「見た目の良さとUXの良さを両立するのは難しいのでは?」
という考えを聞いたことがあります。決してそんなことはありませんが、作業の順番に見た目と使いやすさを両立させるコツがあります。
デザインにおいて見た目を魅力的にするあしらいや雰囲気の表現は大切です。しかし、表現の作業に入る前に「迷わず使える」「便利に使える」といった基本的な設計ができている必要があります。
例えば、時間をかけて可愛いお弁当を作ったとしても、食べる人にとって「食べにくい」「美味しくない」ものであれば、お弁当としての機能性が満たされておらず満足度が低いものになります。
見た目先行だとユーザビリティの穴に気付きにくい
クライアントに「●●のようなイメージで」と見た目を指定されて、その通りに作った経験がある方もいるのではないでしょうか。
ユーザーがどういった使い方をするのか、使うためにはどんな情報や導線が必要なのかといった、基本的な設計を疎かにした状態で見た目の作り込みを行っても、一見きちんと設計できているように見えてしまいます。
これには、美的ユーザビリティ効果という見た目が美しいデザインのものを使いやすいと思い込む心理効果も関係しています。
見た目を先行して作ってしまうと、チームメンバーや設計者自身もユーザビリティの穴に気付きにくくなってしまい、結果的に見た目は良くてもユーザーにとって使いにくいデザインのままになってしまうことがあります。
見た目を整える前に迷わず使えるデザインを作る
見た目の良さはユーザビリティと対立するものではありません。
美しいデザインは、美的ユーザビリティ効果で「使いやすそう」という先入観をユーザーに与えることができるので、ユーザーの期待に沿った「迷わず使える設計」が伴っていることが大切です。
綺麗な見た目でも使いにくければ、期待していたユーザーもがっかりしてしまいます。
「迷わず使える」「便利に使える」という機能性の土台の上に、見た目の美しさやブランドを表現する雰囲気やあしらいなどの「ユーザーの心を動かす魅力的品質のデザイン」を積み上げていくことにより、ユーザーにとって使いやすく魅力的なものになります。
設計の工程では、見た目をいきなり整えるのではなく「迷わず使える」ための設計を先にしましょう。
どんな使い方をするのかユーザーの行動を調査して洗い出したり、行動に必要な情報設計をしてから、レイアウトを美的ユーザビリティ効果が起きないように白黒の作り込まないモックアップで検証する、というような「迷わず使える」「便利に使える」という当たり前品質を満たした後で、創造的な表現でユーザーにより愛される体験を作る工程に入ることができます。
「当たり前に使える」設計を飛ばしてはいけないと肝に銘じましょう。