この記事は、UX DAYS TOKYO2024のMatt LeMay氏の「2分法を超えて、どう選択すべきか」の翻訳記事です。A/Bテストのように選択肢を絞り込み決定するのは一見、理論的で効率が良いと捉えられがちですが、これは未知の世界を探求したりする機会を失うことにもなります。皆さんのチームで選択を早めるために工夫をしているなら、少し立ち止まってこの記事を読んでみてください。
「正しい」と「間違っている」という二分法を超えた意思決定:賛成と反対のリストが強力な統合意思決定計画になるシンプルな方法
チーム、組織、個人、家族として、私たちはしばしば大きな、立ちはだかるような決定に直面します。「B2Bビジネスを続けるべきか、B2Cへの強力な転換を行うべきか?」、「アパートを借り続けるべきか、住宅ローンを組んで家を買うべきか?」、「次の四半期の主要な成功指標は、増加収益ですべきか、新規ユーザー獲得ですべきか?」といった決定です。
「正しい決定を下したい」という願望から、私たちはしばしば2つの複雑で交差する経路を”全か無か”、”正しいか誤りか”、”良いか悪いか”で見なすリスクを冒します。
他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない「偽のジレンマの誤謬」は、私たちに単一の正しい選択と単一の誤った選択があると信じ込ませがちです。そして一度その選択をしたら、確証バイアスによって、私たちを誤った二分法(バイナリ思考)を強化する情報を探し出すことに導き、自分が行った決定が実際に「正しいものである」と(本当に正しいのかは別にして)再確認させます。
このアプローチは、私たち自身や同僚を安心させるのに役立つかもしれませんが、重要な機会を見逃す可能性があることも意味します。
B2Cに転換することが「正しい」選択である場合、B2Bビジネスが繁栄し続ける場合はどうすればよいでしょうか?
アパートを借り続けることが「正しい」選択である場合、素晴らしい家が売りに出された場合はどうすればよいでしょうか?
このような選択をする場合に、焦点を失わずに”全か無か”の思考から抜け出すにはどうすればよいでしょうか?
そこで、私は、役員も含めたクロスファンクショナルなチームを指導する仕事で大きな決定をする際に、上記のような状態に陥らないアプローチを取り入れました。それは、複数のアプローチの利点と欠点を要約し、アプローチの利点と欠点を統合的な意思決定計画に変える方法です。以下は、自分自身の意思決定計画を作成する方法です。
シンプルな利点と欠点リストを作成する
最初のステップは非常に簡単です。選択肢をまとめ、選択肢について簡単な利点と欠点のリストを作成します。シンプルな利点と欠点のリストをまとめるテンプレートはどこにでもあります。注意点として、3つ以上の選択肢を評価するための利点と欠点のリストを利用してください。
これは、二分法(バイナリ思考)から抜け出すファーストステップです。
例えば、「収益を重視する」か「ユーザー成長を重視する」かを選択する場合、次のような利点と欠点がリストアップできます。
- 「収益に焦点を当てる」
- 「ユーザー成長に焦点を当てる」
- 「収益とユーザー成長の両方を目標に含める」
最良と思われる選択肢を素早く選ぶ!
選択肢の利点と欠点を作成したら、最良と思われる選択肢を素早く選んでください。ただし、これは一つだけの選択ではありませんし、次のステップに進んで再評価すべき内容でもあります。
ここでの考え方は、最良の答えを1つ選ぶことではなく、選択肢を統合するための出発点をみつけることです。このアプローチは、現実世界の意思決定がどれほど複雑であるかを適切に反映しています。そして、ここのステップが本当に興味深い部分です。
選ばなかった項目と選んだの項目について、それぞれの計画を立てます。今までであれば、利点と欠点をまとめ、最善の決定をしてきました。しかし、選ばなかった項目と選んだ項目を詳しく調べると、重要な重なり合う課題や機会がいくつか見つかるでしょう。
これらの課題と機会を選んだ経路で、統合する方法は何かを考えてみましょう。そして、選ばなかった項目の利点と、選んだ項目の欠点を一つひとつ見て、それぞれに対処する計画を立てます。
例えば、家を買う代わりにアパートを借り続けることを選んだ場合には「一生に一度の家を購入する機会を逃す可能性がある」という欠点が出てきます。それに対処するために「念のため住宅ローンの事前承認を取得する」ことが統合計画に組み込むかもしれません。
反対の家を購入するを選んだ場合でも「貯蓄の多様化」という項目を見逃したかもしれません。これに対処するために、「頭金の額とほぼ同等の投資機会を探る」ことを統合計画に組み込むかもしれません。
この考え方で、「B2BビジネスからB2Cビジネスに転換する」を選択した場合、B2Bビジネスに焦点を当てたままでいる選択肢から「次の1〜2年間の安定的な収益ストリーム」という賛成の項目を見逃すかもしれません。これに対処するために「トップ20の収益を生み出すエンタープライズクライアントを維持するために小さなチームを割り当てる」と統合計画に組み込むかもしれません。
このように、統合的な決定計画を作成する過程で、予想外の新しい経路を見つけ、いくつかの選択肢を結びつけると、「正しい選択」対「間違った選択」の二分法から抜け出す可能性が高くなります。