UXの組織化は”何を共通認識としておくべきか”が重要
UXDT2017は、「組織」をテーマに開催いたしました。直接的に「組織をどのように構成すれば良い」などの話をしなかったことから、「テーマが組織じゃないの?」というお声もいただきました。
直接的な組織構成についての重要度などの話ではなく、“UXの何を共通認識として持つべきか?”に重点をおいてご紹介させていただきました。もちろん、UXデザイナーの肩書きの方が取締役・責任者などのチーフの権利を持つ「CXO」の必要性など、組織構成の話も重要ですが、それは日本でも他のイベントで既に行われていて、それらは前提として、という考えでのテーマとさせていただきました(予め、サイトにてもっとわかりやすく記載しておけば良かったのかと反省しております)。
現場でUXを浸透させ、活用するには、共通のマインドセットが重要です。そう言った共通しておくべき内容をマインドセットとして、UXDT2017は開催いたしました。
以下、レポートとして各セッションの公開をしております。
1)エリカさんのセッションでは、「UXでの重要なデータは何か」を紹介してくれました。ビックデータなどのわかりやすい定量データと定性データを、どのように考えるべきかです。
2)ケニーさんのAIの倫理についても同様に、AIをサービスやシステムに入れる際の心構えは、企業の取締役の方をはじめ、企業や組織として関わるすべての方が認識しておくべき内容だったと感じています。
3)メリッサさんのMVPのセッションは、言わずもがな、組織開発で重要なお話になります。
4)ステファンさんのフリクションのセッションは、よくあるBad UXが「結果的には良いUXになる」などの勘違いを正す内容でした。こちらも、同じ認識を持つ意味で重要です。
5)ギルズ(ジャイル)さんのVUIのセッションは、組織的な話ではなかったものの、UXを取り入れようと思っている企業の社員であれば、UXデザイナーでなくても参考になる情報でした。海外の新しい情報を生で聴ける醍醐味として、良かったのではないかと考えています。
日本にUXはどこまで浸透しているのか?
先日行われた「UX LONDON」の報告イベントでは、「UXDT2017の振り返りから、日本でのUXの浸透について」考えていただく時間を作成しました。
それは、セミナーやイベントを上手に利用して、現場に浸透させている企業(人)と、そうでない企業(人)がある(いる)からです。折角のカンファレンスやワークショップの内容をもっと現場で利用してほしいとの思いと、実際にはどうなんだ?という疑問が発生したためです(ワークショップは満席でも、報告イベントに参加された方のなかで、「UXDT2017」に実際に参加されていた人は数名しかいなかったため、直接的な声ではないのですが、UXを活かしきれている企業は少ない印象を持ちました)。
また、ロンドンで日本の企業と仕事をしている方や、日本で働いた経験がある方からは、日本は全体的にソフト、デザインの領域が弱いと言われました。良くよく考えると、ハードは素晴らしいのにソフトは駄目なことに気が付きます。決して、日本の全ての企業や人ができない訳ではないですが、これらの言葉を真摯に受取り、気づき、弱点を克服する必要があると感じました。
なぜ、日本はソフトが弱いのか?
日本のソフトウェアやデザインがなぜ弱いのか? そこには、いろいろな要因があると思いますが、そのひとつとして、「代理店や担当者が、デジタルマーケテイング並びに技術、デザインについての知識が乏しい」ことが言えます。そのため、何か話題になっているものに何でも飛びついてしまう傾向があるようです。
他社がやったことや成功事例を真似るのも、そもそものコンセプトや戦略を立てることができないからです。
特に、デジタルマーケテイングにおいては、広告やSEO、アクセス解析などのマーケテイング領域に関わるものは数字なので、誰でもわかるため予算が付きやすい傾向にあります。
UXを行うには時間や工数、専門家(知識のある方)が必要になりますが、デザインの(ROI)効果を見い出すことができない企業は、その時間を無駄だと考えてしまいます。つまり、UXに予算を割り当てることができていない企業や、(価格勝負している)請け負ってしまっている受託企業は、上記のようになり(考え)がちです。
その一方で、先述のように、「何かUXとか流行っているよね?、いい感じらしいよ」ということで、「UXを取り入れてやってみたい」と思ってしまうようです。UXがそもそも何かを知らないのに、です。当然、判断力ないため、なんとなく「ブログなどで話題になっている企業がこの分野で有名そうだから、お願いしてみよう」という事が発生しています。
有名人であればプロだから、凄いものを作ってくれるに違いない。そんな夢に多額の費用を投入してしまうのです。
私は、有名デザイナーとして名高い佐藤可士和さんの全てのお仕事を知らないですが、セブンイレブンのコーヒーマシンのデザインは、決して素晴らしいものではありません。しかし、それを賞賛しているメディアの記事もあり、ユーザーの声との差が明らかに大きいです。
引用:https://matome.naver.jp/odai/2140475782029730001
実際にコンビニで間違って利用してしまった際に、レジのスタッフの方が「わかりにくくてすみません」と、ミスしたものをすぐに取り替えてくれるのです。
“なんだ?この損失は!”とすぐに思いました。デザインから生まれている損失を当たり前にして、取り替えてくれるのです。本当にこれで良いのでしょうか?
UXを組織全体で回すのは夢?
UXやUIのデザイン企業の取締役が、「UXを組織に入れる云々は夢でしかない。今更なんだ」的な内容のつぶやきを見たことがあります。
私はUXを企業全体(全員)で行う必要はないと思いますが、UXは企業全体で理解をしておくべき内容だと確信しています。逆に、システムエンジニア、デザイナー、マーケター、取締役などがUXを理解しなければ、推し進めることなど到底できないので、下手にUXを取り入れない方がいいのだとも思います。
もうひとつだけ言えることは、今も昔もユーザーが主役なのです。そして、コンテンツを作るうえでもシステムを作るうえでも、UI・デザイン設計をするうえでも、「ユーザー(UX)のことを考えずには、開発しても良いものは生まれない」ということです。判断力を持てない人がいなくなるためにも、UXを組織で取り組む必要があると確信しています。
また、UXを推し進めている企業が、「UXは組織で取り組む必要がない。無理だ」と思っているのであれば、それは、UXを推し進めるデザイン会社、コンサルタントとして間違っていると考えています。判断力がない担当者よりも、タチが悪いと感じています。
UXは視点が重要、そのための基礎を身に着けよ
最近、オウンドメディアを含め、UXに関するさまざまな記事が公開されています。個人的なブログの発信も増え、その内容を鵜呑みにしてしまうユーザーもいます。大手企業のメディアであれば、より信じやすい傾向にあるでしょう。しかし、日本のWeb(IT系)メディアは、以前から流行りが大好きで、本質を記載していない傾向があります。記事自体は、真実ではないこともそれっぽい表記をされているので、ユーザーは騙されてしまうのです。実のところ、トレンドや流行だけにユーザーを捉えさせているのは、このようなメディアが原因ではないかと考えています。
UXはトレンドでも、流行りでもありません。
UXが一番難しいのは“視点”です。その視点は、基礎的な内容を理解しなければ、流行りに惑わされてしまうのです。基礎というと、即戦力ではないと思われてしまう方もいるようですが、基礎を整えることで見えてくることがあります。それは、すぐに現場で役立ちます。今後、UX TIMESでは、基礎力が付くようなコンテンツを出していこうと思っています。引き続き、宜しくお願いいたします。