
先日、私が通っているスポーツジムで「栄養学セミナーを880円で開催します」という店内アナウンスが流れていました。
「2月23日11時から村田コーチによる栄養学セミナーを880円で開催します。参加者はプロテインを30%オフで購入できます!試飲もあります!」
このアナウンスを聞いて、あなたはどう感じますか?
私は正直、「ああ、プロテインの販売会かな?」と思ってしまいました。栄養について学びたい人も、「結局は買わされるのでは?」と身構えてしまうかもしれません。
たとえプロテイン販売が目的だったとしても、このアナウンスにはいくつかの問題点があります。
❌ 伝わっていない3つのポイント
- セミナーで何が学べるのか不明
参加する理由がはっきりせず、時間を割く価値が伝わりません。 - 栄養学=プロテインの意味が曖昧
プロテインがなぜ必要なのか、誰にとって有効なのかが説明されていません。 - プロテインの価格がわからない
「30%オフ」と言われても、元の値段がわからないとお得感が伝わりません。
たとえば、「通常5,000円のプロテインが、会員割引で750円引きのところ、今回は1,500円オフになります。つまり参加費が実質無料に!」といった説明があれば、すでに飲んでいる人も関心を持つかもしれません。
さらに、こんなPRの仕方なら、参加する価値がもっと伝わります。
- 「実際に味を確かめてから購入できます」
- 「プロテインの効果的な摂取タイミングがわかります」
JTBDの視点が抜けている

スポーツジムに来る人たちの「ジョブ(JTBD)」を理解していないと、セミナーの内容も伝え方も的外れになります。
そもそも高齢者や一般の人にとって、「なぜプロテインを摂る必要があるのか」が説明されていないと、どれだけお得でも参加のハードルは高いままです。
スポーツジムに通う人の根本的なニーズは「健康になりたい」こと。
栄養学セミナーの重要性を伝えたい気持ちもわかりますが、「なぜその人が今、その内容を求めているのか?」という“雇用の理由”を考える必要があります。
有名な「ミルクシェイクの話」に学ぶ、スポーツジムに通う人のJTBD
「ミルクシェイクはなぜ選ばれたのか?」というJTBDの有名な例があります。
アメリカのあるファストフード店で、朝の通勤中に飲まれるものとして、コカ・コーラではなくミルクシェイクが選ばれていたのです。
理由は、「長い通勤時間を退屈せずに過ごせるから」。コーラはすぐに飲み終わってしまうけれど、ミルクシェイクは時間がかかる。その“使い道”が選ばれる理由でした。
同じように、スポーツジムも「健康になる」という目的だけでなく、「身体を動かして汗をかきたい」という“使い道”があります。
その視点で考えると、単なる座学のセミナーでは、ユーザーのジョブを満たせていないのです。
例えば、**「身体を動かしながら学べる、ストレッチ付きの栄養学セミナー」**にすれば、運動する目的も、知識を得る目的も両立できます。
「情に訴える営業」は逆効果
営業トークの中で、インストラクターが「村田さん、一所懸命に資料を作っています!」と何度も話しているのを聞きました。聞き手は、”集客がうまくいっていないのでは!?”と感じてしまいます。
実際、このような言い方だと、「今申し込まなくても、空いていればいつでも受けられそう」と思われてしまい、希少性も価値も感じにくくなります。
UX DAYS TOKYOのセミナーでも、スタッフが「ぜひ!」とすすめてくれることがありますが、私は「情で売る」やり方には慎重になるべきだと思っています。
「ぜひ」という言葉は、相手に“こちらの都合でお願いしている”印象を与えてしまいます。大事なのは、「なぜ相手にとって価値があるのか」を、具体的に、本人の課題や興味に結びつけて伝えることです。
さらに、自分自身がそのセミナーをどう役立てたかを話すことで、相手は自然と判断してくれます。
情に頼らず、ジョブに応えよう
情に訴えることが常に悪いわけではありません。ただ、それは「共感」や「感動」が求められる場面で使うべきです。
セミナーの営業や販売トークでは、感情ではなく「価値」を軸に伝えることが大切です。
「参加することで、どんな課題が解決できるのか?」「どんな“ジョブ”を満たせるのか?」
そこを明確にして、相手が納得して選べるような伝え方を目指しましょう。