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UXライティングはビジネスそのもの:読書会レポート

UX DAYS Publishingが監修する書籍『UXライティングというビジネス』の読書会レポートです。

本のタイトルを見て、「え?どういうこと?」と思った方も多いのではないでしょうか。実は私もそうでした。しかし、読み終えた後には「確かに、このタイトルがぴったりだ」と納得できました。

ライティングとビジネスの関係は売上だけではない

300億円ボタン
文言を変えることで売上がアップした

書籍の冒頭では、UXライティングがビジネスそのものであることを示す象徴的な例として、「300億円ボタン」の話が紹介されていました。
ボタンの文言とUIの変更だけで売上が劇的に変わる——この事実は、UXライティングの影響力の大きさを物語っています。

しかし、本書で強調されていたのは「UXライティングの価値は売上だけではない」ということでした。

UXライティングは

  • ユーザーの受け取り方を変える
  • ユーザーとの接点であり、企業の顔となる

という役割を担っています。

例えば、確定申告のような正確さが求められるサービスでは、ライティングのトーンも慎重に選ぶ必要があります。もし「かもしれません」といった曖昧な表現が使われていたら、ユーザーは不安になり、そのサービスを信頼できなくなるでしょう。

つまり、UXライティングは単なる「文言の調整」ではなく、企業のブランドや信頼を築く重要な要素なのです。

エラーメッセージひとつでユーザー体験が変わる

私はエンジニアなので、これまで無機質なエラーメッセージに慣れていました。分かりやすさよりも正確さを求めていたのです。しかし、的確でわかりやすいエラーメッセージがあると、ユーザーにとって「使いやすいプロダクト」と感じられ、結果的に継続的な利用につながることを改めて実感しました。

読書会では「Slackのリリースノート」についても話題になりました。
Not Foundページをデザインすることが一般的になったように、リリースノートもただの更新履歴ではなく、温かみを感じられるような工夫が求められています。

Slackのリリースノート
ユーモアを感じさせるSlackのリリースノート

参考:Slackのリリースノート

ライティングのROI(投資対効果)を可視化する

「300億円ボタン」のように、UXライティングがビジネスに貢献することは明らかですが、多くの現場では「ライティングのROI(投資対効果)」を正しく算出できていません。

本書では、UXライティングのビジネス効果を測るためのフレームワーク 「KAPOW(カポウ)」 が紹介されています。

KAPOWとは?
  1. 自分たちの目標を知る
  2. 解決策を明確にする
  3. 解決策に優先順位をつける
  4. 指標を設定する
  5. 書く

特に注目すべきなのは、「書く」ことは最後のステップ だという点です。
企業やプロダクトの目標を理解していなければ、適切なライティングはできません。

UXライティングの効果測定と改善

UXライティングを組織に根付かせるためには、「文言を作って終わり」ではなく、効果測定と改善 を継続的に行うことが重要です。

「行ったことを測定しなければ、それを改善することはできない」
— Torrey Podmajersky
戦略的UXライティングの著者であるTorrey Podmajersky

本書では、Torrey Podmajerskyトーリー・ポドマジェルスキー氏(『戦略的UXライティング』の著者)の言葉が紹介されています。

「行ったことを測定しなければ、それを改善することはできない」
— Torrey Podmajersky

測定方法としては、以下のように定量的・定性的なアプローチを組み合わせることが推奨されています。

特に印象的だったのは、「開封率を上げること」が目標ではない、という話でした。
例えば、メールの開封率を指標にしてしまうと、「思わせぶりな件名」をつけることが最適解のように見えてしまいます。しかし、本当の目的は 「本文を読んでもらい、適切な行動につなげること」 です。

効果測定には正しい指標を選ぶことが重要
効果測定には正しい指標を選ぶことが重要

UXライターは「ライティング担当」ではない

UXライターの役割は、単にプロダクトに文言を埋め込むことではありません。
むしろ、プロダクト開発の初期段階から関与し、デザインと戦略を考えることが求められます。

さらに、UXライティングを組織に根付かせるために、開発者や他のメンバーが適切な文言を作成できるよう教育することも重要です。

UXライターは、UXデザイナー的な視点も持ちながら、企業全体のライティング文化を形成していく役割を担っています。

UXライティングの重要性を自分ごとにする

これまで私はUXライティングを「自分とは少し距離がある分野」と感じていました。
しかし、本書を読んで、ライティングはチーム全体で取り組むべきものであり、持続可能なビジネスのために不可欠 であることを学びました。

書籍『UXライティングの教科書』にも書かれていたように、「voice and tone(声・トーン)によって、ユーザーの受け取り方は大きく変わる」 というのは本当にその通りだと感じます。

例えば、Nikeのように誠実で生真面目なブランドと、J.ピーターマンのようにユニークなヴィンテージ品を販売するブランドでは、voice and toneがまったく異なります。

仮にこの2社のトーンを入れ替えたら、企業のイメージは崩れてしまうでしょう。
つまり、voice and toneは、プロダクトや企業の人格そのものを表す のです。

まとめ

  • UXライティングは、単なる文言作成ではなく、ビジネスに直結する重要な要素である。
  • プロダクトの初期段階から関与し、チーム全体で取り組むべきもの。
  • UXライターは「ライティング担当」ではなく、組織のライティング文化を形成する役割を担う。
  • ボイス(声・トーン)は企業の人格そのもの。ステークホルダーを含め、全員で作り上げる必要がある。

このレポートだけでは伝えきれないほど、本書にはUXライティングの価値や実践方法が詰まっています。改めて、UXライティングの奥深さと、その重要性を実感できる一冊でした。企業の顔となるUXライティングについてぜひ皆さんで読まれると意識が変わる書籍だと思いました。

フリーランスのエンジニア。 2001年東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。独立系ソフトハウス(システム開発)、株式会社シンプレクス(金融機関向け取引システムの開発・運用)を経て2011年よりフリーランス。フリーランスになってからは、スマホアプリ、サーバーサイド(Java,Railsなど)と様々なプロジェクトで開発に携わる。現在は会社員時代にお世話になった企業様でRPAプロジェクトで開発を担当している。 ダイエットのためにランニングとヨガを5年ほど続けているが、どちらもガチになる一方で全く痩せないことが最近の悩み。

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