「うちはUXやってますよ。」
「ヒューリスティック評価も取り入れてます。」
そう口にするチームや企業は少なくありません。
しかし、その言葉の裏に「ユーザー不在」が潜んでいることがあります。
UX設計の出発点はユーザーリサーチ
UX設計で最初に必要なのは、ユーザーリサーチです。
そして、ユーザビリティテストでも必ず「ユーザー自身」が操作し、体験を通じて検証します。
つまり、UXとは最初から最後まで「ユーザー抜きには成立しないプロセス」です。
ところが現実には、リサーチもせず、ユーザビリティテストも行わずに「UXやってます」と言うプロダクトが数多くあります。その結果、アジャイル開発を名乗っていても実態は「ただの早回し開発」。完成した頃には市場のニーズからズレてしまっている、という事例も珍しくありません。
「自分たちはプロ」という思い込みの落とし穴
なぜこうした事態に陥るのでしょうか。
背景には「自分たちはプロだから分かっている」という思い込みがあります。
本当のプロとは何か。
それはユーザーを調査し、ユーザーが感じること・欲しいものを丁寧に読み取る人です。決してユーザー調査をおろそかにしません。
一方で、思い込みにとらわれたチームは「プロダクトイン」「ヒューリスティック評価」という言葉を履き違え、ユーザー不在のままプロダクトを進めてしまいます。「プロが作れば良いものができる」と過信してしまうのです。
もちろん、プロダクトインやヒューリスティック評価は有効な手法です。しかし、それは「ユーザーを無視して良い」という免罪符にはなりません。
ユーザー不在のテストは「やり方が間違っている」
ユーザーインタビューやテストを行って、思うような結果が得られなかったとします。
そのときに「やはり自分の考えが正しい」と結論づけてはいけません。
それはテストそのものの設計が間違っている可能性が高いのです。
たとえばGoogleでさえ、改善すべき点は常に存在します。特殊なコンテキストでの操作において不具合が出ることもあり、ユーザーの気づきが役立ちます。
Googleが「AIファースト」を掲げ、その根底に「ユーザー中心」を据えているのはそのためです。検索結果の表示回数が減り、広告収入が下がるリスクがあったとしても、ユーザーの求めるプロダクトをつくり続けています。
言葉だけのUX・AIファーストになっていないか
いま、世界中でAIが注目されています。
しかし「AIファースト」「ユーザー中心」という言葉を掲げるだけで、本当にユーザー中心の開発ができていると言えるでしょうか。
あなたのプロダクトは何のために開発されていますか?
誰のどんな課題を解決するために存在していますか?
そして、そのためにどのようなデザインや開発スタイルを選んでいますか?
ユーザー不在のUXはありえません。
AI時代であっても変わらない、この当たり前の原則を、今一度心に刻む必要があります。
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