UXとマーケテイングの違いのひとつとして、UXには競合分析が欠けているとお伝えしていますが、一方で、UXは、ユーザー(顧客)を見つめ、需要を突き詰めることができます。
ユーザーを見てサービスや開発をしていくと、競合に負けない価値を提供できるようになります。
今回は、競合をチェック分析(競合がどういったものなのか)を含めてどのように見ていく必要があるのかを考えてみたいと思います。競合がどこであるかを正しく認識しなければ、大きなミスを犯してしまいます。
スマホ誕生で斜陽になったもの
iPhone・アンドロイドのようなスマートフォンは、またたく間に世界に広がりました。その結果、自宅の固定電話を引く人は少なくなり、解約も多くなってきています。特に、若者は固定電話を入れることはほぼなくなっています。個人の電話はスマートフォンだけでOKの時代と言えます。スマートフォンは電話回線だけでなく、これまでの製品を一気に売れないものにしました。
スマホに付いている機能と被る、カメラ・ビデオカメラ・ボイスレコーダーは言わずもがですが、他にもいろいろとあります。スマートフォン直接の機能と言うより、スマートフォンを利用することでユーザーの行動が変化し、結果的に需要が縮小しているケースがあります。
例えば、スマートフォンからクラウドを利用することが一般的になったことで、記録媒体のメディアの需要も減ってしまっています。そこで今回は、一見競合でないものが競合になっていた例をあげていこうと思います。
競合でない様で競合はどこか?
直接的な競合でないけど、結果的に競合になっていた例をいくつかご紹介します。きっとみなさんの周りにもいくつも発見することができると思います。
高級ブランドの競合は自社ブランド?
エルメス・シャネル・ヴィトンなど高級ブランドは他ブランドが競合のように見えますが、他にもいくつか存在します。まずはコピー商品です。
これらは自社ブランドの価値を下げしてしまう可能性があります。本物だと信じて粗悪品を手にした客は、そのブランドに対して疑念を持ちます。また、コピーだとわかって購入している客でも、その価値で充分と考え可能性もあります。そうなれば、ブランドの価値(値段)を低くしてしまいます。
他にもブランドレンタルも脅威かもしれません。ブランドバックを持つ理由の1つとして、ファッションや見栄を張るなどのヴェブレン効果があります。日頃使用したいバックにおいては自分で購入すると思われますが、非日常で利用するファッショナブルなバックは、レンタルでそのニーズ補えてしまう可能性があります。そうなれば、ブランドのファッションバックの購入は減ると予測されます。
Volvo(ボルボ)のレンタルサービス
車メーカーのボルボでは、レンタカーの需要が伸びていることに目をつけ、レンタルを開始しました。車を販車売しているメーカーがレンタル?となりますが、レンタルの需要が伸びているのであれば、他の企業が行う前に、そこにシフトするのは正しいと言えます。
価格より便利がニーズ
今では当然になったコンビニエンスストア(コンビニ)も、誕生当初は、スーパーマーケットより価格が高いからそんなに広がるとは思っていなかった人も多かったようです。客層も違うので競合ではないと思われていました。しかし、現実には、イトーヨーカドーよりセブンイレブンが大きくなりました。直接的な競合とはいかないまでも、スーパーのニーズを少なくしています。
それは、時間帯や売っているものも違いますし、スーパーの店舗の広さよりもコンビニの店舗の方が、現代の生活スタイルや核家族世帯が多くなったことで需要がマッチしているようです。
ニーズを正しく分析するJTBD
クリステンセン教授の書籍「ジョブ理論」に出てきたミルクシェイクの話は、まさに、ユーザーのニーズを上手に表現しています。ミルクシェイクを販売していた企業が想定していたニーズと違い、朝の空腹を満たすものを顧客は求めていたのです。
自サービスの直接的な競合は影響力が強いので、どうしてもそこばかりを見てしまいますが、実際にはどこからの影響が大きくなっているのかを多角的に分析する必要があります。
ユーザーの本当のニーズを知る「Jobs To Be Done(ジョブズ・トゥー・ビー・ダン)」の視点があれば、見えてくる競合も変わってきます。
最短・最速で実現できること
ユーザーは自分の欲求がすぐに実現できることを本能的に求めます。例えば、綺麗な道があっても、最短の経路(道でない道)があれば、仮に芝生を踏んでもそれを実行しようとします。急いでなくてもそうしてしまいます。人は「希望線」で動いてしまいます。
ニーズを満たしてくれれば、コピーでも何でもいい
デジタル世界はコピーが簡単です。これはアメリカ在住の方に聞いた話なのですが、アマゾンでよく売れている書籍がいきなり売れ行きが止まりました。それは全く同じコピーされた書籍が安い価格で販売されていたからだそうです。
明らかに著作権侵害になりますが、著作権の話をしたいわけではないので割愛します。ここでわかることは、ユーザーは本物かどうかより、価格のやすいものを手にいれようとするということです。
それを裏付けるようなリサーチがあります。YouTubeのコンテンツをパクって出している人がいました。それについてどう思うか?とリサーチをしたのですが、コピーかどうかもわからないし、仮にわかったとしても、コピーが良ければ、コピーでも構わない。という回答が多かったのです。
Google、Facebookは、どこのサービスの競合にもなり得る
Googleは、検索エンジンの会社だと思っていたら、今ではいくつものサービスが融合しているプラットフォームになっています。グルメ・人材・旅行・不動産など、どの分野でも競合になってしまう企業と言えます。
Facebookも同様に、SNSだと思っていたら、WEBページもいらないのでは?と思わせるような展開を繰り広げていました。
ここまで大きなプラットフォームになっていると、何でもできると言っても過言ではないですし、どのサービスの競合にもなりえます。
特定の競合だけを見ることが、どこまで必要か?も含めて考える必要があります。
ユーザーを見ることで見える競合がある
利用者の本当のニーズを掴み、ユーザーにとって、なくてはならないプロダクトに。そして、愛されるサービスとしてファンを掴んでいくと、競合を気にしないで展開することができます。また、ユーザー行動を見れば、本当の競合を知ることができます。
いつどの企業が競合になり得るかわからない現在で、直接的な競合を見て、右往左往するのではなく、まずはユーザーを見ることに重点を置くようにしましょう。そして、どこが本当の競合なのかを見極めて、どこにも負けないプロジェクトを作っていく必要があります。