解が深まると、自分の仕事はどのように変わっていきべきか。など、現場感で物事を捉えるようになります。これこそが、読書会の本当の価値なのですが、それにさえ気が付かない人もいます。同じ書籍を読んだとしても、前提知識のある人がちょっと言葉を話しただけで理解が進みます。
同じ知識のレベルだけで読み合いっこをしても、「どうなんでしょうかね〜ぇ?」「私がやったことないので。」「○○だと思うんですけど・・・?」という言葉が飛び交うようでは、理解度が上がることは少ないでしょう。
違う立場での意見が聞ける…一方で
UXDTでは、現場でUXを使っている人が参加しているので理解度が上がりやすいです。しかし、参加者全員が同じように解説できるわけではありません。そのため、UXDTでは質疑・ディスカッションを読書会に入れてカバーしています。
ただ、その場で「間違っているよ。」と指摘はなかなかできないですが、違う立場での解釈が聞けます。それが、必ずしも良い意見でない場合でも、思考の流れが見え、何が壁になっているのかを知ることができ、講座の種になっていることもあります。それは私だけでなく、参加する方にも同じような学びになるはずです。
UXをベースにした書籍選定で点と点が繋がる
UXDTの読書会に参加していただいている方はとっても柔軟で、且つ、連続で参加いただいているので、前回の書籍で記載している内容とリンクしていることに気づき、それらも読書会発表の中に組み込んでいただいています。
同じUXをベースに読み込んでいるので、点と点が繋がり、面になってさらなる理解ができるベースができあがっていきます。
また、書籍によって解説方法が異なるので、1つの用語でもいろいろな側面があることも、いくつかの書籍を読み重ねていくメリットです。例えば、プロスペクト理論は、損を取らないという思考ですが、これは金銭だけではなくスポーツにも言えることで、消極的になってしまうのは、プロスペクト理論にかかっていることを知ることができました。
私自身も1つの書籍だけで満足することなく、いろいろな書籍をみんなで読み合い理解を深める場所としてUX DAYS TOKYOの読書会を利用しています。ぜひ、みなさんにも活用いただきたいと考えています。
読書会に参加するメリットと知っておくべきこと(まとめ)
- 発表のため、深く理解しようとする姿勢で読書できる
- 期日があるので、追い込まれて行動になる
- 知見者の話で理解が進む
- 一人では理解できない内容が理解できる
- テキストでの学びは難しいが言葉にされにくい感覚が学べる
- 前提がないと文書を読んで理解することができない(知っておきべきこと)
- 誰もが知見があると思ってはいけない(知っておくべきこと)