動画紹介「ユーザー視点になりきれないのはなぜか?」

UX DAYS TOKYOの公式YouTubeチャンネル「You x Tubo(ゆーえっくす・つぼ )」では、UXに関するディスカッションやワークショップを配信しています。

第11回では、『ユーザー視点になりきれないのはなぜか?』をテーマに、スタッフ間でディスカッションを行いました。

「組織にユーザー視点が浸透していない」「自分はユーザー視点になりきれているのだろうか?」というモヤモヤを抱えている方にとって、共感できるポイントや、明日から使えるアプローチが多いと思います。

「ユーザー視点の大切さは分かっているのに、いつの間にか企業視点になってしまう」「上司やチームメンバーがユーザー視点になってくれない」など、「ユーザー視点になりきれない人・時」の失敗談をスタッフそれぞれが持ち寄って、「どうすればユーザー視点を持ってもらえるのか?」というディスカッションを行いました。

議論を進めるうちに、ユーザー視点への優先度が下がってしまう原因が見えてきました。

ディスカッションのグラフィックレコーディング
当日の議論を書いたグラフィックレコーディング(作成:イケダマリカ)

実録!ユーザー視点になりきれなかった失敗談

ディスカッションでは、スタッフが実際に遭遇した「ユーザー視点になりきれない人・時」の実例を共有しました。その中から、失敗談を2つ紹介します。

失敗談1 サービスリリースがゴールになってしまった

新しいサービスをリリースすることがゴールになってしまい、サービスが成長しなかった失敗談です。

あるメンバーの関わった案件では「リリースすること」そのものがゴールになってしまい、リリース後の分析や、改善をあまり行わなかったそうです。
ユーザーのためだけでなく、サービスの成長のためにも、ユーザー視点を持つことが必要であることがわかる失敗談でした。

失敗談2 メンバーの負担に気を遣いすぎた

作業工数を気にして、ユーザーのためにならない改善方法を提案してしまった失敗談です。

あるメンバーの関わっていたプロジェクトにて、UI改善の提出を求められました。

その際、プロジェクトがリリース直前だったので、「エンジニアの工数がかかるし、今から修正させるのはかわいそう」と気を遣った結果、実装が楽な改善案を提出しました。

クライアントから返ってきたのは、「まだわかりにくい。ユーザー視点で『こうあるべき』というものがあるのに、工数の都合で妥協してしまうのは良くない」というフィードバックでした。

失敗談を語ってくれたスタッフは、「自分はまだまだユーザー視点になれていなかった」と反省したそうです。

企業の都合でユーザー視点が持てなくなる

今回スタッフが挙げた「ユーザー視点になりきれない人・時」の実体験を分類してみると、4つのユーザー視点になりきれない要因が見えてきました。

1.組織の風土

UXが組織に浸透していないことが要因で、ユーザー視点になりきれない場合があります。UXやユーザー視点という新しいものを取り入れるのに抵抗があったり、外部のUXコンサルに丸投げして自分たちで考えないなど、UXを自分たちで考えていく文化が組織にない場合はユーザー視点が失われがちです。
また、UXが浸透している組織であっても、法務や財務などの立場にある人はリスク回避を優先して考えてしまい、立場上ユーザー視点になりきれないこともあることがわかりました。

2.短期的な数値目標

短期的な数値目標だけを追ってしまうことで、ユーザー視点が失われることもあります。

ディスカッションの中では、直近の売上を確保したいがために、巨大なバナーを表示する事例が挙げられていました。

ユーザビリティを大きく損なうと分かっていながらも、施策を実施した時は高い売上が出てしまうため、長期的に見たユーザーへの影響を考えられない場合に発生しやすいです。
売上目標だけでなく、「リリース時期がずらせない」「他社よりも早く出したい」といった時期的な目標も、ユーザー視点になりきれない要因になってしまいます。時期的な目標だけを追ってしまうと、ユーザビリティを上げることよりも早くリリースすることが優先されてしまう場合があります。

3.工数や予算の制約

工数や予算に限りがあるような時もユーザー視点が失われます。作り手の都合だけを重視しすぎると、サービスを使うユーザーには負担をかけてしまいます。

作り手としての視点やコストパフォーマンスの意識は大切ですが、ユーザビリティへの配慮が失われないよう気をつけないといけません。

4.定量データの盲信

定量化されたデータの全てを鵜呑みにすることも、ユーザー視点が失われる原因になります。
ユーザーの視点に近づくためにはユーザー調査が大切です。しかし、アンケート等で得られたデータは、深掘りしていくことでユーザー視点に近づく手がかりでしかありません。ユーザーのニーズを深掘りする手間を惜しみ、得られたデータをそのまま鵜呑みにしてしてはいけません。なぜならユーザーは自分の本当に欲しいものを知らないからです。

例として、フォード・モーター・カンパニーの創始者であるヘンリー・フォードの言葉を紹介します。

「もし、人々に”移動手段として何が欲しいのか?”と聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えただろうーフォード・モーター・カンパニー創立者 ヘンリー・フォード

フォードは中流階級の人々が購入できる初の自動車を生産・普及させた人物です。当時、中流階級の人々は馬以外の移動手段を知りませんでした。もしフォードが彼らに移動や乗り物に関してのアンケートを行い、得られた回答をそのまま鵜呑みにしていたら、自動車は生産も普及していなかったかもしれません。フォードはユーザーの「速く移動したい」という本質的なニーズに目を向け、産業と交通に革命をもたらしました。

調査の結果や顧客から直接もらった意見は鵜呑みにせず、注意深く真意を探る必要があります。

ユーザーを思う気持ちは一緒で優先度が違うだけ

ディスカッションする中で、「ユーザー視点になりきれない人・時でも、ユーザーのことを蔑ろにしたいわけではない」ことに気づきました。工数や売上など、企業の都合が優先された結果、ユーザー視点の優先度が下がっていたのです。
同僚や上司と意見が食い違った際に「なぜユーザー視点になってくれないんだろう。ユーザーのことはどうでもいいのかな」と思ってしまうことがありました。

「この人はユーザー視点になれない」と諦めてしまうのではなく、ユーザー視点になることの大切さ、優先度の高さを伝えることが必要だったと気づかされました。

ユーザー視点になる・なってもらうためのアプローチ

動画では、ユーザー視点を組織全体へ広める草の根活動や、自分自身のマインドの持ち方、ユーザー視点になりきれない状態を乗り越えるために、メンバーが実際に行っている活動を実例を交えて紹介しています。今日からすぐに使えて、チームにも共有しやすい内容なので、是非ご覧ください。
ユーザー視点の重要性を理解して、組織や自分自身にも浸透させていきましょう!

関連項目